キリストの聖杯伝説にまつわる謎を描き、
世界中で大ヒットした「ダ・ヴィンチ・コード」から3年。
トム・ハンクス演じるラングドン教授が、
再びキリスト教の総本山ヴァチカンを揺るがす危機に挑むサスペンスミステリー。
キリストの秘密を解き明かしたロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)のもとに、
ヴァチカンから使者が訪れる。
キリスト教と対立してきた太古の秘密結社”イルミナティ”から、
復讐を予告するメッセージが送られてきたという。
ちょうどこの日、ヴァチカンでは教皇選出の選挙”コンクラーベ”が開催されていた。
全世界が注目する中、イルミナティは教皇候補者4名を誘拐、1時間毎の殺害を予告。
さらに、核兵器以上の威力を持つ”反物質”をヴァチカンのどこかに隠し、
深夜12時に爆発させるという。
ラングドンは、反物質を開発した女性科学者ヴィットリア(アイェレット・ゾラー)、
司祭カメルレンゴ(ユアン・マクレガー)の協力のもと、
4人を救い出し、爆発を阻止できるのか…!?
小説を映画化するとき、どこを残してどこを省略するかということが大きな問題になる。
本作の原作も、手に汗握るサスペンスでありながら、
宗教と科学の対立という奥深いテーマを内包した見事な作品である。
一歩間違えるとその持ち味を失い、遠くかけ離れたものが出来上がってしまう。
そこで本作は、原作にあるいくつもの見どころの中から、
教皇候補者誘拐の謎解きを中心に映画化。
映画オリジナルの人物も登場し、スリリングなノンストップサスペンスに仕上がった。
その効果が如実に現れているのが序盤。
原作ではラングドンは反物質を開発したセルン(欧州原子核研究機構)を経由して
ヴァチカンへ赴く展開になっているが、このくだりが結構な分量。
映画ではこのエピソードを省略。
早々にヴァチカンに移動することで、展開をスピーディーにし、
見るものを一気に引き込んでしまう。
また、描かれる物語はほんの数時間の出来事だが、小説の進み方は読む人まかせ。
それに対して、時間経過がリアルタイムに近く、
よりスリリングな感覚が味わえるのも映画ならでは。
主人公のラングドン教授も、原作からややアレンジ。
小説では007顔負けの激しいアクションを見せるが、ちょっとやりすぎの印象。
映画ではこれを整理。アクションは他の人物に譲り、知的な面を強調することで、
より学者らしくなっている。
前作「ダ・ヴィンチ・コード」はかなり原作に忠実な映画でありながら、
詰め込みすぎの感があった。
本作はその反省を踏まえ、映画用に思い切った再構成を行うことで、
よりエンターテイメントとしての面白さに磨きをかけた作品といえる。
そして最後に一つ。
製作上の都合と思われるが、原作で描かれている犯人に関する重要な秘密が、
映画では省略されている。
その内容を知りたい方は、ぜひ小説を読むことをオススメしたい。
より深くこの作品を楽しめるはずだ。
映画「天使と悪魔」
オフィシャルサイト:http://angel-demon.jp/
ガリレオの暗号が、ヴァチカンを追いつめる
2009年5月15日(金)全世界同時公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
【映画ライター】イノウエケンイチ