『TOKYO!』 完成記念記者会見

世界のトップ・クリエーター、ミシェル・ゴンドリー、レオス・カラックス、ポン・ジュノ。
この3人が東京を舞台にそれぞれのイマジネーションの炸裂させたオムニバス・ムービーが『TOKYO!』(晩夏、シネマライズ、シネ・リーブル池袋にて世界先行ロードショー)だ。

080704_tokyo_03.jpg7月2日、その完成を報告する記者会見が開かれた。
出席者はポン・ジュノ監督、香川照之さん、蒼井優さん、藤谷文子さん、加瀬亮さん(以下、敬称略)。

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■熱気あふれるポン・ジュノ組
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香川と蒼井は本作でポン・ジュノ監督が手がけるパート<シェイキング東京>に出演している。

『殺人の追憶』や『グエムル 漢江の怪物」で知られる奇才ポン・ジュノは、筋金入りの日本通として『リンダ リンダ リンダ』や『オールドボーイ』などで日韓交流の橋渡しも果たしてきた。そんな彼は今回のプロジェクトについて「東京を舞台に映画を撮るというのは、初恋の人に手紙を書くような体験でした」と打ち明ける。

キャスティングにもいっさい妥協を許さない。今回”10年間、自宅からいっさい出たことのない引きこもり”を演じる香川照之についても「西川美和監督の『ゆれる』を観て衝撃を受けました。『日本人俳優で”ひきこもり”を演じられるのはこの人しかいない!』って最初から心に決めていました」と熱い思いを滲ませていた。

ラブコールを受けた当人、香川はこう語る。

「オファーを受けたときは驚きましたね。だって、”引きこもり役”だったら加瀬(亮)がいるじゃないか!と(笑)。日本でこの手の役をやらせたら彼の右に出るものはいないですよ。でもどうやら彼は他のパートに出演が決まってるようだったし、だったら俺がやるしかないか!と」

この言葉に場内は爆笑。同席した加瀬もいきなり自分の名が登場してびっくりした表情を浮かべていた。

そうやって動き出したポン・ジュノ組の現場について蒼井は「ポン・ジュノ監督とお仕事がご一緒できるということで、日本人スタッフやキャストには特殊な緊張感というか、”熱”みたいなものが漂っていましたね。この一瞬一瞬を大切にしたいというみんなの気持ちが仕事へのこだわりにも現れていて、中には『照明、2時間待ち』って時もあったぐらいで」と振り返った。

■ゴンドリー組はちょっと違う…?
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対する加瀬&藤谷はミシェル・ゴンドリーのパート<インテリア・デザイン>への参加組だ。今しがた間近で語られたポン・ジュノ組の”熱い現場”のエピソードを受けて、「いやあ、うちらと全然違うんだなあって…」と顔を見合わせて笑う。

彼らの目から見たゴンドリー監督はやっぱり変わった人間だったようだ。「だいたい今日も(せっかくの会見なのに)来てないですし(笑)」と切り出した加瀬の言葉にはゴンドリー組の特殊な雰囲気が垣間見える。

「ちゃんと脚本があるんですが、現場に行ってみると監督がどんどんアイディアを出してきて、それを通訳している側からまた別のアイディアがどんどん湧き出てくるという…もう通訳が追いつかない感じなんですね(笑)。それに一度なんか『ジェームズ・ブラウンっぽくやってみて』なんて無茶な要求も…でも憎めない人ですよ(笑)」

藤谷もこう続ける。

「気が付くとカメラが回っていた現場でした。私たちはどこからどこまでがお芝居なのかだんだん境目が分からなくなってきて、ときにはカットがかかるまで即興で演技を繋いだりもしてました。ゴンドリー監督は何度も同じ演技を繰り返させるんですけど、そうすることでこちらも余分な緊張感が無くなって研ぎ澄まされていくんです」

なるほど、さすがオリジナリティ溢れる世界観を確立している名匠の現場は一味ちがう。もちろんその唯一無二の空気は作品にも思いっきり結実しているのは言うまでもない。

名匠たちの視線によって一枚、また一枚と剥がされていく大都市のベール。その先には、もはや地理学的な「東京」を超え、それぞれの胸の中で花開いた独自の「TOKYO」の姿がある。このTOKYOをめぐる旅は、彼らの冒険でもあり、そして僕ら観客の冒険でさえあるのかもしれない。

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ちなみに、今回の会見に同席できなかったレオス・カラックスが紡ぐパート、<メルド!>も通常の頭では予想もできないような、とんでもない怪作に仕上がっているので、お見逃しなく!

映画「TOKYO!」オフィシャルサイト
http://tokyo-movie.jp/
(C)2008  『TOKYO!』
晩夏、シネマライズ、シネ・リーブル池袋にて世界先行ロードショー

【映画ライター】牛津厚信

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カテゴリー: 特 集

2008年7月4日 by p-movie.com