ミラクル・ペティント

スペイン産オバカ映画 ★★★★☆
[98/スペイン] 1h46 6月10日より渋谷シネクイントにてロードショー

監督・脚本:ハビエル・フェセル
出演:ルイス・シヘス シルビア・カサノバ ハビエル・アリェル エミリオ・ガビラ
配給:パルコ
宣伝:サンダンス・カンパニー
宣伝協力:メディアボックス

スペインからファミリー・ファンタジーSFドラマの総天然色ブっ飛びムービーがやってきた。スペインといえば、アントニオ・バンデラスやアンディー・ガルシアのような濃い作品や「オープン・ユア・アイズのようなサスペンス映画だけかと思ったら、やはりこういうオバカ映画もあるんだと知り、さすが世界中の国の映画が一番見れると思われる日本だなと改めて確認した。監督は CMクリテーターで長編は1作目、徹底的にディテールにこだわる作りはクリエーターならではか。早くも次回作が楽しみ。

ペティント少年の家訓はシアワセナな家族を築くこと、そして夢は大家族のお父さんになり子供達が強くたくましく成長する様子を見守るのが願いだった。そしてペティントは幼なじみで盲目のオリビアと結婚して25年に1度急行電車が通り過ぎる脇のド田舎にスィートホームを構える。この地で二人はひたすらコウノトリがキュートな我が子を運んできてくれるのをひたすら待っていた。それなのに子供の出来る気配は全くない。それもそのはず二人は子供の頃に仕入れた「タラリン タラリン」で赤ちゃんが出来るという間違った知識のまま、その行為を繰り返していたのであった。そして50年が過ぎて老人になった二人の前に遂にコウノトリが飛んできたと思ったら鉄の塊が落ちてきた。やってきたのは身長1メートルぐらいの成人した男性二人。なんとこの二人は旅行中の火星人だったが、ペティント夫婦は遂に子供が出来たと大喜びする。しかしこれはミラクルのほんの序章にすぎなかった。

本編が始まったかと思ったらいきなりニュース映画が始まり、唖然としていると何事もなかったかのように本編が開始され、ニュース映画の登場人物が本編に登場するという複線のはりかた。そして本編終了後にもニュース映画で終わるという遊び心がたまらない。まったく先の読めない展開に圧倒されっぱなしで完全にこの作品にはまってしまった。宇宙服でご来場の方は1000円で見れるというオバカ制度もたまらない。さあみんな宇宙服を着て劇場へレッツ・ゴー。

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2000年6月12日 by p-movie.com

ナインスゲート

禁断の書が誘う究極の恐怖迷宮 ★★★☆☆
[99/スペイン・仏] 2h13 6月10日より丸の内プラゼールほか全国松竹洋画系にてロードショー

制作・監督:ロマン・ポランスキー
出演:ジョニー・デップ エマニュエル・セイナー レナ・オリン フランク・ランジェラ
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:メディアボックス

「ノイズ」「スリーピー・ホロウ」「GO GO L.A」に続き、今年4本目のジョニー・デップの作品は「ローズマリーの赤ちゃん」「チャイナタウン」のロマン・ポランスキーと組んだオカルト・サスペンス映画。共演は「蜘蛛女」のレナ・オリンとポランスキーの恋人で「赤い航路」「フランティック」のエマニュエル・セイナー。

幅広い知識に鋭い観察眼でほかを出し抜く機動力を備える本の探偵ディーン(デップ)は、ある出版社の社長から仕事を依頼される。17世紀の悪魔書「ナインスゲート」を手に入れたので残りの現存している2冊を探し出して、3冊すべてが本物かどうか鑑定してほしいという依頼だった。社長からナインスゲートを借りたディーンは早速調査を開始する。そして社長に本を譲った人物が謎の首吊り自殺を遂げていたのを知り、本屋を営む友人にナインスゲートを預けるが、友人は本に挿入されている版画と同じ奇妙な姿で殺されてしまう。隠し場所を知っていたディーンは本を持って、2冊目があるスペインへ向かう。本の持ち主に会ったディーンは2冊のナインスゲートを調べて版画のサインが微妙に違っているのに気付く。調査のあとホテルに戻ったディーンは以前に図書館で出会ったブロンド女性(セイナー)と遭遇して、彼女に導かれるまま本の持ち主の屋敷を再訪すると持ち主は殺され、本は挿し絵の版画が破り獲られてほぼ燃え尽きていた。ディーンは最後の1冊を所有している持ち主に会いにパリに向かう。しかし、そこでも同じような出来事が待っていた。そしてナインスゲート(9番目の扉)は彼の到着を静かに待っていた。

主人公の探偵が、依頼を引き受けて調査をしていくうちに関わった人物は謎の死を遂げていき、遂には本人が何ものかに命を狙われて、それをまた謎の美しい美女が助ける。というサスペンス映画のお手本のような作品。依頼が悪魔の書なので、結末はどうなるかが想像つくだけにラストにたどり着くまでがちよっと長い。謎のブロンド美女の正体が最後まで分からなかったのがラストまで期待を持たせてくれる唯一の救い。それにしても、この手のサスペンス作品にレナ・オリンはハマリすぎ。
(気まぐれ飛行船)

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2000年6月5日 by p-movie.com

サム・ガール

理想的な関係を探す恋愛コメディー ★★★☆☆
[98/米] 1h25 5月27日より渋谷シネマ・ソサエティーにてロードショー

製作:ゲイ・リビシ
監督:ローリー・ケリー
脚本・主演:マリサ・リビシ
出演:ジュリエット・ルイス ジョバンニ・リビシ ジェレミー・シスト
配給:ファインアーツエンタテインメント+シネマストリーム
宣伝:シネマストリーム

「映画を15000ドル以下で製作する方法」というのを読んだ、主役を演じたマリサ・リビシが脚本を執筆して芸能プロのマネージメントをしている母親のゲイ・リビシが製作を手伝い、双子の弟で「すべてをあなたに」や「プライベート・ライアン」のジョバンニ・リビシが映画でも弟役を演じ、マリサとプライベートでも友人のジュリエット・ルイスが親友役を演じているというすごく内輪なインディーズ映画。ジョバンニとジュリエットは、この映画の撮影後に「カーラの結婚宣言」で恋人同士を演じている。監督のローリー・ケリー(スリープ・ウイズ・ミー)は、この作品で1998年L.Aインディペンデント・フィルム・フェスティバルで最優秀監督賞を受賞している。

生まれつき赤毛のために男たちの目を惹くのだが、なかなか真の恋人に巡り会えないクレア(マリサ・リビシ)。今日もまた街で声をかけられるが、どうせ深く付き合ったらすぐに別の彼女を見つけるに違いないと思うと、恋愛に臆病になっている。クレアの親友のエイプリル(ジュリエット・ルイス)は、下着を履き替えるように毎日違う男と朝を迎えていて、彼女の恋愛哲学はクレアには参考にならない。クレアの弟のチビで不格好のジェイソン(ジョバンニ・リビシ)は、気合いが入りすぎていつも空回りばかり「最高の男友達」が彼のキャッチフレーズになっていて、エイプリルとは犬猿の仲。クレアと仲間たちはいつもバーに集まり、どうすれば素敵な恋愛が出来るか?話題はいつもそのことばかりだった。。ある日、クレアは街角で俳優の卵のチャドに声をかけられる。クレアは新しい恋をスタートさせるが、エイプリルはクレアの新しい恋に悲観的な態度をとる。実はチャドはエイプリルが関係を持った男たちの莫大なリストの中のひとりだった。しかも久しぶりに再会したエイプリルとチャドは再び寝てしまう。それを知ったクレアは、素敵な復讐を実行する。

もともとは、自分を振って別の女性とつき合いだした男を殺すヒロインというミステリーの企画だったそうだが、20代前半の若者たちを描いた恋愛コメディーに変えたのは正解。登場人物がいい加減な奴ばかりで、どこにでもいそうな人物ばかりなのでリアル感がある。ぜひ大勢でワイワイと見に行って「あのキャラクターはOOさんに似てる~」など見終わったあとに大いに盛り上がって下さい。

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2000年5月26日 by p-movie.com

マイ・ハート,マイ・ラブ

自分の人生、主役が出来るのは自分だけ ★★★☆☆
[99/米] 2h01 5月20日より有楽町スバル座にてロードショー

製作・監督・脚本:ウィラード・キャロル
出演:ショーン・コネリー ジーナ・ローランズ アンジェリナ・ジョリー ライアン・フィリップス マデリーン・ストウ デニス・クエイド ジリアン・アンダーソン
配給:ギャガ・ヒューマックス
宣伝:樂舎

ショーン・コネリーをはじめ、豪華なスターたちの出演による都会的なタッチで見つめた感動のヒューマン・ドラマ。今年は「マグノリア」の影響からか人間群像ものの公開が多いようだが、この作品は夫婦・恋人家族・友人と繋がりの関係は深い。 TVプロデューサーのポール(コネリー)と料理研究家のハンナ(ジーナ)は結婚生活40年目を迎えるおしどり夫婦。ロサンゼルスの豪華な家に住み幸せに暮らしていたが、ある日ハンナは夫が今でも大切にしている写真を見つけ、ポールが以前に仕事を通じて知り合った女性を愛していたことを知ってしまう。

ナイトクラブの騒がしい中でジョーン(アンジェリナ)は恋人と別れ話をしていた時に、コインを貸してくれたキーナン(ライアン)と出会い思いを寄せるようになる。だがキーナンはなかなか心を開いてくれない。しかしジョーンの熱い情熱に、彼は新しい人生を歩む気持ちになる。

夫のことを”ルームメイト”だというグレイシー(マデリーン)は妻子持ちの牧師ロジャーと目下浮気中。セックス以外の感情は持ち込まないクールな関係を続けてきたがロジャーは、それだけでは満足できなくなっていた。妻が死に仕事も失ったとバーで自分の身の上話をするヒュー(クエイド)。実は彼の話は全て作り物で、演劇の即興教室での課題をこなしているだけだった。しかし、彼はこの日課になってしまった即興が実生活の嘘よりも上手になってしまった事に怖くなってしまう。

舞台演出家のメレディス(ジリアン)は、昔の夫が同性愛に走ってしまって以来、恋には臆病になっていた。彼女のルームメイトは大きな犬だけ。ある時仕事先で知り合った離婚歴のある建築家のトレントにデートに誘われて自宅にディナーを用意して招待するが、口論になってしまう。しかし、トレントは優しくメレディスを包み込み、ふたりの関係は静かに変化してゆく。

愛というものを言葉で表現するのは、なかなか難しいものであるために喧嘩をしたり、お互いがギクシャクしたり・・・なんて事はよくあること。そういったごく普通のラブストーリーの中で11人がそれぞれの幸せを求めて、それぞれが主人公を演じているので、「あっ、私に似ている!」という登場人物が見つかったり、「その気持ちわかるー」なんて感情移入ができると思う。それぐらい何処にでもいそうな身近な人物たちであり、身近で起こっているような大人のストーリー。そして全く関係ないと思われる登場人物の間に、話が進むに連れて関連性が見えてくるところが面白い。

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2000年5月19日 by p-movie.com

どら平太

快娯楽時代劇  ★★★★☆
[00/日本] 1h51 5月13日より日劇東宝ほか全国東宝邦画系にて公開

原作:山本周五郎「町奉行日記」
監督:市川 崑
脚本:四騎の会(黒澤 明 木下恵介 市川 崑 小林正樹)
出演:役所広司 片岡鶴太郎 浅野ゆう子 宇崎竜童 菅原文太
配給・宣伝:東宝株式会社

日本の巨匠と言われている四人の監督が脚本を書いた四騎の会の第一作「どら平太」が30 年かかり映画化された。当初は三船・錦之助・裕次郎・勝の共演で四人が自分の好きな部分を演出するという夢のようなプロジェクトだったが、残念ながら実現されなかったのである。その後幾度となく映画化の期待を伺っていた市川崑監督が役所広司の時代劇熱望をきっかけに、監督作品74作目にしてリベンジが実った。ちなみにタイトルを名付けたのは黒澤明である。

或る小藩の町奉行所に江戸から新任の町奉行の望月小平太(役所)が来るという。振る舞いは不埒を極めて「どら平太」という仇名までついている評判の悪い男だった。しかし、それは本人が友人の大目付・仙波(宇崎)に頼んで、わざと悪評を流させていたからだ。壕外と呼ばれる治外法権と化した地域の一画では三人の親分が権力を握り、密輸・売春・賭博の利権を分け合って城代家老をはじめとする藩の重職と長年結託して藩政を欲しいままにしていた。藩の腐敗をなくしたいと望む徒士目付・安川(片岡)は、その病巣を取り除くためにどら平太に全てを託した。どら平太は奉行所には赴かず、安川に手配させた宿を根城にして遊び人として別人になりすまし、壕外に出入りして壕外の掃除を一人で始めるのだった。

昨年から今年に入って時代劇が作られているが、この「どら平太」が今の段階ではいちばん面白いと思う。物語も分かりやすくて(遠山の金さんのようだけど)、50人のやくざとの大立ち回りで敵をなぎ倒していく役所広司の格好良さは、さすが痛快・愉快・豪快を売りにしているだけあってなかなかです。見終わって清々しい気分になりたい方はお見のがしなく。

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2000年5月15日 by p-movie.com