リボルバー

リュック・ベッソン製作、ガイ・リッチー監督・脚本、
更にジェイスン・ステイサム主演の
サスペンスアクション「リボルバー」。

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オススメ度:-
2008年/イギリス、フランス/カラー/115分

<INTRODUCTION&STORY>

カジノ王マカ(レイ・リオッタ)の罠にはめられ7年間の投獄生活を送ったギャンブラーのジェイク(ジェイスン・ステイサム)。
出所後、自分を騙したマカのカジノへ行き、ジェイクはカジノで一儲けしマカへの復讐を始める。ジェイクの更なる復讐を恐れたマカは、殺し屋にジェイクを消すよう指示する。だが、運良くジェイクの命を救ったのはザックとアヴィだった。
この二人組は何者なのか解からず、ジェイクは二人の護衛と引き換えに全財産を渡すことになる。

それからのジェイクは二人組と共に貸し金業を手伝わされる。だがここからが本番だ。誰が騙し、騙されているのかは判断しにくい。
闇組織で繰り広げられるトリックによって何が本当なのか最後の最後にようやく理解できるようになっている。
長い投獄生活でジェイクが学んだのはチェスと詐欺。この二つの方程式が組んだ時、本当の意味でのリボルバー(=回転する者)が始まる。

<REVIEW>

リュック・ベッソンにガイ・リッチーとくれば、考え付かない仕掛けが待っていて観客の心を最初から最後まで掴みっぱなしに違いないという期待が膨らむ。
しかもジェイスン・ステイサムの渋い顔つきと紳士なアクションの展開にも期待が膨らむ。
だが、今回は今までとは一味も二味も違うジェイスン・ステイサムの顔が観れるのもガイ・リッチーの深い脚本のおかげだとも言えるだろう。

<CREDIT>

■製作:リュック・ベッソン
■監督・脚本: ガイ・リッチー
■キャスト:ジェイソン・ステイサム、レイ・リオッタ、ヴィンセント・パストーレ
■配給: アステア、アスミック・エース

■公式ホームページ: -

[08/イギリス、フランス] 2008年6月7日よりシネマライズ他全国順次ロードショー
(C)2005 EUROPACORP – REVOLVER PICTURES LIMITED

【ライター】佐藤まゆみ

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カテゴリー: アクション | サスペンス | ヨーロッパ | 映画レビュー

2008年6月9日 by p-movie.com

ぐるりのこと

世界で絶賛された『ハッシュ!』から6年、橋口亮輔監督が080604_gururi.jpg
またもやとんでもない傑作を誕生させた。
主演は木村多江とリリー・フランキー。これは彼らの演じる夫婦が幾多の苦難を乗り越え、ともに再生への道をたどる10年間を綴った物語だ。

時代背景となるのは1990年代。美大出身の夫はTVニュース用に裁判をスケッチする”法廷画家”という仕事を譲り受け、妻は書籍編集者として働いている。お金がなくて先行きが不安でも、おなかの中で育つ新たな生命のことを考えると、言い知れぬ幸福感を噛み締めずにいられないふたり。しかし赤ん坊は生後まもなく天国へと旅立ち、彼らは茫然とした空虚の中に取り残されてしまう。

それでもいつもどおり飄々とふるまう夫。
喪失の痛みで追い詰められていく妻。

観客にとって心の痛む時間が続く。と同時に、夫の法廷画家という特殊な職業が、観客を90年代の深刻な社会の病巣にも真向かわせる。バブル崩壊、児童殺害事件、地下鉄テロ…時代の傷痕が次々と蘇る。人間はこんなにも精神的に脆い生き物で、ちょっとしたことをきっかけにとめどなく崩壊していく。その大波に飲み込まれるように、この夫婦にも深刻な瞬間が訪れる。しかし…

『ぐるりのこと』は決してこのままでは終わらない。

このあと堰を切ったようにとことん溢れ出す夫婦の感情が、この映画を奇跡的な次元にまで輝かせていくのだ。それは彼らがこの10年間で失ったものを取り戻していく過程でもある。あせらず、ゆっくりと。狂っていた時計の針は徐々に確かな鼓動を奏ではじめる。この夫婦の神々しいまでの再生に、何度も何度も嗚咽しそうになる自分がいた。

そして映画が終わったとき、観客はリリーさん演じる「佐藤カナオ」という男の本当の”強さ”を知るだろう。一見どこにでもいそうな、いつも飄々と取り留めのないこの男性が、みんなが右往左往してた時代にずっと穏やかな表情でいつも同じ場所に留まっていられた事実---

伸し上がっていくことだけが成長ではない。僕らは日々「いつも変わらずそこにあるもの」に救われながら生きている。きっとカナオのような人がひとりでも多く広がれば、この日本ももう少し”確かな優しさ”で満ちていく。そう強く感じさせる映画だった。

http://www.gururinokoto.jp/
6月7日、シネマライズ/シネスイッチ銀座ほか全国ロードショー
(C) 2008『ぐるりのこと。』プロデューサーズ

【映画ライター】牛津厚信

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カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2008年6月4日 by p-movie.com

幸せになるための27のドレス

大人気ドラマ「グレイズ・アナトミー」で一躍有名となった
080528_27dress.jpgキャサリン・ハイグル主演のラブコメディ。
 ドラマを観ていなくても、充分にキャサリン・ハイグルが面白くて可愛い女性だということが認識できてしまうほど
現在の女性たちに好かれるキャラに好感が持てるに違いない。

アウトドアグッズ会社の社長秘書をしているジェーン(キャサリン・ハイグル)は、常に誰かの為に尽くしてしまう性格のようだ。

いつでも仕事以外の時間は友人の結婚式を成功させるために翻弄している。日本では花嫁付き添い人(ブライドメイド)というカタチは
無いのだが、アメリカでは常識らしい。ジェーンは結婚を控えた友人の希望をくまなく聞き入れ何もかも手配し、結婚式当日にはブライドメイドとして花嫁の幸せな笑顔を見て、微笑むのだ。
これがジェーンの素晴らしいところでもあり、自分よりも友人たちの為に生きてしまう毎日。
おかげで、彼女のクローゼットには今までブライドメイドとして頑張った結果の27着のドレスが飾られている。

――――いつかは、私も主役に…と思うジェーンだが長い間、片思いをしている。片思いから一歩踏み出せずにいるジェーン。
そんな時に、モデル業をしているジェーンの妹・テス(マリン・アッカーマン)が押しかけてくる。
ワガママで自己中心的な妹・テスによってジェーンは更に問題が多発し、改めて自分自身の幸せを考えさせられることになるのだ…。

キャサリン・ハイグル演じるジェーンは、誰にでも親切で頼まれたら何でもやってしまうような女性だ。自分のことは、とりあえず後回し。
ただ、友人らが彼女を頼りすぎてしまうのも、彼女の完璧なまでの腕を知っているからだろう。

27回のブライドメイドの経験以上に彼女は他人の幸せこそが生き甲斐のような日々を送っている。
でも自身の恋愛には臆病で一歩踏み出す勇気さえない。ほんの少しの一歩で何かが変わるときってあると思う。
片思いを長く続けているなら、思い切って伝えてしまえ!と思うのが私の個人的な意見。
そしてジェーンの勇気を信じて、それをバネにして女性たちは自分の幸せを掴みたくなるに違いない。
恋愛、仕事、何でも構わない。今の自分が新たなる一歩を踏み出す勇気をくれる本作はキャサリン・ハイグルだからこそ共感できるのである。

更に普通の女性が27回という驚異的なブライドメイド経験を取材したがる新聞記者ケビン(ジェームズ・マーズデン)との価値観のズレまくった議論も見逃せない。
男性ならでの視点が女性には意外と刺激的に聞こえるはず。
ちなみにジェームズ・マーズデンは、ディズニー映画「魔法にかけられて」の奇妙&微妙なオトボケ王子役で大ウケされたことも記憶に新しい。

http://movies.foxjapan.com/27dress/
5月31日より日比谷みゆき座他全国ロードショー
(c)2008 TWENTIETH CENTURY FOX AND SPYGLASS ENTERTAINMENT FUNDING, LLC

【映画ライター】佐藤まゆみ

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2008年5月28日 by p-movie.com

告発のとき

ミリオンダラー・ベイビー(2004)」、「クラッシュ(2004)」と、
080528_kokuhatu.jpgアカデミー賞受賞したポール・ハギス監
 督・脚本の新作。
現在のアメリカの混沌とした日常を描いた「クラッシュ」に続き、イラク戦争から帰還した兵士の物語を題材に描いている。
米プレイボーイ誌の記事に書かれた実話であることから誰もが関わりを懸念する題材には間違いない。

原題は<エラの谷>、旧約聖書に出てくる言葉である。
2004年11月、ハンク・ディアフィールド(トミー・リー・ジョーンズ)の元に息子マイクがイラクから帰還したがその後、姿を消したと告げられる。
軍人一家で育った息子に限って無許可離隊などあり得ないと思ったが、ハンクは妻ジョアン(スーザン・サランドン)を家に残し息子を探すために帰還したはずのフォート・ラッド基地へ向かう。
地元警察のエミリー(シャーリーズ・セロン)にも捜索をお願いし協力してもらったが、残念なことにマイクは焼死体で発見される…。

マイクと一緒にイラクから帰還した兵と話を続けていくハンクだったが、マイクの行動を何一つ知る者はいなかった。
そんな時に息子マイクが持っていた携帯電話の壊れかけた画像データをハンクは目にすることになる。
マイクがどうイラクで戦っていたのか、そして一緒にいた仲間たちとの会話など知ることになる。
イラク戦争でアメリカ兵は4000人以上の戦死者を出す中で、奇跡的に帰還できた兵士も多い。
現実には”帰還できたから良かった”では終わっていないのである。イラクでの経験をしてしまった若い兵士達は帰国してからも悪夢は続く。

本作では実際にあった事件を扱っているだけでなく、たくさんの帰還兵の心の闇と苦しみさえもリアルに描かれている。
これでも、まだ戦争を続けますか? 戦死しても、生き残って帰国できても、彼らに与えられたのは暗闇の傷ついた心なのである。

日本人は平和に浸りすぎているから身近には感じることは出来ないかもしれない。
でも、日本人はちゃんと知っている―――戦争によって及ぼす人間の痛みや苦しみを。そして二度と繰り返さない時代を作って行く事が使命だと。

http://www.kokuhatsu.jp/
6月28日より有楽座他TOHO系にて全国ロードショー
(C)2006 Elah Finance V.O.F.

【映画ライター】佐藤まゆみ

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2008年5月28日 by p-movie.com

軍鶏 Shamo

日本の人気コミック「軍鶏(原作:橋本以蔵)」を映画化。
080411_shamo.jpg監督はバイオレンスと人間の真髄まで描ききった「ドッグ・バイト・ドッグ」のソイ・チェン監督。
普通の家庭で育った名門私立高校へ通う16歳の少年が両親をナイフで惨殺する事件が起きる。
少年は成嶋亮(ショーン・ユー)。そのまま高等少年院へ送られる。
本来、気弱で貧弱な彼を待っていたのは、少年院の世界でのイジメ。
“親殺し”というかつて例を見ないほどの事件の犯人とされた彼への風当たりは少年院の院長からも蔑まれていた。
そんな時、空手の授業で指導を勤める黒川(フランシス・ン)と出会い、本気で空手を学ぶのである。
誰にも踏付けにされたくないという一心だけで…。

日本のコミックが香港と日本の実力派俳優らと創り上げた世界はまさにバイオレンスとアクション中心。
だが、それ以上に主人公演じるショーン・ユーの心理を理解されたくはない拒絶感に圧倒される。
舞台はコミックを忠実に描いたらしく、日本であるのに、16歳の少年の行き先が高等少年院という設定以上のモノは何一つ描かれない。
もちろん両親を殺害した少年の本当の心の中は、わざとえぐらない展開にしている。
本当の目的は、少年が両親を殺害したという事実より、その少年の出所後の生き方を空手という世界で<生き抜く術を
学ぶストーリーに仕上がっている。ただ、常に相手に牙を剥き、全力で相手を殺しかねないほどまでの闘いは彼にとって
本当の痛みを受けると同時に自虐とも感じてしまう。
自分を変える力は痛みと平行して強さも備わって来るハズだと信じるラストに彼の生き様に
明るい未来を感じぜずにはいられない。

http://www.shamo-movie.jp/
5月3日より新宿トーア、シアター・イメージフォーラム他全国ロードショー
(C)2007 IZO HASHIMOTO / ART PORT INC. / PONY CANYON INC. All rights reserved

【映画ライター】佐藤まゆみ

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カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2008年4月11日 by p-movie.com