こころの湯(SHOWER:洗澡)

中国銭湯人情映画 ★★★★☆
[99/中国] 1h32 7月7日よりシャンテシネにてロードショー

製作:ピーター・ローアー
監督:チャン・ヤン
出演:チュウ・シュイ プー・ツンシン ジャン・ウー
配給:東京テアトル/ポニーキャニオン
宣伝:メディアボックス

「スパイシー・ラブ・スープ」でデビューしたチャン・ヤン監督の2作目は日本でも馴染み深い銭湯を舞台にしたヒューマンドラマ。出演はNHKドラマ「大地の子」日本人孤児の養父役で知られるチュウ・シュイ、「青い凧」「スパイシー・ラブ・スープ」のプー・ツンシン、独占インタビューをさせてもらったジャン・ウー。

北京の下町で銭湯「清水池」を営むリュウと知的障害のある息子アミン。今日も銭湯は常連客で賑わっている。ある日、ビジネスマンの長男ターミンが突然帰郷した。アミンから届いた葉書に父が横たわる絵を見て戻ってきたのだった。元気な父の姿を見たターミンは2、3日ゆっくりすることに。だがこの間に、アミンが行方不明・台風による天窓補強・常連客のトラブルと大忙し。そしてターミンは心から楽しそうなお客さん達の顔を見て初めて父の仕事を知った。だが地域の再開発が決まり、この銭湯が取り壊されてしまう事が決定してしまう。ターミンは帰るのを先延ばしにするのだが・・・・。

大ヒットロングラン中の「山の郵便配達」同様に親子の絆を描いたタイトル通り心温まるストーリー。オープニングの近代的なシャワー室から、年に一度しか雨が降らない地方の村と、人間とは切っても切れない風呂事情満載。特に舞台となった70年代の風呂屋は、理髪室から真空壺マッサージまで完備されていて、日本とは全く違う。親子3人の演技は素晴らしいし、サブキャラの常連客もいい味を出している。日本でも山田洋次監督でリメイクしたら活けそうだけど。製作がアメリカのプロデューサーで、まず海外の映画祭で話題になって、中国でもヒットしたと言うのも面白い。弟役ジャン・ウーの独占インタビューも、ぜひ読んでください。

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年7月9日 by p-movie.com

ドリフト

ツイ・ハーク復活? ★★★★☆
[00/香港] 1h52 6月2日よりスバル座ほかにてロードショー

製作:ツイ・ハーク
監督:ツイ・ハーク
脚本:コアン・ホイ
出演:ニコラス・ツェー ウー・バイ アンソニー・ウォン キャンディ・ロー キャシー・チュイ
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント
宣伝:メディアボックス

香港のスピルバーグと呼ばれ、監督よりもプロデューサーとしての方が有名なツイ・ハーク。ハリウッド進出して「ダブルチーム」「ノック・オフ」とバン・ダム主演の作品を撮ってから何をしているのかと思ったら。香港に戻って作品を撮りまくっていた。出演は「ジェネックス・コップ」のニコラス・ツェー、台湾のロック・アーチストで映画出演3本目のウー・バイ、「OVER SUMMER」の公開が夏に控えるアンソニー・ウォンことフランシス・ン。ツイ・ハークの次回作はチャン・ツィイー出演の「蜀山奇傳/天空の剣」の続編。現在はハリウッドでジェッド・リーが出演した「ブラック・マスク」の続編を別の役者で撮影中。

タイラーはバーで働く21歳の青年。ある日、ナンパした女性が麻薬潜入捜査の刑事だとビックリするが彼女が妊娠したことにもっと驚く。責任を感じた彼はボディーガード組織の一員となって命を張って大金を稼ごうとする。警備の最中にタイラーはジャックという男と出会うが、彼はブラジルの密林で傭兵をしていた経験があった。足を洗っていたジャックだったが彼が属していた組織に付きまとわれて、愛し合っている彼女の父親で香港金融市場の大物を暗殺しろと命じられる。2組の会談が行なわれタイラーのボディガードが雇われるが、ジャックは逆に命令されたボスを暗殺した。ジャックは組織のヒットマンに命を狙われる。タイラーは犯人がジャックだと気づき、彼に会いに行った為に、壮絶なヒットマン同士の銃撃戦に巻き込まれる。

香港はいまだにあるようなないような台本で、その場になってカメラアングルを決めて撮影されていく。この作品もそうなのだが、こちらはストーリーよりもアクション重視。なんでそうなの?という展開でお馴染みになったワイヤー・アクションや銃撃戦に爆破シーンとテンコ盛り。特に香港特有の入り組んだアパートを使った銃撃戦は凄すぎ。このシーンは台本書くよりも撮影したほうが早そうだもんな、台詞はほとんどないし。ウー・バイの出演作は初めて見たが、彼のアクションならいくらでも見たくなる気分。それにしても白い鳩を飛ばしたからって、「これが、ジョン・ウーの挑戦状だ!」のキャッチ・コピーは止めてくれ。

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年6月4日 by p-movie.com

テヘラン 悪ガキ日記

世界のこども映画祭でグランプリ獲得 ★★★★☆
[98/イラン] 1h30 4月14日よりキネカ大森にてロードショー

監督・脚本:カマル・タブリーズィ
出演:ファテメー・モタメド=アリア ホセイン・ソレイマニー ゴルシード・エグバリ
配給:パンドラ
宣伝:パンドラ

世界のこども映画祭でグランプリ獲得している、これまでに評判になった子供が主役の作品とは一味違ったイラン映画。監督は96年に福岡アジアフォーカス映画祭で「夢がほんとに」が上映されてるカマル・タブリーズィ。出演はイラン映画界のトップスターで同じく福岡の映画祭で「これを最後に」が上映されたファテメー・モタメド=アリア、主人公の少年役のホセイン・ソレイマニーは実際に少年院に居たところを監督の目に止まり3ヶ月分の保釈金を払って出演した。その後、奨学金が貰えるほどの優秀な学生をしているとか。

少年院に居るメヘディは、いまだに母親の死を受け入れられず新聞の切抜きの女性を母親だと思って日々を送っていた。ある日、少年院に新しいソーシャルワーカーの先生がやって来る。メヘディは彼女を母ちゃんにする事に決めて少年院を脱走。どうにか家族にして貰おうと先生の家にやって来た。戸惑う先生だが情にほされて一晩だけ泊める事に、先生の娘とも早くも兄妹のように仲良くなってしまった。次の日に、先生は彼を少年院に帰そうとするがメヘディは逃げてしまい、タバコや新聞を売りながらお金を稼いでは先生の家の前で待つという日々が続く。実は先生の夫はメヘディのような浮浪者に殺されていたのだった。ある日、先生の娘から母の日のプレゼントを渡す事を聞いたメヘディは、寄り道をして二人でプレゼントを買いに行く事にする。そうとは知らない先生は娘が帰ってこずに泣きながら探していた。そこへ仲良く手をつないで帰って来る二人。その夜、先生はメヘディを家に招きいれて彼が寝込んでいる隙に補導員を呼んでしまう。「アニキが連れてかれちゃうよ!」と泣きながら叫ぶ娘と補導員に連れてかれるメヘディに先生は背を向けるのだが・・・・・。

今までの子供が主役のイラン映画は、いかにも素人の子供を使ってますよというような、セリフも少なくドキュメンタリータッチのものだったが、この作品の少年は、プロの子役のようにちゃんと演技してるし、セリフも喋るは喋るはで凄く上手い。少年院にいただけあり、口の悪さ(この字幕の付け方はなかなか笑える)や態度のでかさなど貫禄ありで、充分普通の映画として成立しています。「運動靴と赤い金魚」以来のイラン映画久々のお勧め作品です。

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年4月16日 by p-movie.com

花様年華

メチャレトロな恋愛劇 ★★★★☆
[00/香港] 1h38 3月31日Bukamuraル・シネマ&銀座テアトルシネマにて公開

監督:ウォン・カーウァイ
製作:ウォン・カーウァイ
脚本:ウォン・カーウァイ
撮影:クリストファー・ドイル リー・ピンピン
出演:トニー・レオン マギー・チェン
配給:松 竹
宣伝:メディア・スーツ/スローラーナー

2000 年のカンヌ映画祭に国際的な俳優達がキャストされた「2046」が間に合わなかったウォン・カーウァイが急遽撮影を切り上げて出品した作品。といっても「欲望の翼」までの中途半端まではない。トニー・レオンはこの出品により最優秀男優賞を獲得、まさにタナボタだった。共演は「ラヴソング」「ひとめ惚れ」のマギー・チェン。

1962年の香港、新聞社に勤める編集長チョウと商社で秘書と働くリーゼンは偶然にも同じアパートの隣室へ同じに日に引っ越してきた。と思いきや実はこれはチョウによって慎重に仕組まれたものだった。最初は甘く復讐心に満ちていたはずの小さな秘密は次第に引き返せなくなってしまう。それはなんとも皮肉な運命だった。

毎回、色調を大切にするカーウァイの選んだ色は赤。主人公2人の匂いたつような情感をレトロな恋愛劇のみに徹底して出きるだけセリフを排除した演出になっている。今回の作品はカーウァイの新たな方向性を示したものと言われているが、これはコンビを組んでいるカメラのドイルの映像にも見える。あのスタイリッシュと言われていた動きの強い映像を得意としているドイルに、こんな映像が撮れるとは驚きでした。

ぜひ、ご自分の眼で確かめて下さい。今回はこの映像に☆1つプラスです。そうそう劇中のトニー・レオンが泊まっていたホテルの部屋が「2046」号室でした。ウォン・カーウァイもたまにはお茶目なことをしますね。

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年4月2日 by p-movie.com

ユリョン

韓国潜水艦映画 ★★★☆☆
[99/韓国] 1h43 3月3日よりシネ・リーブル池袋にてロードショー

監督:ミン・ビョンチョン
脚本:ミン・ビョンチョン ポン・ジュノ チャン・ジュンファン ク・ソンジュ
出演:チェ・ミンス チョン・ウソン ソル・ギョング ユン・ジュサン
配給:日活
宣伝:スキップ

昨年の東京ファンタで上映され、2000年の大鐘賞(韓国アカデミー賞) で6部門を受賞した韓国製潜水艦映画ユリョンとは幽霊のことで、旧ソ連から借款の代わりに引き受けた原子力潜水艦の名称。乗組員は艦長に「シュリ」のユン・ジュサン、副艦長に「リベラ・メ」が公開予定のチェ・ミンス、ミサイル責任者の431に「モーテルカクタス」のチョン・ウソン、「ペパーミント・キャンディー」主役のソル・ギョング。監督はこれが長編デビューのミン・ビョンチョン。

訓練と実践の区別がつかなくなった艦長を射殺して軍事裁判で死刑を宣告されたイ・チャンソクは、南海の核兵器基地にある原子力潜水艦ユリョンに搭乗を命じられた。ユリョンの存在は勿論、乗組員に関しても全て1級機密。チャンソクも記録で死んだことにされ431の番号で呼ばれた。作戦内容を知るのは艦長のみで、ミサイル班に配属された431に艦長は核ミサイル発射の鍵を密かに渡した。艦内で時限爆弾が発見された。艦長に不信感を抱いた副艦長はクーデターを起こし、艦長を暗殺して部下全員を味方につけて日本への攻撃計画を明らかにする。そして唯一犯行する431を拘束して鍵を奪うと、日本の主要各都市に核ミサイルの照準を次々と仕掛けていく。しかし、異変に気づいた日本も潜水艦で攻撃してきた。

「シュリ」の大成功で自信を強めた韓国映画界は金融関係会社や韓国政府も映画界に積極的に支援し、1本あたりの制作費が跳ね上がった。そんな中で企画されたのがこの作品。韓国の 99年映画観客動員数でも、第8位に飛び込んだ。韓国は日本にずっと踏みにじられてきたからという祖国愛から日本を攻撃しようとする副艦長と、人間的で心優しいのに、又もや上官に恵まれなかった431との孤立無縁の中でのクライマックスとなる全面対決。それにかぶさる音楽もなかなか。「U-571」のように実物大は作れなかったようだが映像技術もよく出来ている。でも敵が日本というのにはねー。潜水艦映画にハズレはなしというが、この時期の公開もどうかな?

.

カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2001年3月5日 by p-movie.com