『レポマン』『シド・アンド・ナンシー』などのパンクな作品群で有名な
インディペンデント界の鬼才アレックス・コックスが、5年の沈黙を破って
待望の新作『サーチャーズ2.0』を発表。
日本公開を前に監督本人がマスコミ向け「Q&A」を開催した。
この『サーチャーズ2.0』ときたら、ジョン・フォード監督作『捜索者』をベースに
コックス印のパンク精神の炸裂した、まさに目の覚めるような現代劇なのだ。
主人公は、かつて西部劇の撮影で精神的トラウマを受けたふたりの子役。
いまやすっかり中年になった彼らは、当時の脚本家に復讐を果たそうと
モニュメント・バレーで開催される上映会後「Q&A」へとひた走る。
一言で「復讐」と言うと、まさに血みどろ、爆発、銃撃のオンパレード・・・と
イメージしがちだが、さすがはアレックス・コックス、ここでは「9.11」以降のアメリカ史を
総括するかのような、ぶっ飛んだ”オフビート・ロードムービー”が繰り広げられていく。
何よりこの映画、B級映画の帝王ロジャー・コーマンの協力の下、
アレックス・コックスが自身のホームページで製作費を募ったという文字通りの
「2.0」な作りなのだから驚きだ。
このような制作スタイルを敷いた背景には、過去作品の影響でハリウッドから
製作依頼が全く来なくなった現状があるらしいのだが・・・
本人はそれを痛手とも思っていないようで、
「新聞か何かで、ネット上で資金集めをしている人の記事を見て、
自分でもやってみようと思いたちました。幸いロジャー・コーマンという
ビッグネームの協力も得られて、うまく進めることができました」
と朗らかに振り返って見せる。
そして、イラク戦争、石油、資本主義、ブッシュ政権といったテーマを果敢に
盛り込んでいく最強の批評精神についてはこう真理を突いた。
「自分が外国人(英国人)であること、
そしてこの映画がコメディであることが非常にうまく機能したと思う。
コメディであれば遠慮せずに何でもモノが言えますからね(笑)。
つまり、言いたいことがあれば、それを言えるような”環境作り”をするということ。
これこそ表現者にとっていちばん重要なんです!」
なるほど。さすがインディペンデント界の雄。胸に突き刺さるコメントだ。
だが、これほど反骨精神にあふれた人でも
「映画製作において自身を突き動かすものは?」との質問には、こう口を開いた。
「映画をつくるのが、ただ大好きなだけです。たとえお金にはならなくてもいい。
私はきっとそういう人間に生まれついてしまったんです。どんな苦難の中にあっても、
同じスタッフや支援してくれる友人たちと一緒に仕事をしていくうちに、映画のことが
どんどん理解できていく。それでまた、なおいっそう映画のことが好きになっていく・・・」
まるで「結婚」や「夫婦」について語っているかのようなコメントではないか!
あふれんばかりの「愛」が伝わってくる一幕だった。
こんな鬼才監督のとびきりの映画愛に満ちた最新作『サーチャーズ2.0』、
とにかく必見です。
当パーフェクトムービーガイドでは、この後コックス氏に直撃インタビューを敢行。
その模様も近日レポートしますので、どうぞお楽しみに!
映画「サーチャーズ2.0」オフィシャルサイト
http://www.uplink.co.jp/searchers/
まだ、死ねない。奴らを捜し出すまでは・・・
2009年1月10日(土)より、
渋谷アップリンクX、吉祥寺バウスシアターほか全国順次ロードショー
(C) 2007 COWBOY OUTFIT, LLC PRODUCTION
【映画ライター】牛津厚信
タグ:『サーチャーズ2.0』アレックス・コックス監督Q&A
カテゴリー: 特 集
2008年11月28日 by p-movie.com