映画『ザ・レイド』(R-15)

世界の映画祭で話題沸騰!
ハリウッドも認めた―
10年に1本のアクション映画、日本上陸!

<INFORMATION>

第36 回トロント国際映画祭ミッドナイト・マッドネス部門観客賞受賞、第44 回シッチェス・カタロニア国際映画祭ほか世界各国の映画祭を席巻、さらにはアクション描写の完成度の高さから全米公開され、続編の製作、そしてハリウッド・リメイクが決定。世界が熱狂したインドネシア発のノンストップ・ハイテンション・アクション「ザ・レイド」がいよいよ10月27日に日本公開!

麻薬王が支配する30 階建ての高層ビルに強制捜査(=RAID/レイド)に入った20 人のSWAT と、迎え撃つ無数のギャングとの、エンドレス・バトルが勃発!銃撃戦、剣斬戦、そして世界50 カ国以上で軍隊正式採用の最強格闘術“シラット”が炸裂。本作で主人公ラマを演じるのは、プロのシラット選手として国際的に活躍するイコ・ウワイス。世界的スターであるキアヌ・リーヴスの監督デビュー作『Man of Tai Chi』でハリウッドデビューも決まった注目株を筆頭に、達人級の格闘家たちが繰り広げるハードな肉弾戦。
ノンストップで駆け抜ける全編102 分はまさにノンフィクションともいうべきアクション!アジアからハリウッド、そして世界へ…今アクション映画の新たなる伝説が始まる。

<STORY>

ジャカルタのスラム街にそびえ立つ30 階建ての高層ビル―麻薬王タマ・リヤディが支配するそのビルは、ギャング、殺し屋、ドラッグの売人たちのアジトだった。
強制捜査に入ったジャカルタ警察のSWAT チームは、麻薬王タマを逮捕するため、悪の巣窟たるビルの奇襲計画を実行に移す。
だが突入は全て筒抜け…20人のSWATと無数のギャングとの激しい闘いが勃発する。激しい銃撃戦を経て、ひとりまたひとりと命を落としていく隊員たち。
進めど進めど襲いかかってくる敵。使える武器は、銃、爆薬、ナイフ、家具、そしてインドネシア拳法“シラット”。
残されたSWAT 隊員は、全住人を倒し、難攻不落の犯罪ビルから脱出できるのか―

<CREDIT>

■キャスト:イコ・ウワイス/ジョー・タスリム/ドニー・アラムシャ/ヤヤン・ルヒアン/ピエール・グルノ/テガール・サトリヤ/レイ・サヘタピー
■監督・脚本:ギャレス・エヴァンス
■音楽:マイク・シノダ(リンキン・パーク)/ジョセフ・トラパニーズ
2011 年/インドネシア/インドネシア語/カラー/原題:The Raid: Redemption/ビスタサイズ/ドルビーSRD/102 分

『ザ・レイド』
10月27日、シネマライズ・角川シネマ有楽町他 全国ロードショー!
上映時間:120分
公式ホームページ http://www.theraid.jp/index.html
配給:角川映画
©MMXI PT. MERANTAU FILMS

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カテゴリー: 映画紹介 | 特 集

2012年10月19日 by p-movie.com

ベン・アフレック監督&主演作品 『アルゴ』

『ザ・タウン』 ベン・アフレック監督&主演作品
CIA史上、最もありえない人質救出作戦は、<映画製作>だった!?
実話を元にした前代未聞の救出ストーリー!!

<INTRODUCTION>

信じられなくて当然だ。だが、全てが実話なのだ。

アメリカが18年間封印した、最高機密情報!
CIAが仕掛けた人質救出作戦は、〈ウソの映画製作〉だった──!?

全世界を震撼させた、歴史に残る大事件が起きたのは、1979年11月。革命が吹き荒れるイランで、過激派がアメリカ大使館を襲撃、大使館員を人質にとる。彼らの要求は、悪政の限りを尽くしてアメリカに逃げた前国王の引き渡しだった。混乱のなか裏口から6人が脱出、カナダ大使の家に身を隠すが、見つかれば公開処刑は間違いない。絶望的な状況を打破するため、CIAの人質奪還のプロ、トニー・メンデスが呼ばれた。

トニーの“名案”は、ウソの映画を企画し、6人をロケハンに来た撮影スタッフに仕立て上げ、出国させるという作戦。特殊メイクの第一人者で、『猿の惑星』でアカデミー賞に輝いたジョン・チェンバースが協力、瞬く間にプロデューサーと脚本が用意され、SFファンタジー「アルゴ」の盛大な記者発表が行われた。イランどころかアメリカまでも欺き、タイムリミット72時間のハリウッド作戦が始まった! ところが──絶対にバレると反発する6人、脱出者がいることに気づくイラン、緊迫のなかCIAから作戦中止の命令が! 果たして6人の命の行方は──?

事件から18年後、クリントン大統領が機密扱いを解除した、前代未聞の作戦の全容を映画化したのは、『ザ・タウン』に続く監督・主演作となるベン・アフレックと、プロデューサーを務めるジョージ・クルーニー。次々と立ちふさがる難関をプロの技と強靭な精神でクリアしていくトニー、どんな過激な手段を使ってでも6人を捕まえようと迫るイラン、アメリカからフォローするはずが国際情勢に左右されるCIA──3つのストーリーが同時進行に描かれ、リアルタイムのサスペンスに緊張感はマックス、観る者の動悸が加速する!
製作:CIA、主演:人質、共演:イラン兵士──今すべてが真実の、命がけの“映画”が始まる──!

この《実話》はフィクションよりも大胆

<STORY>

1979年11月4日、イラン革命が激しさを増すテヘランで、過激派がアメリカ大使館を占拠し、大使館員を人質にとった。しかし、この大混沌の中、6人のアメリカ大使館員が何とか逃げ出すことに成功し、カナダ大使の自宅に身を隠したー。
もし見つかれば彼らの命はもちろん人質の命も危ない。
この絶望的な状況の中、CIAの救出作戦のエキスパート、トニー・メンデス(ベン・アフレック)が、彼らを安全に国外へと救出する為の危険な作戦を思いつく。
それはウソの映画を企画し、6人のアメリカ大使館員をロケハンに来たカナダの映画クルーに仕立て上げ、国外に出国させるという映画でしか起こりえない前代未聞の作戦だったー!?

<CREDIT>

■キャスト:ベン・アフレック、アラン・アーキン、ブライアン・クランストン、ジョン・グッドマン 他
■監督:ベン・アフレック
■脚本:クリス・テリオ
■製作:ジョージ・クルーニー、グラント・ヘスロブ、ベン・アフレック

『アルゴ』(Argo)
10月26日(金)丸の内ピカデリーほか全国ロードショー
上映時間:120分
公式ホームページ http://www.argo-movie.jp
配給:ワーナー・ブラザース映画
©2012 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC.

【「アルゴ」 試写会プレゼント】
○日時:10月16日(火)  開場18:00、開演18:45 (上映時間:120分)
○場所:よみうりホール(東京都千代田区有楽町1-11-1 読売会館7階)
○提供数:5組10名様
○応募締切:2012年10月8日(月)
詳細はこちら
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2012年9月21日 by p-movie.com

『ヒューゴの不思議な発明』マーティン・スコセッシ監督来日記者会見

ヒューゴの<夢の発明>にあなたは驚き、涙する

ヒューゴの不思議な発明
(C)2011ParamountPictures.AllRightsReserved


3月1日に迫った『ヒューゴの不思議な発明』の日本公開、そして最多11部門にノミネートされているアカデミー賞の発表(こちらは2月26日)を前に、あの巨匠マーティン・スコセッシ監督が緊急来日。六本木のリッツカールトン・ホテルにて記者会見を行った。

『タクシー・ドライバー』や『レイジング・ブル』でアメリカン・ニューシネマを牽引し、『ディパーテッド』で念願のアカデミー賞作品賞を受賞した彼だが、『ヒューゴ』ではこれまでとは打って変わって子どもたちの心の中に入り込み、たゆたうように自由で開放的なファンタジー映像を紡いでいく。しかも今作は彼の長いキャリアにおける初の3D映画となる。

マーティン・スコセッシ監督

「これは私にとってパーソナルな作品であり、これまでとは違った思い入れがあります」

そう口にするスコセッシは、その“パーソナル”な理由として、自分が歳を取ってから授かった、現在12歳になる愛娘の存在を挙げて表情をほころばせた。

これまでギャング映画などを手掛けてきた巨匠が、家に帰ると幼子と対峙して彼女の心理に寄り添わねばならないのだ。彼は娘やその友人たちの思考や感受性といったものに大きな影響を受けたという。それはまさに世界観が一変するような素晴らしい経験で、「かつて若かった自分が様々なものから創造性の刺激を受けていた時代に回帰することができた」のだそうだ。これらの経験を踏まえて彼はこう言う。

「大人の感覚を持つということは仕事をする上でとても大事なこと。しかしどれだけ歳を経ようとも、創造性だけは決して阻害されてはならない」

また今回の映画化を決心するにあたっては、奥様がふと漏らした言葉も彼の心を後押ししたようだ。彼女はそのときちょうど原作を読み終えたころで、彼にこう言った。

「あなたも時には、自分の娘のために映画を作ってみたら?」

スコセッシは今年70歳。この言葉が彼の心の中でどれだけ重く響いたかは、まるでスノードームを見つめるかのように彩られたこの映画を観ればすぐに伝わってくるはずだ。

マーティン・スコセッシ監督

ちなみにこの日は、女優の小雪さんがスコセッシ監督のために花束を持って来場。「ストーリー、脚本、美術、音楽、全てに渡って素晴らしく、そして3D効果が映画に奥行きを感じさせてくれます。まるで夢の中にいるかのような、あっという間の2時間5分でした」と感想を伝え、スコセッシ監督も持ち前のにこやかな笑顔で「アリガト。とても光栄です」と答えていた。

<CREDIT>

公式ホームページ http://www.hugo-movie.jp/
3/1(木/映画の日)機械仕掛けの奇跡が始まる―。
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

(c)2011 GK Films. All Rights Reserved.

【ライター】牛津厚信

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2012年2月20日 by p-movie.com

第18回大阪ヨーロッパ映画祭

第18回大阪ヨーロッパ映画祭 ラインナップ決定

~世界の今に、ここで出会う~


【日程】
2011年11月3日(木・祝)〜 2011年12月9日(金)
エルセラーンホール(ホテルエルセラーン大阪)、梅田芸術劇場、
梅田ブルク7、イーマ、兵庨県立美術館ほか
ヨーロッパ最新映画初上映:11月18日(金)〜23日(水・祝)

【映画祭について】
日本とヨーロッパとを結ぶ映像文化の祭典、「大阪ヨーロッパ映画祭」を、今年も11月に開催いたします。
今年の映画祭には次の7つの特色があります。

I. 「ダンス・3D」
ドイツ生まれの世界的舞踊家・振付師、ピナ・バウシュ。2009年に亡くなった彼女の人生の軌跡とヴッパタール舞踊団の名作を、名匠ヴィム・ヴェンダース監督が3Dで撮った最新作「Pina 3D/ピナ・バウシュ 踊り続けるいのち」を、オープニング作品として上映します。

II. 「映画祭のキンダーガーデン」
毎年、映画祭に行きたくても子どもがいるので行けない!とのご意見があります。そこで、今年のキッズイベントは映画祭会場にて開催します。パパもママも、映画をゆっくりとご鑑賞いただけるようになりました。子どもたちには、イタリア・トリノ市との国際交流企画および、映像の仕組みを体感できる“キッズプログラム”を用意しております。

III. 「美容師」
ソウル国際女性映画祭でオープニング上映を飾り、ベルリン国際映画祭にも特別招待された、ヨーロッパの大ヒット作「ヘアードレッサー(仮題)」を、本映画祭でも特別招待作品として上映します。今年の映画祭名誉委員長であるドイツ人女性監督ドリス・ドリエが、“美容師”をテーマに撮影した最新作です。

IV. 「イタリア」
大阪・ミラノ姉妹都市提携30周年と、イタリア統一150周年を記念し、イタリア・ミラノに関する作品を特集上映します。また、ミラノより、イ・ソリスティ・ロンバルディ楽団所属のデュオを招聘し、世界初公演となる“アニタ・ガリバルディ”に生演奏を合わせるコンサートも実施します。

V. 「環境」
環境問題を扱った、食文化・石油製品・電気エネルギー・原発などのテーマに関するヨーロッパ映画を上映します。また、日本・ヨーロッパの専門家を招いたシンポジウムを実施し、環境問題について今一度考える機会を作ります。

VI. 「フィンランド」
今年はフィンランド映画を特集上映します。日本人にはなじみの少ないフィンランド映画ですが、今年はその映像の美しさと、現在のフィンランドを、さまざまな角度からご堪能いただけます。

VII. 「希望の光」
映画祭で上映したヨーロッパ最新映画の中から、来場者の投票により選ばれた作品を、東北地方の被災地にて上映します。“映画は人に感動と希望と夢を与える。関西から東北へ、映画を通じて希望の光を”。

【関連イベント】
このほかにも関連イベントとしまして、来日ゲストが関西圏の専門学校や大学で講義を行う「映画塾」、毎年大好評の「世界のCMフェスティバル」、「写真展」なども開催いたします。

第18回大阪ヨーロッパ映画祭 公式ホームページ http://www.oeff.jp/

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2011年11月1日 by p-movie.com

『わたしを離さないで』著者カズオ・イシグロ記者会見

この命は、誰かのために。この心は、わたしのために。


著書「日の名残り」で英国文学の最高峰とされるブッカー賞を受賞し、同作の映画化を経てその名をますます英国民の間に浸透させた作家カズオ・イシグロ。もともと日本(長崎)で生まれ、5歳のときに父の仕事の関係で渡英した経歴を持つ彼が、今や“英国が誇る”有名作家にまでのぼりつめて久しい。

その繊細な表現世界は更なる高みへ。彼が2005年に発表した「わたしを離さないで」は、そのあまりに切ない状況設定、人物関係、そして登場人物の心象が、「日の名残り」を知らない若い読者たちの心をも魅了し、また、この作中に隠された“驚き”が世界中に静かな絶賛の渦を巻き起こしていった。

そして本作は、ついに映画化へ。

幼いころより映画という映像メディアに魅せられてきたイシグロ氏は、今回自らがエグゼクティブ・プロデューサーの役目を担い、自身の代表作を別次元へと昇華させるべく、いくつもの類稀なる才能たちとコラボレーションを遂げてきた。そうして完成した作品『わたしを離さないで』が3月26日より公開中だ。

公開を前に、約10年ぶりに来日(すでに英国に帰化している彼にとって日本は“帰国”の地ではないのだ)を果たしたカズオ イシグロ。ここに英国大使館で行われた記者会見の模様をお伝えする。彼が語る『わたしを離さないで』に込めた思い、そして映画の舞台裏とは―?

「本日はお集まりくださりありがとうございます。そして英国大使館の皆さま、この度は会見のためにわたくしを侵略(invade)させていただき、感謝申し上げます」

そんな茶目っけたっぷりの挨拶で会見は幕を開けた。日本語ではない。最初から最後まで英語通訳を介しての質疑応答となった。イシグロ氏にとって日本語とは、日本に別れを告げる5歳頃まで使っていた言語に過ぎない。今もなんとなくヒアリングは可能だそうだが、それも女性の声に限るという。どうやら彼の日本語耳は幼少期に母親が発していた声のトーンを基調としてできあがっているようだ。


【いちばん頭を悩ませた“状況設定”】

『わたしを離さないで』は、ひとりの女性介護士の目線を通して、過酷な運命、短い人生を精一杯に全うしようとする幼なじみ3人の、切ない愛と友情を描いた物語だ。

執筆にあたり、彼の頭を悩ませたのはその状況設定だったという。

「私はまず、数人の若者についての物語を書きたいと思いました。そして通常の人間は70~80年くらいの寿命であるところを、彼らだけは30歳くらいまでしか生きられない、という設定を作りだしたかった。では、どういうシチュエーションならばそれが可能になるのか。それをずっと考えていました」

主人公となる3人の男女は幼いころから寄宿舎で一緒に生活し、やがて“ある使命”のため運命を受け入れる日がやってくる。それは我々からしてみればあまりに哀しく、残酷だ。だがそんな彼らの人生にも、僅かながら幼少期、思春期、成熟期、そして老後といったものが存在する。読者や観客はやがて、本作で描かれる状況が実はこの世界に生きる我々と何ら変わらないことに気づかされるだろう。彼らのスピードがちょっと速いだけなのだ。イシグロは言う。

「人生とは考えているよりも短いもの。だからこそ、限られた時間の中で自分がいったいなにをすべきかを一生懸命に考え、行動してほしい。そういう願いをこめてこの作品を執筆しました」

この小説&映画は、まさにその「人生の本質」を伝えるための作品と言ってよさそうだ。

【エグゼクティブ・プロデューサーとしての挑戦】

今回の映画化は、『ザ・ビーチ』の原作や『サンシャイン2046』といったダニー・ボイル監督作でも名高い小説家、脚本家アレックス・ガーランドとのやりとりに端を発している。

ふたりはロンドン在住で家が近いということもあり、よく逢って話をする仲なのだそうだ。イシグロは「私を離さないで」を執筆しているさなかにも幾度にも渡ってそのアイディアを話して聴かせた。そんな中、ふとした拍子にガーランドが「映画版の脚本を書かせてくれないか」と言いだしたという。彼の才能を信頼していたイシグロはその可能性に賭けてみたいと考え、原作が出版される前からその約束を取り交わしていたという。「そうやってアレックスが書きあげた第一稿を手に、二人の側から映画会社へ売り込みをかけたんです」。つまり今回のイシグロは原作者のみならず、自ら映画化へ向けて積極的に仕掛けていったわけである。

また、監督の起用についても“情熱”が事を決定づけた。

手掛けたのは創造性に富んだミュージック・ビデオで知られ、長編作品ではロビン・ウィリアムズ主演の『ストーカー』という作品を発表しているマーク・ロマネクだ。彼が映し取る映像ときたら、これまた全てのシーンを記憶にとどめたいほどの美しさを宿している。

イシグロによると、彼もまたこの原作に魅せられ、雇われ監督としてではなく、自らの意志でこの作品を監督する機会を求めてイシグロのもとへ引き寄せられてきたという。その情熱に強く心を動かされ、イシグロはこの作品を彼に委ねようと決めた。曰く、

「彼はアメリカ人ですが、私にとってそのような国籍は全く関係がないことです。むしろ大事なのは、どれだけこの作品に思い入れがあるのか、またどれほどこの映画を作りたい情熱を抱いているのか、といったことです。アレックスと私は彼の強い意志を確認し、自分たちの抱くものと近いモノがあると確信しました」

【キャストについて】

いよいよ製作がはじまると、イシグロはただ「信じる、信頼する」ことに徹した。原作からの脚色や相違点などもすべて任せ、「あとは車の後部座席に乗り込んだような気分で、じっと成り行きを見守った」という。

そうした中、キャストには英国でいま最も注目されている3人の若手俳優が集まった。

『17歳の肖像』でアカデミー賞主演女優賞候補となったキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもお馴染みのキーラ・ナイトレイ、そして新たに起動する『アメージング・スパイダーマン』の主役に抜擢されたアレックス・ガーランド。まさにこれ以上ない人選である。キャスティングについてイシグロはこういった若手の活躍する英国映画界を「ゴールデンエイジ」と表現し、三人への賞賛を惜しまない。

「彼らは撮影前にそれぞれに自分たちのキャラクターについてじっくりと掘り下げて役作りを進めていました。その読みこみの深さといったら、原作者の私なんか立ち及ばないほどです。キャラクターに関する私の未創造の部分を、むしろ彼らから教えてもらったという感じです」

そしてイシグロは、自らが上梓した原作が、多くの才能の手を経て別次元へと開花していく過程を、「例えるなら、まるでひとつの作曲家の書いた曲があり、それを様々なミュージシャンが演奏することによって、表現の厚みがどんどん広がっていく、まさにそんな体験」と語った。

【映画と小説との関係性】

さて、会見の終盤でイシグロは、多くのベストセラー小説がたどる「映画化」という既定路線について、彼なりの考察を示してくれた。

そもそも小説家としてキャリアを歩む前にはテレビドラマの脚本などにも関わっていたという彼。その経験もあって、小説を執筆するときには常に映画とは別次元の表現の可能性を模索しようと心に決めているのだとか。

「ですから、私の小説を映画化することなど、どだい無理な話なんです(笑)」

イシグロはそう笑いつつも、新作小説を発表する度にエージェントに「映画化の話は来てないかな?」と確認せずにはいられないと言う。その想いの裏側には、彼が幼いころより魅せられてやまない「映画への期待」が込められているようだ。

「小説というものは、映画とまったく違った視点で構築されています。だからこそ、小説をベースにして映画へと再構築しようとする試みはフィルムメーカーにとって大きな勇気と想像力を伴うものと言えるでしょう。そしてそういう労苦を起点にしてこそ、従来のステレオタイプやジャンル物とは全く異なったユニークな題材、新しい語り口を持った映画がどんどん生まれてくると思うのです」

その言葉は、幼いころから日本とイギリスというふたつの国のアイデンティティを抱えてきた彼が自身の中で両者の整合性を保とうとしてきた姿と重なって響いてくる。国境を越えた語り手はいま、文学と映像との境界をも流麗に行き来する存在となった。

彼の作品はこれからどのように進化を遂げていくのか。文学作品、映像作品ともに、今後も世界中からの注目を集めていきそうだ。

そして願わくば、生まれ故郷の日本のことを忘れずに、これからも頻繁に来日、いや“帰国”してもらいたいものだ。

監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」ハヤカワepi文庫
出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリング
2010年/イギリス、アメリカ映画/シネマスコープ、配給:20世紀フォックス映画

公式サイト http://movies.foxjapan.com/watahana/
3月26日(土)より、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 他にて全国ロードショー
(C)2010 Twentieth Century Fox

【ライター】牛津厚信

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カテゴリー: ヨーロッパ | 特 集 | 記者会見

2011年4月18日 by p-movie.com