初監督作『ドロップ』が大ヒットを記録し、一気に邦画界の未来を背負う存在に躍り出た品川ヒロシが、再び自身の原作、脚本・監督作を引っ提げて帰ってきた。―それが『漫才ギャング』。
Superfly書き下ろしの主題歌「Beep!!」が疾走感を倍増させる中、今回の品川が描くのは、まさに彼自身が本職とする「漫才」の世界。それも留置所で出逢った見た目も性格もまったく違うふたりが、いつしか意気投合して漫才コンビを結成するという破格を極めるストーリーだ。
果たして今回はどのような作品に仕上がっているのか?すでに初号試写を観た関係者からは「前作越え」の評価も漏れ聞こえてくる本作だが、まだマスコミ披露も行われていない現時点で、出来あがったばかりの達成感や意気込みを語るべく、急遽、完成報告記者会見が行われた。それも、あの笑いの聖地「ルミネtheよしもと」で!
その時、12月22日午前10時。
「ルミネtheよしもと」の客席に集いしマスコミ陣は、幕が閉まった状態から突如、関西お笑いコンビ「ミサイルマン」による前座の猛襲を浴びることとなる。
普段この劇場に通い慣れたお客さんと違い、マスコミ記者は感情表現がかなり奥手だ。ミサイルマンのふたりもこの“アウェイ感”から生じるプレッシャーはハンパじゃなかったはず。それでもふたりは駆け抜けた。『漫才ギャング』に出演もしているおデブな西代洋は、腹にくくりつけたD&G(ドルチェ・アンド・ガッパーナ)のベルトを「3、2、1」の合図で腹の肉の下に忽然と消し去り、拍手喝さいを浴びた。まるで魔法だ。筆者も幾度も目をこすり、これが現実か否かを見極めようとした。現実だった。
いよいよ幕が開く。今度は司会進行としてお笑コンビ「ピース」の綾部祐二が登場。数日後には「M-1グランプリ」の決勝を控えている彼がここでこんなことをしていていいのか?誰もがそう気をそぞろにさせる中、彼は持ち前の安定感で徐々にマスコミを自分のペースへと引き込んでいく。ちなみに彼は本作『漫才ギャング』にも出演を果たしているそうだ。
そしていよいよ本日のメインが始動する。長編第二作目を完成させたばかりの品川ヒロシ監督、そして主演の佐藤隆太&上地雄輔の登場。
会見では『ROOKIES-卒業-』をはじめテレビ&邦画界の起爆剤として爽やかな熱血ぶりを振りまき続ける佐藤隆太が、この『漫才ギャング』のオファーを受けた経緯について振り返った。
「生意気にも非常に運命的なものを感じてます。というのも、たまたま僕自身がテレビで『品川監督の映画第2弾の製作が決まりました!タイトルは『漫才ギャング』です!』という報道を観てたんです。
それで内容も知らないのに、ああ、主人公の年齢はいくつくらいなんだろうな、って漠然とイメージを膨らませて、『ああ、やりたいな!』って思ったんです。でもキャストはとっくに決まっているんだろうな、とも思ってて。
ところが、数日してマネージャーから『映画の話が来てるんだけど』と打ち明けられた。『えっ!もしかして“あの”映画!?』って身体に衝撃が走りました」
そうやって運命的な映画に引き寄せられた佐藤は、初体験となった品川組の撮影現場についてこう語る。
「現場に入ってからの品川監督は本当に想像以上にポジティブで、すごく温かった。なにしろ初めてのタイプの役なので僕自身も多少不安はあったんですが、常に『だいじょうぶ!』って背中を押してくれる。そして『カット!』『OK!』の掛け方が実に気持ちいいんです。この人だったら何処へでもついていきたいなと思える監督でした!」
佐藤の爽やかな発言を受けて、司会の綾部が手際よくテキトーにまとめる。
「なるほど、本当に運命的なものだったんですね~」
間髪いれず、品川がツッコむ。
「(まとめ方が)古いよ!」
「古いってなんなんすか!(綾部)」
「昭和の歌謡祭みたいな・・・(品川)」
(一同爆笑)
今度は上地の出番だ。『漫才ギャング』ではドレッドヘアにタトゥーまで施した奇抜なキャラクターに挑む彼は、すでに品川とも「ヘキサゴン・ファミリー」としても気心知れた仲だ。彼は現場の印象をこう語る。
「監督自身がいい空気を出してくれるので、いつも現場も明るくて新鮮で、出演者とスタッフの距離も近くて、それでも決して慣れ合いにならず、いい意味でビリビリした現場でした…あっ、すみません、ちょっとケイタイが…あ、母さん?」
「出んのかよっ!?(綾部)」
「いま、ちょっと会見中だから…うん、じゃ、また!
…こういうときもある現場で…」
「どういうときだよ!(綾部)」
「こんな緊張感もありつつ(笑)、僕が言うのも何なんですが、品川監督の可能性は無限大だと思うので…また出てあげてもいいかな、と」
(一同爆笑)
まさに舞台上でボケとツッコミが反射光のようにキラキラ飛び交う会見。俄かに品川ヒロシが映画監督ならではの視座でふたりの印象を語る。
「今回はなにしろ漫才師の役ですから、『誰が演じるか?』という部分を占める割合が大きかった。雄輔とは前から親交があって、いつか自分の長編作品に出てほしいっていう想いはあったんですが、隆太くんとは逢ったこともなくて。でも彼の名前が浮かんだ瞬間から、どんどんこの企画のイメージが現実化していくのを感じました」
続けて品川は、佐藤との記念すべき初対面の一幕についてこう触れる。
「食事の席で初めてお逢いしたんですが、まだ映画の台本を渡しただけなのに、いきなり隆太くんが『今から公園に行ってきます!公園でマネージャーとネタ合わせしてきますから!いま、そういう気分なんです!』って言い出したんです。その真面目さというか、役者魂の凄まじさに心から胸打たれると同時に、この人、バカなんじゃないかな?って(笑)」
また上地についてはこのように振り返った。
「今回アクションが大変で本当に最後まで頑張ってくれました。語るべきエピソードは何もないですが…やっぱり彼もバカです(笑)。」
一転してちょっと真剣な顔で、品川がまとめる。
「いやでも、本当にふたりが真面目に役に向かっていく過程には感動させられました。ネタあわせを経て、漫才がみっちり仕上がっていく過程やその最終的な完成度についても、ほんとうに自分たち(品川庄司)の初舞台からは想像もつかないくらいのものだった。ほんとうに最高のキャストだなと想いました!」
最大級の賛辞に、役者ふたりは照れくさそうに頬笑みを浮かべる。凄くいい雰囲気が舞台から滲みでてくる。3人の信頼性やコンビネーションがよく伺えた瞬間だった。
ちなみに、本作のクライマックスでは主演の二人が満員の客席の前でガチの漫才を披露するとか。しかもお客さんにも「笑いたいところで笑ってください」とお願いし、まさに仕込みなしの真剣勝負に仕上がっているというのだ。
果たしてこの結果、どんな映像がスクリーンに刻まれているのか?
アクションからドラマから漫才まであらゆるところに本気印が宿った『漫才ギャング』の真価を心から期待したい。
『漫才ギャング』
配給:角川映画
(C)2011「漫才ギャング」製作委員会
公式サイト http://www.manzaigang.jp/
2011年3月19日(土)全国ロードショー!
【ライター】牛津厚信