かつて西部劇の撮影現場でトラウマを受けた子役たち。
彼らがすっかりオッサンとなった今、憎き脚本家を追いかけて、
世にも壮絶(?)な復讐劇の幕が切って落とされる!
古きよき時代の西部劇にオマージュを捧げつつ、9.11以降のアメリカを
オフビートな笑いと共に描いた『サーチャーズ2.0』。常にパンク精神を忘れない、
インディペンデント映画の鬼才アレックス・コックス監督に話を訊いた。
---最近の潮流として世界中の映画監督が「復讐」について描いていますが、
正直、本作ほどユニークな切り口は観たことがありません。
【アレックス・コックス】
そう言ってくれて嬉しいよ。主人公のたどる「(理由の)曖昧な復讐劇」には
9.11以降のアメリカ合衆国の姿を重ねているんだ。誰もが「復讐」は良くないと
分かっているのに、結果的にアメリカは間違った方向に進み、石油のために
いろんなものを奪い取ってきた。と同時に、国民の側には膨大な「矛盾」が
押し寄せてきた。貧富の格差、経済の崩壊などなど、枚挙に暇がないよ。
それらを直接的に批判するのも芸がない。だから私の異邦人としての視点を交え、
あえて「コメディ」という手法でこの問題に切り込んでみたんだ。
---そのタイトルをジョン・フォードの傑作『捜索者』(The Searchers)から
引用しているのをはじめ、本作には「西部劇」というモチーフが散りばめられています。
僕はこれをアメリカの「亡霊」のようにも感じたんですが、監督はどのように捉えて
いらっしゃいますか?
【アレックス・コックス】
きみの言うとおりだ。西部劇はフォーマットとしてまさに「亡霊」。この映画では
旅の車中、ふたりの中年男性がずっと西部劇の話題で盛り上がっているけど、
旅に同行する80年代生まれの娘にとっては西部劇など過去の産物。
興味の欠片すらない。
つまり、この映画はいかに亡霊が消え失せ、人々の心理や好みが変わり、
フォーマットが変遷していくか・・この流れを描いたものでもあるんだ。
---アメリカに対して批判を続ける一方、あなたは英国人にも関わらず、
ずっとアメリカに住み続けてらっしゃいますね。それは心の底でアメリカを
愛してらっしゃるからですか?
【アレックス・コックス】
おお、ゴッド・ブレス・アメリカ!実は妻がアメリカ人なんだよ。以前、彼女と一緒に
私の故郷リバプールに住んでいたんだが、しばらくすると妻からこう宣告された。
「もうこんな街、ごめんだわ!いますぐアメリカに帰る!」ってね(笑)。
そんなこんなで、私はいまアメリカのオレゴン州に移り住んでるというわけさ。
そもそも国家を憎んだってしょうがない。確かにこの国はいま大変な状況に陥っている。
だけどそう追い込んでいるのは政府だ。そこに住む人々のことを考えたとき、私には
この国が嫌いにはなれないよ。第一、親しい友人のほとんどがアメリカ在住だしね。
---それにしても、いまこうしてお話を伺いながら、あなたが
「パンク映画の鬼才」という称号とは真逆の、実に紳士的でマイルドな方であることに
衝撃を受けています。
【アレックス・コックス】
そう言ってもらえて嬉しいね(笑)
---撮影中でも脚本執筆中でも変わず穏やかなんですか?
【アレックス・コックス】
少なくとも私はそう思ってる。
誰もがそうだけど、人間ってのは年齢と共にマイルドになってくるものなんだ。
きっと金のあるヤツには無礼な振る舞いも許されるんだろうね。私みたいに金のない
人間は、いつも丁重に振る舞うしか術がない。人に好かれなければ
お金は集まらないし、映画作りなんてできやしないから。
でも嫌々ながらこの態度をキープしているわけでもないよ。
結局そのほうが仕事がはかどるんだ。仮に一日100ドルで有名俳優に出演して
もらうときでも、こちらが横柄な態度だと相手を怒らせてしまうだけだしね。
お金がないからこそ、私は紳士なのです(笑)!
映画「サーチャーズ2.0」オフィシャルサイト
http://www.uplink.co.jp/searchers/
まだ、死ねない。奴らを捜し出すまでは・・・
2009年1月10日(土)より、
渋谷アップリンクX、吉祥寺バウスシアターほか全国順次ロードショー
(C) 2007 COWBOY OUTFIT, LLC PRODUCTION
【映画ライター】牛津厚信
タグ:『サーチャーズ2.0』アレックス・コックス監督インタビュー
カテゴリー: 特 集
2009年1月7日 by p-movie.com