グリーンフィンガーズ

ガーデニング・ムービー ★★★★☆
[00/英] 1h31 4月7日よりシャンテ・シネにてロードショー

監督:ジョエル・ハーシュマン
脚本:ジョエル・ハーシュマン
出演:クライヴ・オーウェン デビッド・ケリー ヘレン・ミレン
配給:ギャガ・コミュニケーションズ
宣伝:LIBERO

『グリーンフィンガーズ』とは「天才庭師」という意味。手を変え品を変え登場する英映画だが、今回はガーデニング・ムービーの登場です。出演は「ベント/墜ちた饗宴」のクライヴ・オーウェン、「ウェイクアップ!・ネッド」のデビッド・ケリー、「スナッチ」のアダム・フォガーティ、「ザ・ビーチ」のパターソン・ジョセフ、「鬼教師ミセス・ティングル」のヘレン・ミレン。監督・脚本は、これが長編デビューのジョエル・ハーシュマン。

高い塀も監視カメラもなく、好きな時に紅茶も飲める開放的で保安体勢のゆるい更生刑務所に孤独な男のコリンが移送されてきた。ひょんなことで喧嘩になったコリンと囚人のロウ、トニー、ジミーと同室の老人ファーガスの5人は奉仕活動として所内の一角に庭園を造るように所長に命じられた。初めはやる気のないメンバーだったが、本で知識を得て土まみれになって働くうちに美しく色鮮やかな庭園を完成させる。この庭園は専門家にも認められた。専門家の計らいで彼らは由緒ある旧館の荒れ放題の庭の手入れをし、ガーデニングに夢中になっていく。コリンは生きる意味を見い出し、専門家の娘と恋が芽生えるようにまでなっていく。専門家はコリンのグリーン・フィンガーズに感嘆して、王立園芸協会のフラワーショウに出場する事を提案。だが、事件が勃発して出場はキャンセル。コリンは心残りのまま釈放た。だが、前科者を庭師と認められるほど世間は優しくなく花屋の配達係にしかなれなかった。ある日、刑務所にいる庭師から来年のフラワーショウ参加が決まった事とファーガスの命が危ない事を告げられると、コリンは愛と自由を捨てて花泥棒をやらかして刑務所に戻って行く。だが、またもや事件が勃発、果たして彼らは庭園を仕上げて賞に間に合わせる事が出来るのだろうか?

殺人罪の服役者を含めた犯罪者がガーデニングに目覚めて王国園芸協会が主催するフラワー賞でグランプリを目指す。いかにも英らしいおとぎ話のようだが、これが実話がベース。既にこの刑務所は2度も金賞を獲得しているとか。有機野菜の栽培は重要な資金源となっていて、ブリティッシュ・エアウェイ・コンコルドの機内食にも提供しているとか。コリンじゃないけどこんな刑務所なら入りたい人も多いかもね。

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2001年4月9日 by p-movie.com

小さな目撃者

ウルトラカウンター・アタックムービー ★★★★☆
[99/和蘭・米] 1h38 3月10日より3月30日まで 丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー

監督・脚本:ディック・マース
出演:フランチェスカ・ブラウン ウィリアム・ハート ジェニファー・ティリー
配給・宣伝:コムストック

口のきけない10歳の少女が家族旅行のアムステルダムで殺人事件を目撃。しつこい殺人犯に追われる少女との手に汗握るサスペンス作品。少女に新人のフランチェスカ・ブラウン、両親に「スモーク」のウイリアム・ハートと「バウンド」のジェニファー・ティリー。監督はオランダが誇る鬼才「アムステルダム無情」のデイック・マース。

アメリカの製薬会社に勤めるウォルターは妻のキャスリンと10歳のメリッサを連れて商談と観光を兼ねてアムステルダムを訪れた。ホテルにチェック・インするが、口の聞けないメリッサは両親と離れたすきに迷子になりホテルの裏道で偶然にも殺人事件を目撃してしまう。犯人に追われたメリッサは、運河のボートで寝泊りする男やパトカーを運転して逃げ切り警察に保護され両親と再会してホテルに戻るが、なんとウォルターの商談相手が殺し屋の依頼人だった。それを知った商談相手は、メリッサの両親と食事中に殺し屋をメリッサの寝ている部屋に向かわせる。

作品のほとんどが殺し屋に追われる少女とのチェイスシーンなのだが、これが見せ場が多くて飽きさせない。ちょっと殺し屋が間抜けなところや伏線の上手い張り巡らせ方で笑えるシーンも多いし、ラストもあっけなく終わりかと思いきや凄まじいカーチィスがあり、なんとビックリすることにウイリアム・ハートが走る救急車の上に飛び乗りバトルチェイスまで繰り広げて(もちろんスタントだけど)路面電車が脱線するというシーンには「そこ迄しなくても」と驚いてしまった。ハートとティリーが夫婦に見えないという点を除けば、これ拾いものです。見終わった後に盛り上がれるので、デートにもお勧め。

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2001年3月12日 by p-movie.com

ツバル

不思議な夢の国へようこそ ★★★★★
[99/独] 1h32 2月17日よりイメージフォーラムにて公開

監督:ファイト・ヘルマー
製作:ファイト・ヘルマー
脚本:ミヒャエラ・ベック ファイト・ヘルマー
出演:ドニー・ラヴァン チュルパン・ハマートヴァ フィリップ・クレー
   E.J.カラハン
配給:アルシネテラン
宣伝:アルシネテラン

ツバルとは南太平洋の南北に並ぶ9環礁からなる諸島で、大きさは八丈島の約3分の1。でも、そんな事はこの際関係ない。知って欲しいのは、この作品が字幕が全くなく、モノクロで撮影したフィルムに後からカラーで色付けした不思議ファンタジーであるという事。世界中の人が理解できる言語にするために、おおげさなジェスチャーを交えた英語や仏語など幾つかの言語を組み合わせて大人が楽しめる娯楽作品になっている。

出演は、「ポンヌフの恋人」ほかレオス・カラックスの常連のドニー・ラヴァンと「ルナ・パパ」のチュルパン・ハマートヴァ。ほか「葡萄酒色の人生 ロートレック」のフィリップ・クレー、「コンゴ」のE.Jカラハン。そして監督は彗星のごとく登場したファイト・ヘルマーで、これが初長編作品で世界中の映画祭にて数々の賞を獲っている。

舞台は荒果てた古い室内プール。プールのオーナーで盲目の父親の手伝いをしている息子のアントンは受付のマルタと一緒に父親にプールが繁盛していると信じ込ませて暮らしていた。ある日プールに若い娘のエヴァが来る。若い女性を見たことのなかったアントンはすぐに彼女に惚れてしまった。一方、アントンの兄グレーゴルは土地の再開発プロジェクトを企ててプールの取り壊しを考えていた。父親に断られたグレゴールは天上から石を投げ込んだ。石はエヴァの父親に命中して帰らぬ人に。事故現場の検証の結果、プールの管理状態が次の検査迄に改善されない限り営業停止になってしまう。アントンは寝床がなく訪ねてくるホームレスと作戦を練り始める。エヴァは父親の残した船で航海の旅に出ることにするが、船はピストンがないと動かない。島にはピストンの予備がなく、唯一あるのはプールの温水を出すための機械に付いてるものだけ。エヴァはピストンを盗みにプールへ行く。プールでは検査が行われていて、そこでエヴァは再び石を落とそうとしているグレゴールを発見する。

普段は字幕に目をとられて見落としがちな映像に集中出来て、この摩訶不思議な映像やコミカルな演技を思う存分楽しめた。奇妙な登場人物たちや受付女性のボタン収集やプールを支える巨大なボイラーと監督の演出も面白い。そして忘れちゃいけないのが、チュルパンがプールに全裸で入り、金魚と戯れる美しい映像。「ルナ・パパ」を見て、彼女のことがになった人は見逃せないぞ。

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2001年2月26日 by p-movie.com

リトル・ダンサー

目指すはロイヤル・バレエ団 ★★★★☆
[00/英] 1h51 1月27日よりシネスイッチ銀座ほかロードショー

監督:スティーヴン・ダルドリー
脚本:リー・ホール
出演:ジェイミー・ベル ゲアリー・ルイス ジュリー・ウォルターズ アダム・クーパー
配給:日本ヘラルド映画
宣伝:日本ヘラルド映画

昨年のカンヌ国際映画祭監督週間のクロージングや東京国際映画祭特別招待作品で上映され、観客を感動の渦に巻き込んだイギリス史上空前の大ヒット映画がやって来る。11歳の少年がダンスに目覚めバレエダンサーを目指す心温まる作品。監督は演劇界の顔として英国ではよく知られているスティーブン・ダルドリー。主人公ビリー役には2000人を超えるオーディションからジェイミー・ベル、「マイ・ネーム・イズ・ジョー」のゲアリー・ルイス、「ステッピング・アウト」のジュリー・ウォルターズ、そして熊川哲也と同級生で英国を代表する世界的トップ・ダンサーの一人アダム・クーパーが特別出演している。

1984年ストライキに揺れるイングランド北部の炭鉱町。ぼくビリーは11歳、パパと兄さんは炭鉱労働者だが今はストライキ中で生活は苦しい。ママは去年の暮れに死んじゃって、物忘れがひどくなったお婆ちゃんの面倒は僕が見ている。僕はおじいちゃんが使っていたグローブでボクシングジムに通っていたのだが、そこにウィルキンソン婦人のバレエ教室が引越して来た。婦人に鍵を渡すようにコーチに言われたが、まごついているうちに僕は見よう見真似で踊り出すと婦人は僕にバレエ・シューズを貸してくれた。踊ることでこれまでにない開放感を覚えた僕はパパに内緒でバレエを習い始めた。だが狭い街、バレエをしているのはすぐにパパにバレてしまい、バレエ教室は禁じられてしまった。僕はこの不満をステップにぶつけた。そしてなんとウィルキンソンさんが、僕にニューカスルで行われるロンドンで有名なロイヤル・バレエ学校のオーディションを受けろと無料で個人レッスンをしてくれる。でもオーディション当日に炭鉱労働者と警官隊が衝突して兄さんが逮捕されれてしまった。クリスマスが来てもストは続き、生活はますます苦しくなっていた。そしてまたもやパパに踊っているのを見つかった。でも僕の踊りを見たパパは才能を認めてくれてオーディションを受けさせてくれるという。でもそれは仲間たちを裏切るスト破り行為だった。

「フル・モンティ」「ブラス」「マイ・ネーム・イズ・ジョー」と貧しいながらも頑張る人たちの生き様を描いた作品。
主役がダンサーを夢見る少年ということもあり、共感できるシーンも多くて、特に頑固親父がビリーの才能を認めてスト破りをして人生で初めて屈辱を味わうシーンなどジーンとくるシーンも多く、完成度も高い。最後のエピローグはサービスだけど女性には嬉しいシーンでしょう。

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2001年1月26日 by p-movie.com

ただいま

いつもあなたのことを思ってました。 ★★★☆☆
[99/中・伊] 1h29 12月30日よりテアトル池袋にて正月感涙公開中

監督:チャン・ユアン
製作:チャン・ユアン
脚本:ユー・ヒュア ニン・ダイ ジュウ・ウェン
出演:リウ・リン リー・ビンビン リー・イェッピン リアン・ソン
配給:K2エンタテイメント
宣伝:K2エンタテイメント

「クレイジー・イングリッシュ」のチャン・ユアン監督が、家族愛をテーマに描いたヒューマン・ドラマ。「あの子を探して」とともに、99年のヴェネチア国際映画祭で銀獅子賞(最優秀監督賞)受賞と中国映画のワン・ツー・フィニッシュを飾っている。出演は日本での登場がこれが初だが中国では映画出演が続いているリウ・リンに「赤い薔薇 白い薔薇」のリー・ビンビン。ほかは現実感を出そうと全て映画初出演者で固めている。脚本のひとりニン・ダイは監督の奥様。

16 歳のときに些細な事で血の繋がらない姉を殺してしまったタウ・ランは、17年の禁固刑に服していた。模範囚として特別に仮釈放を許されたタウ・ランであったが、彼女は気が重かった。家族へ手紙を出しても返事が来なかったからである。案の定、家族の迎えがなかったタウ・ランは駅で途方に暮れていると、出身地が同じだった私立刑務所主任のシャオジェと会う。彼女はタウ・ランを故郷まで送り届けることにするが、だがタウ・ランが少女時代に住んでいた家は無くなっていた。タウ・ランは家族との再会を果たして両親と和解することが出来るのだろうか。

今まで社会派の問題作や過激なドキュメンタリー作品などで国内上映禁止処分を受けたりと何かと話題だったチャン・ユアン監督とは思えない、ほのぼのとした作品。だが、残念なのがタウ・ランが服役していたシーンが、ほんのちょっとしかなかった事、この辺が中国映画と韓国映画の違うところだろうか。もう少し服役シーンでの説明があれば、タウ・ランへの感情移入がもっと早くできたと思うのだけど。資料を読んでみるとこの作品が、中国刑務所内部にカメラが入ることを政府に許された最初だという事でこれがまだ限界だったのだろうか。
でも今回の正月映画の中では、しみじみと感涙できる作品です。

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2001年1月8日 by p-movie.com