『ヒューゴの不思議な発明』マーティン・スコセッシ監督来日記者会見

ヒューゴの<夢の発明>にあなたは驚き、涙する

ヒューゴの不思議な発明
(C)2011ParamountPictures.AllRightsReserved


3月1日に迫った『ヒューゴの不思議な発明』の日本公開、そして最多11部門にノミネートされているアカデミー賞の発表(こちらは2月26日)を前に、あの巨匠マーティン・スコセッシ監督が緊急来日。六本木のリッツカールトン・ホテルにて記者会見を行った。

『タクシー・ドライバー』や『レイジング・ブル』でアメリカン・ニューシネマを牽引し、『ディパーテッド』で念願のアカデミー賞作品賞を受賞した彼だが、『ヒューゴ』ではこれまでとは打って変わって子どもたちの心の中に入り込み、たゆたうように自由で開放的なファンタジー映像を紡いでいく。しかも今作は彼の長いキャリアにおける初の3D映画となる。

マーティン・スコセッシ監督

「これは私にとってパーソナルな作品であり、これまでとは違った思い入れがあります」

そう口にするスコセッシは、その“パーソナル”な理由として、自分が歳を取ってから授かった、現在12歳になる愛娘の存在を挙げて表情をほころばせた。

これまでギャング映画などを手掛けてきた巨匠が、家に帰ると幼子と対峙して彼女の心理に寄り添わねばならないのだ。彼は娘やその友人たちの思考や感受性といったものに大きな影響を受けたという。それはまさに世界観が一変するような素晴らしい経験で、「かつて若かった自分が様々なものから創造性の刺激を受けていた時代に回帰することができた」のだそうだ。これらの経験を踏まえて彼はこう言う。

「大人の感覚を持つということは仕事をする上でとても大事なこと。しかしどれだけ歳を経ようとも、創造性だけは決して阻害されてはならない」

また今回の映画化を決心するにあたっては、奥様がふと漏らした言葉も彼の心を後押ししたようだ。彼女はそのときちょうど原作を読み終えたころで、彼にこう言った。

「あなたも時には、自分の娘のために映画を作ってみたら?」

スコセッシは今年70歳。この言葉が彼の心の中でどれだけ重く響いたかは、まるでスノードームを見つめるかのように彩られたこの映画を観ればすぐに伝わってくるはずだ。

マーティン・スコセッシ監督

ちなみにこの日は、女優の小雪さんがスコセッシ監督のために花束を持って来場。「ストーリー、脚本、美術、音楽、全てに渡って素晴らしく、そして3D効果が映画に奥行きを感じさせてくれます。まるで夢の中にいるかのような、あっという間の2時間5分でした」と感想を伝え、スコセッシ監督も持ち前のにこやかな笑顔で「アリガト。とても光栄です」と答えていた。

<CREDIT>

公式ホームページ http://www.hugo-movie.jp/
3/1(木/映画の日)機械仕掛けの奇跡が始まる―。
配給:パラマウント ピクチャーズ ジャパン

(c)2011 GK Films. All Rights Reserved.

【ライター】牛津厚信

.

カテゴリー: 特 集 | 記者会見

2012年2月20日 by p-movie.com

『わたしを離さないで』著者カズオ・イシグロ記者会見

この命は、誰かのために。この心は、わたしのために。


著書「日の名残り」で英国文学の最高峰とされるブッカー賞を受賞し、同作の映画化を経てその名をますます英国民の間に浸透させた作家カズオ・イシグロ。もともと日本(長崎)で生まれ、5歳のときに父の仕事の関係で渡英した経歴を持つ彼が、今や“英国が誇る”有名作家にまでのぼりつめて久しい。

その繊細な表現世界は更なる高みへ。彼が2005年に発表した「わたしを離さないで」は、そのあまりに切ない状況設定、人物関係、そして登場人物の心象が、「日の名残り」を知らない若い読者たちの心をも魅了し、また、この作中に隠された“驚き”が世界中に静かな絶賛の渦を巻き起こしていった。

そして本作は、ついに映画化へ。

幼いころより映画という映像メディアに魅せられてきたイシグロ氏は、今回自らがエグゼクティブ・プロデューサーの役目を担い、自身の代表作を別次元へと昇華させるべく、いくつもの類稀なる才能たちとコラボレーションを遂げてきた。そうして完成した作品『わたしを離さないで』が3月26日より公開中だ。

公開を前に、約10年ぶりに来日(すでに英国に帰化している彼にとって日本は“帰国”の地ではないのだ)を果たしたカズオ イシグロ。ここに英国大使館で行われた記者会見の模様をお伝えする。彼が語る『わたしを離さないで』に込めた思い、そして映画の舞台裏とは―?

「本日はお集まりくださりありがとうございます。そして英国大使館の皆さま、この度は会見のためにわたくしを侵略(invade)させていただき、感謝申し上げます」

そんな茶目っけたっぷりの挨拶で会見は幕を開けた。日本語ではない。最初から最後まで英語通訳を介しての質疑応答となった。イシグロ氏にとって日本語とは、日本に別れを告げる5歳頃まで使っていた言語に過ぎない。今もなんとなくヒアリングは可能だそうだが、それも女性の声に限るという。どうやら彼の日本語耳は幼少期に母親が発していた声のトーンを基調としてできあがっているようだ。


【いちばん頭を悩ませた“状況設定”】

『わたしを離さないで』は、ひとりの女性介護士の目線を通して、過酷な運命、短い人生を精一杯に全うしようとする幼なじみ3人の、切ない愛と友情を描いた物語だ。

執筆にあたり、彼の頭を悩ませたのはその状況設定だったという。

「私はまず、数人の若者についての物語を書きたいと思いました。そして通常の人間は70~80年くらいの寿命であるところを、彼らだけは30歳くらいまでしか生きられない、という設定を作りだしたかった。では、どういうシチュエーションならばそれが可能になるのか。それをずっと考えていました」

主人公となる3人の男女は幼いころから寄宿舎で一緒に生活し、やがて“ある使命”のため運命を受け入れる日がやってくる。それは我々からしてみればあまりに哀しく、残酷だ。だがそんな彼らの人生にも、僅かながら幼少期、思春期、成熟期、そして老後といったものが存在する。読者や観客はやがて、本作で描かれる状況が実はこの世界に生きる我々と何ら変わらないことに気づかされるだろう。彼らのスピードがちょっと速いだけなのだ。イシグロは言う。

「人生とは考えているよりも短いもの。だからこそ、限られた時間の中で自分がいったいなにをすべきかを一生懸命に考え、行動してほしい。そういう願いをこめてこの作品を執筆しました」

この小説&映画は、まさにその「人生の本質」を伝えるための作品と言ってよさそうだ。

【エグゼクティブ・プロデューサーとしての挑戦】

今回の映画化は、『ザ・ビーチ』の原作や『サンシャイン2046』といったダニー・ボイル監督作でも名高い小説家、脚本家アレックス・ガーランドとのやりとりに端を発している。

ふたりはロンドン在住で家が近いということもあり、よく逢って話をする仲なのだそうだ。イシグロは「私を離さないで」を執筆しているさなかにも幾度にも渡ってそのアイディアを話して聴かせた。そんな中、ふとした拍子にガーランドが「映画版の脚本を書かせてくれないか」と言いだしたという。彼の才能を信頼していたイシグロはその可能性に賭けてみたいと考え、原作が出版される前からその約束を取り交わしていたという。「そうやってアレックスが書きあげた第一稿を手に、二人の側から映画会社へ売り込みをかけたんです」。つまり今回のイシグロは原作者のみならず、自ら映画化へ向けて積極的に仕掛けていったわけである。

また、監督の起用についても“情熱”が事を決定づけた。

手掛けたのは創造性に富んだミュージック・ビデオで知られ、長編作品ではロビン・ウィリアムズ主演の『ストーカー』という作品を発表しているマーク・ロマネクだ。彼が映し取る映像ときたら、これまた全てのシーンを記憶にとどめたいほどの美しさを宿している。

イシグロによると、彼もまたこの原作に魅せられ、雇われ監督としてではなく、自らの意志でこの作品を監督する機会を求めてイシグロのもとへ引き寄せられてきたという。その情熱に強く心を動かされ、イシグロはこの作品を彼に委ねようと決めた。曰く、

「彼はアメリカ人ですが、私にとってそのような国籍は全く関係がないことです。むしろ大事なのは、どれだけこの作品に思い入れがあるのか、またどれほどこの映画を作りたい情熱を抱いているのか、といったことです。アレックスと私は彼の強い意志を確認し、自分たちの抱くものと近いモノがあると確信しました」

【キャストについて】

いよいよ製作がはじまると、イシグロはただ「信じる、信頼する」ことに徹した。原作からの脚色や相違点などもすべて任せ、「あとは車の後部座席に乗り込んだような気分で、じっと成り行きを見守った」という。

そうした中、キャストには英国でいま最も注目されている3人の若手俳優が集まった。

『17歳の肖像』でアカデミー賞主演女優賞候補となったキャリー・マリガン、『パイレーツ・オブ・カリビアン』シリーズでもお馴染みのキーラ・ナイトレイ、そして新たに起動する『アメージング・スパイダーマン』の主役に抜擢されたアレックス・ガーランド。まさにこれ以上ない人選である。キャスティングについてイシグロはこういった若手の活躍する英国映画界を「ゴールデンエイジ」と表現し、三人への賞賛を惜しまない。

「彼らは撮影前にそれぞれに自分たちのキャラクターについてじっくりと掘り下げて役作りを進めていました。その読みこみの深さといったら、原作者の私なんか立ち及ばないほどです。キャラクターに関する私の未創造の部分を、むしろ彼らから教えてもらったという感じです」

そしてイシグロは、自らが上梓した原作が、多くの才能の手を経て別次元へと開花していく過程を、「例えるなら、まるでひとつの作曲家の書いた曲があり、それを様々なミュージシャンが演奏することによって、表現の厚みがどんどん広がっていく、まさにそんな体験」と語った。

【映画と小説との関係性】

さて、会見の終盤でイシグロは、多くのベストセラー小説がたどる「映画化」という既定路線について、彼なりの考察を示してくれた。

そもそも小説家としてキャリアを歩む前にはテレビドラマの脚本などにも関わっていたという彼。その経験もあって、小説を執筆するときには常に映画とは別次元の表現の可能性を模索しようと心に決めているのだとか。

「ですから、私の小説を映画化することなど、どだい無理な話なんです(笑)」

イシグロはそう笑いつつも、新作小説を発表する度にエージェントに「映画化の話は来てないかな?」と確認せずにはいられないと言う。その想いの裏側には、彼が幼いころより魅せられてやまない「映画への期待」が込められているようだ。

「小説というものは、映画とまったく違った視点で構築されています。だからこそ、小説をベースにして映画へと再構築しようとする試みはフィルムメーカーにとって大きな勇気と想像力を伴うものと言えるでしょう。そしてそういう労苦を起点にしてこそ、従来のステレオタイプやジャンル物とは全く異なったユニークな題材、新しい語り口を持った映画がどんどん生まれてくると思うのです」

その言葉は、幼いころから日本とイギリスというふたつの国のアイデンティティを抱えてきた彼が自身の中で両者の整合性を保とうとしてきた姿と重なって響いてくる。国境を越えた語り手はいま、文学と映像との境界をも流麗に行き来する存在となった。

彼の作品はこれからどのように進化を遂げていくのか。文学作品、映像作品ともに、今後も世界中からの注目を集めていきそうだ。

そして願わくば、生まれ故郷の日本のことを忘れずに、これからも頻繁に来日、いや“帰国”してもらいたいものだ。

監督:マーク・ロマネク
原作:カズオ・イシグロ「わたしを離さないで」ハヤカワepi文庫
出演:キャリー・マリガン、アンドリュー・ガーフィールド、キーラ・ナイトレイ、シャーロット・ランプリング
2010年/イギリス、アメリカ映画/シネマスコープ、配給:20世紀フォックス映画

公式サイト http://movies.foxjapan.com/watahana/
3月26日(土)より、TOHO シネマズ シャンテ、Bunkamuraル・シネマ 他にて全国ロードショー
(C)2010 Twentieth Century Fox

【ライター】牛津厚信

.

カテゴリー: ヨーロッパ | 特 集 | 記者会見

2011年4月18日 by p-movie.com

『漫才ギャング』完成報告記者会見 at ルミネtheよしもと

初監督作『ドロップ』が大ヒットを記録し、一気に邦画界の未来を背負う存在に躍り出た品川ヒロシが、再び自身の原作、脚本・監督作を引っ提げて帰ってきた。―それが『漫才ギャング』。

Superfly書き下ろしの主題歌「Beep!!」が疾走感を倍増させる中、今回の品川が描くのは、まさに彼自身が本職とする「漫才」の世界。それも留置所で出逢った見た目も性格もまったく違うふたりが、いつしか意気投合して漫才コンビを結成するという破格を極めるストーリーだ。

果たして今回はどのような作品に仕上がっているのか?すでに初号試写を観た関係者からは「前作越え」の評価も漏れ聞こえてくる本作だが、まだマスコミ披露も行われていない現時点で、出来あがったばかりの達成感や意気込みを語るべく、急遽、完成報告記者会見が行われた。それも、あの笑いの聖地「ルミネtheよしもと」で!

その時、12月22日午前10時。

「ルミネtheよしもと」の客席に集いしマスコミ陣は、幕が閉まった状態から突如、関西お笑いコンビ「ミサイルマン」による前座の猛襲を浴びることとなる。

普段この劇場に通い慣れたお客さんと違い、マスコミ記者は感情表現がかなり奥手だ。ミサイルマンのふたりもこの“アウェイ感”から生じるプレッシャーはハンパじゃなかったはず。それでもふたりは駆け抜けた。『漫才ギャング』に出演もしているおデブな西代洋は、腹にくくりつけたD&G(ドルチェ・アンド・ガッパーナ)のベルトを「3、2、1」の合図で腹の肉の下に忽然と消し去り、拍手喝さいを浴びた。まるで魔法だ。筆者も幾度も目をこすり、これが現実か否かを見極めようとした。現実だった。

いよいよ幕が開く。今度は司会進行としてお笑コンビ「ピース」の綾部祐二が登場。数日後には「M-1グランプリ」の決勝を控えている彼がここでこんなことをしていていいのか?誰もがそう気をそぞろにさせる中、彼は持ち前の安定感で徐々にマスコミを自分のペースへと引き込んでいく。ちなみに彼は本作『漫才ギャング』にも出演を果たしているそうだ。

そしていよいよ本日のメインが始動する。長編第二作目を完成させたばかりの品川ヒロシ監督、そして主演の佐藤隆太&上地雄輔の登場。

会見では『ROOKIES-卒業-』をはじめテレビ&邦画界の起爆剤として爽やかな熱血ぶりを振りまき続ける佐藤隆太が、この『漫才ギャング』のオファーを受けた経緯について振り返った。

「生意気にも非常に運命的なものを感じてます。というのも、たまたま僕自身がテレビで『品川監督の映画第2弾の製作が決まりました!タイトルは『漫才ギャング』です!』という報道を観てたんです。

それで内容も知らないのに、ああ、主人公の年齢はいくつくらいなんだろうな、って漠然とイメージを膨らませて、『ああ、やりたいな!』って思ったんです。でもキャストはとっくに決まっているんだろうな、とも思ってて。

ところが、数日してマネージャーから『映画の話が来てるんだけど』と打ち明けられた。『えっ!もしかして“あの”映画!?』って身体に衝撃が走りました」

そうやって運命的な映画に引き寄せられた佐藤は、初体験となった品川組の撮影現場についてこう語る。

「現場に入ってからの品川監督は本当に想像以上にポジティブで、すごく温かった。なにしろ初めてのタイプの役なので僕自身も多少不安はあったんですが、常に『だいじょうぶ!』って背中を押してくれる。そして『カット!』『OK!』の掛け方が実に気持ちいいんです。この人だったら何処へでもついていきたいなと思える監督でした!」

佐藤の爽やかな発言を受けて、司会の綾部が手際よくテキトーにまとめる。

「なるほど、本当に運命的なものだったんですね~」

間髪いれず、品川がツッコむ。

「(まとめ方が)古いよ!」

「古いってなんなんすか!(綾部)」

「昭和の歌謡祭みたいな・・・(品川)」

(一同爆笑)

今度は上地の出番だ。『漫才ギャング』ではドレッドヘアにタトゥーまで施した奇抜なキャラクターに挑む彼は、すでに品川とも「ヘキサゴン・ファミリー」としても気心知れた仲だ。彼は現場の印象をこう語る。

「監督自身がいい空気を出してくれるので、いつも現場も明るくて新鮮で、出演者とスタッフの距離も近くて、それでも決して慣れ合いにならず、いい意味でビリビリした現場でした…あっ、すみません、ちょっとケイタイが…あ、母さん?」

「出んのかよっ!?(綾部)」

「いま、ちょっと会見中だから…うん、じゃ、また!

…こういうときもある現場で…」

「どういうときだよ!(綾部)」

「こんな緊張感もありつつ(笑)、僕が言うのも何なんですが、品川監督の可能性は無限大だと思うので…また出てあげてもいいかな、と」

(一同爆笑)

まさに舞台上でボケとツッコミが反射光のようにキラキラ飛び交う会見。俄かに品川ヒロシが映画監督ならではの視座でふたりの印象を語る。

「今回はなにしろ漫才師の役ですから、『誰が演じるか?』という部分を占める割合が大きかった。雄輔とは前から親交があって、いつか自分の長編作品に出てほしいっていう想いはあったんですが、隆太くんとは逢ったこともなくて。でも彼の名前が浮かんだ瞬間から、どんどんこの企画のイメージが現実化していくのを感じました」

続けて品川は、佐藤との記念すべき初対面の一幕についてこう触れる。

「食事の席で初めてお逢いしたんですが、まだ映画の台本を渡しただけなのに、いきなり隆太くんが『今から公園に行ってきます!公園でマネージャーとネタ合わせしてきますから!いま、そういう気分なんです!』って言い出したんです。その真面目さというか、役者魂の凄まじさに心から胸打たれると同時に、この人、バカなんじゃないかな?って(笑)」

また上地についてはこのように振り返った。

「今回アクションが大変で本当に最後まで頑張ってくれました。語るべきエピソードは何もないですが…やっぱり彼もバカです(笑)。」

一転してちょっと真剣な顔で、品川がまとめる。

「いやでも、本当にふたりが真面目に役に向かっていく過程には感動させられました。ネタあわせを経て、漫才がみっちり仕上がっていく過程やその最終的な完成度についても、ほんとうに自分たち(品川庄司)の初舞台からは想像もつかないくらいのものだった。ほんとうに最高のキャストだなと想いました!」

最大級の賛辞に、役者ふたりは照れくさそうに頬笑みを浮かべる。凄くいい雰囲気が舞台から滲みでてくる。3人の信頼性やコンビネーションがよく伺えた瞬間だった。


ちなみに、本作のクライマックスでは主演の二人が満員の客席の前でガチの漫才を披露するとか。しかもお客さんにも「笑いたいところで笑ってください」とお願いし、まさに仕込みなしの真剣勝負に仕上がっているというのだ。

果たしてこの結果、どんな映像がスクリーンに刻まれているのか?

アクションからドラマから漫才まであらゆるところに本気印が宿った『漫才ギャング』の真価を心から期待したい。

『漫才ギャング』
配給:角川映画
(C)2011「漫才ギャング」製作委員会

公式サイト  http://www.manzaigang.jp/
2011年3月19日(土)全国ロードショー!

【ライター】牛津厚信

.

カテゴリー: 特 集 | 記者会見

2010年12月24日 by p-movie.com

『ロビン・フッド』ラッセル・クロウ&ケヴィン・ディランド来日記者会見

彼は闘いのカリスマ。その生き様は伝説。

映画史において30作品以上に渡って映像化されてきた“ロビン・フッド”の伝説を、『グラディエーター』のリドリー・スコット&ラッセル・クロウが装いも新たに復活させた。

『グラディエーター』級の大スペクタクルをメインディッシュに据えながらも、今回最も特徴的なのはそのストーリーだ。これまでのヒーロー伝説とは全く違うアプローチを取り、「なぜ、ロビンフッドは誕生したのか?」「どうして権力に立ち向かおうとしたのか?」といった根本的な部分を見事に再創造した作品に仕上がっている。

そんな本作の日本公開(12月10日)を前に、主演のラッセル・クロウと「LOST」でも知られる共演者ケヴィン・ディランドが来日し、記者会見を行った。ラッセルにとっては『ビューティフル・マインド』以来となる8年ぶり、2度目の来日となる。


以前、『ロビン・フッド』の海外インタビュー中に腹を立てて部屋を飛び出していったことのあるラッセル。等身大の彼もまた、映画のキャラと同じ野生味たっぷりの武勇伝に事欠かない。今回の記者会見も開始時間がだいぶ遅れ、司会者からは「質疑応答は20分ほどになります。フォトセッションは短めになるかもしれません」との事前アナウンスが行われていた。彼の性格上、ということなのだろう。

なにしろ相手は野生味あふれる戦士、グラディエーターなのだ。会見でいったい何が起こるか、どんな奇襲が仕掛けられるのか、我々には見当もつかない。私はゴクリ唾を呑みこみ、会場の記者たちも最低限の覚悟を決めた(多分)。

そして、現場が慌ただしくなる。ついに来た。あいつがやってきた。
ラッセル・クロウ、登場―

そこには予想だにしない笑顔があった。愛想笑いだろうか?いや戦士に偽りは似合わない。あれは満面の笑顔だった。ときに勇ましく顔を引き締め、スーツをパリッと着こなし、ふたりは常に紳士的に振る舞った。そこには野獣の姿は微塵も無かった。

質問が飛ぶ。「あの強靭な肉体を維持すべく、普段からトレーニングされてるんですか?」

ラッセル・クロウ
「今回の映画では6ヶ月間に渡って身体づくりを行ったよ。その主なものはアーチェリーの練習だったけれどね。でもね、映画の予定がないときには全くトレーニングしてないんだ。僕は映画ごとにアプローチを変える。そこでの必要性にあわせて肉体改造もしっかり行うといった感じかな。その過程ではたくさんの生傷に見舞われてきたよ。アキレス腱や脛、腰、肋骨の損傷。それに肩は二度も手術した。年齢を重ねるごとに身体に無理が効かなくなってるのが分かる。それでも素晴らしい作品に仕上げるためなら、多少の傷は仕方ないよ」

なるほど、文字通り肉体をすり減らして映画製作に臨んでいるわけなのか。そんな先輩俳優の姿を間近で目撃してきたデュランドさんは果たして何を感じた?映画の中では粗野なライバルにして最高の仲間となる彼が、物腰柔らかにこう応える。

ケヴィン・デュランド
「彼との共演は今回で3度目だけど、本当にいつも自分の兄貴のようにたくさんのことを学んでる。まず現場での彼は集中力が抜群に高いんだ。なおかつ、みんなで規模の大きなシーンに挑むときには周囲への気配りを忘れない。とても頼りになる存在さ」

また、今回の来日は叶わなかったが、巨匠リドリー・スコットはラッセルについて「長年連れ添った夫婦のような存在」と評しているという。この言葉についてラッセルはこう返した。

ラッセル・クロウ
「長年連れ添った夫婦?ははは、それの意味するところはきっと『完璧』ってことだと思うよ。何をするにしても互いにためらいがない、言葉少なめの『あ・うん』の呼吸で臨める。我々の関係はそんな感じじゃないかな。僕はというと、リドリーを画家のような存在だと思ってる。そして俳優である自分は彼に絵具を渡す役回りだ。彼が『もうちょっと青が欲しい』と言えば、その要求に全力で応えるというわけさ。ルネサンス期の画家に例えるならば、彼はティッチアーノかな。どの作品も非常に精神的、宗教的な主題を感じさせるからね。彼のような稀代のアーティストと仕事ができて本当に嬉しいし、心から感謝しているよ」

その後、日本人ゲストの神田うのさんを招いての束の間のコラボレーション。そして、ついに…ついに懸案のフォトセッションの時間がやってきた。「フォトセッションは短めになるかも」 序盤の注意事項を想いだし、筆者も僅かにみぞおちのあたりが痛くるのを感じたわけだが…

そんな我々が目にしたのは想像を遥かに絶する光景だった。

ラッセル・クロウはおもむろにテレビカメラ陣の方を向き、まさかの笑顔と、ピースサインを決めたのだ。会場にいた全員に衝撃が走った。まさかあのラッセルが!ある者は歓声を上げ、ある者は拍手を送った。会場は最後の一瞬において激しく発火した。もちろん幸福な意味において。

後に確認したラッセルのツイッターでのつぶやきが、また嬉しい。

“Tokyo is awesome.”

“Tokyo premiere tonight. Lighting the Roppongi Hills christmas tree with a sword apparently.Tokyo has been so kind and welcoming. ”

今回の来日によって個人的にラッセル・クロウへの印象が180度変わった。野獣説はマスコミが面白おかしく書きたてているだけだ。実際の彼はとても紳士的で心根の誠実な、最高の戦士だった。

公式HP>http://robinhood-movie.jp/
12月10日(金)、全国ロードショー
配給:東宝東和

【ライター】牛津厚信

.

カテゴリー: 特 集 | 記者会見

2010年11月30日 by p-movie.com