ダウト

 誰も見破れない ★★★
[原題] Slow Burn
[05/米] 1h33 3月3日 新宿K’s cinemaほかにて全国順次ロードショー!
[監督] ウェイン・ビーチ
[製作] フィッシャー・スティーブンス、シドニー・キンメル、ボニー・ティマーマン、レイ・リオッタ
[脚本] ウェイン・ビーチ
[撮影] ウォリィ・フィスター
[出演] レイ・リオッタ、LL クール J、メキー・ファイファー、ジョリーン・ブレイロック、ガイ・トーリー、テイ・ディグス、キウェテル・イジョフォー、ブルース・マッギル
[配給] アートポート
[宣伝] アンカー・プロモーション

オフィシャルサイト:http://www.doubt-movie.jp/
(C)2004 Slow Burn LLC. All Rights Reserved.

 レイ・リオッタ製作&主演のどんでん返しスペシャル満載のサスペンス作品。
2005年のカナダ・トロント国際映画祭にて正式上映されて以来、アメリカではまだ未公開。
実は日本公開の方が早い。その点、何だか少し得した気分にもなれる。

 地方検事のフォード(レイ・リオッタ)はジャーナリストのトリッピン(キウェテル・イジョフォー)の密着取材を受けている最中だった。
その日は公団住宅周辺でガス漏れ事故が相次ぎ、対応に追われていた。そんな時、フォードの恋人であり地方検事補のノラ(ジョリーン・ブレイロック)がレイプ事件に遭い、犯人の男アイザック(メキー・ファイファー)をその場で射殺してしまった。フォードはノラから事情を聞くがノラの正当防衛だと信じ込もうとする。
だがさらにそこへやって来たのはアイザックの友人だと名乗るルーサー(LL クールJ)が計画殺人だと訴えてきた…。誰が真実を話しているのか? 
一人一人の言動、行動に全ての謎が隠されている…。

 製作に加わっているレイ・リオッタ自身が惚れ込んだ内容だからこそ自らの演技にもかなりの力が入っているようだ。
恋人である検事補の言葉を信じると同時に赤の他人の証言から自身の考えも困惑していく。
誰が真実を言ってるかの問題、そして最終的に何を目的として今の騒動が起きているのかが謎として隠される。
観客の目は登場人物すべての言葉を静かに聞き、真実を見極めることに必死にならざるを得ない。
だがこの言動のからくりは最後の最後で覆されることで、あっさりと私に負けを認めさせてくれる。
この不可解な人間関係と美しい検事補ノラの謎を解くには一度だけでは物足りない気分にさせられるのも悔しい。
だが、LL クールJの語り口調は穏やかで真実味に溢れ、何度でも聞きたくなるから不思議だ。

さて、この複雑なからくりに挑戦してみようと思えるアナタ、いかがでしょう?(佐藤まゆみ)

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2007年3月3日 by p-movie.com

エレクション

頂点への冷酷な道程 ★★★★
[原題] 〓社會/Election
[05/香] 1h41 1月20日 テアトル新宿にてロードショー

[監督] ジョニー・トー
[製作] デニス・ロー、チャールズ・ヒョン
[脚本] ヤウ・ナイホイ、イップ・ティンシン
[撮影] チェン・シウキョン
[音楽] ルオ・ダー
[美術] トニー・ユー
[衣装] スタンレー・チョン
[出演] サイモン・ヤム、レオン・カーファイ、ルイス・クー、ニック・チョン、チョン・シウファイ、ラム・シュー、ラム・カートン、ウォン・ティンラム、タム・ビンマン、マギー・シュウ、デヴィッド・チャン
[配給] 東京テアトル、ツイン
[宣伝] メゾン

オフィシャルサイト:http://www.eiga.com/official/election/

 香港黒社会をしたたかに描いたジョニー・トー監督作品「エレクション」。
去年の第七回TOKYO FILMexで上映された本作。ようやく劇場公開となる。

 香港最大の裏組織<和連勝会>では、二年に一度、会長選挙が行われる。上層幹部は候補者をめぐって意見が割れている。
組織に忠実なまとめ役としてのリーダーが適任なのか、力づくで牽引するリーダーが必要なのか…。
対立する候補は、“兄弟”思いで年上を敬うロク(サイモン・ヤム)と、金儲けに徹し、荒っぽい手段を使うディー(レオン・カーファイ)。
選挙戦の裏側では、欲望と思惑が錯綜し、熾烈な戦いを迎える…。

 黒社会と聞いてしまえば危険な香りがするものだが、結局彼らの欲しいものは権力の座、金、有名になりたいという不確かな位置づけのようだ。
だが彼らの構成員50,000人を越える組織の頂点である“会長”という座に就くための非情なまでに表情が人間らしさを奪う。
誰もが何を考え画策しているのかさえ解からないのだ。どちらの派につけば良いのかさえ、冷たい空気の中で抑圧された思いを抱えながらの若い衆の
表情は顔色ひとつ変えない。選挙で決まった会長職に就いた後は、兄弟の契りと<和連勝会>への忠誠を誓う儀式が行われる。
そんな儀式が行われている間でさえ彼らの脳裏に何が映るのか気づかないほど淡々と進む。伝統あるその儀式も見ているだけで圧倒される。
だが権力の座に取り憑かれた者の運命はあまりにも過酷な運命しか待っていないのである。男たちが欲しがる権力の行く末は
女性には理解しがたいものと映るかもしれないが、それがジョニー・トーの描く静かなる闘争なのだ。
本作の続編「エレクション 2」もその後が描かれてるだけに期待大である。
(佐藤まゆみ)

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カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2007年1月26日 by p-movie.com

家門の危機

家門に恥じないエリートの嫁探し! ★★★★
[原題] 家門の栄光2
[05/韓] 1h55 11月18日 シネマート六本木、シネマート心斎橋にてロードショー!

[監督] チョン・ヨンギ
[製作] キム・ウテク、チョン・テソン
[脚本] キム・ヨンチャン
[撮影] ムン・ヨンシク
[音楽] キム・ウチョル
[衣装] ム・ジョンウォン
[出演] シン・ヒョンジュン、キム・ウォニ、キム・スミ、タク・チェフン、コン・ヒョンジン、イム・ヒョンジュン、シニ
[配給] リベロ

オフィシャルサイト:http://www.kamon-kiki.jp/
(C)2005 Showbox/Mediaplex Inc.

  韓国の大ヒットラブコメディ「家門の栄光(邦題:大変な結婚)」シリーズの第2弾。
前作でマフィアと一般人の結婚を大騒ぎの中、描いてくれ楽しませてくれたが、今回もまたあり得ない状況の結婚観で笑わせてくれる。
 前作では、韓国マフィア一家の4人兄妹で、上の三人の兄達が一番末っ子の妹の結婚相手にエリートのIT社長とくっつけようと奮闘するストーリー。
今回は別のマフィアが舞台となるが、やはり三人兄弟が頑張ってるヤクザの一家が家門を守る為に奮闘するストーリー。白虎組の女ボス、ホン・ドクチャは、長男インジェ(シン・ヒョンジュン)にエリートの花嫁を迎えることが夢。だが、長男インジェは、どんな女性とも付き合う気が無い。仕方なくドクチャは自分の還暦の誕生日までに嫁を連れてくるようにと命令を出す。
ところが突如、インジェの目を奪う女性が現れた。その女性、ジンギョンは学歴、美貌、性格ともに完璧。しかし、彼女の職業はヤクザの天敵である敏腕検事だった…。
インジェは、そして弟二人は、この危機を乗り越えられるのか?!

 前作同様、“マフィア”なんだけど、いまいちピンと来ない暴力団なのだ。やっぱり前作同様に兄弟がマフィアらしくない面白い三兄弟として描かれてしまう
からかもしれない。長男インジェ演じるシン・ヒョンジュンが一番怖くて良いハズなのに、恋してる時の表情と仕事してる時の表情が全然変化しない。
でも最初からインジェは、カッコつけの男じゃないのだ。常にビシっとしてるわけじゃない。劇中、彼の過去までも回想されてしまうシーンは80年代の若い時代だけに現在の彼とは掛け離れた姿は大いに笑わせてくれる。特に検事を演じたキム・ウォニは一人二役というカメレオン的な演じ方をするから笑いが止まらない人も多いだろう。
どっちにしろ今回はヤクザと検事じゃ結ばれるかどうか微妙な線で切なくもあり、結婚するという事にパワフルな勇気が必要と感じる。
慎重になり得る結婚が、愛さえあればここまでするのか?!という驚きの展開がちょっと感動的。
(佐藤まゆみ)

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カテゴリー: アジア | 映画レビュー

2006年12月19日 by p-movie.com

酒井家のしあわせ

“家族”って、かっこ悪い? ★★★★

[06/日] 1h42 12月23日 渋谷アミューズCQN にて全国順次ロードショー!
[監督] 呉美保
[製作] 若杉正明
[脚本] 呉美保
[撮影] 喜久村徳章
[音楽] 山崎まさよし
[美術] 禪洲幸久
[出演] 森田直幸、友近、鍋本凪々美、ユースケ・サンタマリア、濱田マリ、栗原卓也、谷村美月、洞口依子、笑福亭仁鶴、赤井英和、本上まなみ、高知東生、三浦誠己
[配給] ビターズ・エンド
[宣伝] Lem
オフィシャルサイト:http://www.sakaike.jp/
(C)「酒井家のしあわせ」フィルムパートナーズ

 ごく普通にある酒井家はお母さん、お父さん、長男14歳、長女4歳という家族である。14歳の長男・次雄は中学でサッカー部に所属し、この夏休みは毎日部活に忙しい。
今朝も関西弁ばりばりのお母さん(友近)から、うるさくまくし立てられたばかり。お父さん(ユースケ・サンタマリア)は母の再婚相手であるから次雄にとって継父だ。
だが明るい両親を少しうっとおしいと思う年頃が今の次雄だ。そんなある日、お父さんが家を出て行くと言い出した。
理由は好きな人が出来たから…さらに好きな人とは“男”だと言う…。

 ありふれた家族の話は父親がゲイであることを母親に告げたことによって、とんでもない方向へ転がり込む。
まず滅多にそんな話はあり得ないだろう、だからこそ家族は呆れ、笑いをも呼び込む。
だが父親のついた大きな“嘘”は、ありふれた家族をやっぱりありふれた普通に何処にでもいる家族にしてくれる。
家族ってどれだけ語りつくしても、本当は全員違う人間が集まるのが家族として繋がっていく。
その家族が色々な形を作ってくれて、更に愛情を言葉では言えないほどの深さを持つ。
ナレーションをしている14歳の長男の素直な気持ちと押し殺した気持ちのギャップが切なくも自然な視点が何かを思い出させてくれた。
自分が考えていた中学生の頃に見た両親への視点、それはまぎれもなく自分自身だったと思う。
そんな普通に居る家族から知るのは本作の中で生まれる普通の気持ち。その気持ちこそ家族なのだと再発見できるだろう。
余談だが、何よりも友近&ユースケ・サンタマリアという夫婦役があまりにもハマっていて本当にこのまま夫婦でいても良いのかも?…と錯覚まで起こさせるから凄い。
(佐藤まゆみ)

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カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2006年12月19日 by p-movie.com

ヘンダーソン夫人の贈り物

これがオンナの生き方 ★★★★
[原題] Mrs Henderson Presents
[05/英] 1h43 12月23日 Bunkamura ル・シネマ ほかにて全国順次ロードショー

[監督] スティーヴン・フリアーズ
[製作] ノーマ・ヘイマン
[脚本] マーティン・シャーマン
[撮影] アンドリュー・ダン
[音楽] ジョージ・フェントン
[美術] ヒューゴ・ルジック・ウィオウスキ
[衣装] サンディ・パウエル
[出演] ジュディ・デンチ、ボブ・ホスキンス、ウィル・ヤング、クリストファー・ゲスト、ケリー・ライリー、セルマ・バーロウ
[配給] ディーエイチシー
[宣伝] 樂社

オフィシャルサイト:http://mrshenderson.jp/

 時には英国女王陛下までも演じるジュディ・デンチ。彼女が70歳超えて、面白おかしくコメディとして成立させてしまったのは、実在した女性ローラ・ヘンダーソンの晩年を描いた人間ドラマである。

 1937年、ローラ・ヘンダーソン(ジュディ・デンチ)は夫を亡くし、残ったのは莫大な遺産だけ。
未亡人として今後の生き方を悩み、嘆き悲しむ。そんなある日、閉鎖されて古びたウィンドミル(風車)劇場が売りに出されているのを見て、思い切って買ってしまう。内装を施し、後は支配人を決めるだけ。そこで紹介されたのがショービジネスのプロ、ユダヤ人のヴィヴィアン・ヴァンダム(ボブ・ホスキンス)だった。当時のイギリスでは劇場経営者が上流階級の人間が決して多くない時代にヘンダーソン夫人は自らショービジネスの世界へ飛び込む。彼女は斬新かつ画期的なアイディアの持ち主でもあった。
経営不振になった時にでさえ、突如美女の裸体を演目の中に取り入れるという想像もつかないミュージカルまで上演したのである。
戦中となった時でさえも若い兵士たちがこぞって美しい女性たちを観に行くという盛況ぶり。
それは決して卑猥なモノではなく、華が咲いているように女性の姿が描かれる。
この世にこんなに美しいモノが他にあるのだろうか?と思える演出のやり方にも感激する。
 ドイツ軍に空爆に遭っていてもヘンダーソン夫人は劇場で上演を辞めない。その理由は劇中で描かれるのでネタバレはしたくないので伏せて置くが、そんな戦中に関わらず劇場での上演を無理にでも続けようとする姿勢こそが彼女の過去との人生を切り離せないモノだったのだ。そのバイタリティ溢れるヘンダーソン夫人の老後を観ているとこんな生き方があったんだ!と驚く女性が多いに違いない。女性が、最後まで女性であり女性を貫く生き方を見せ付けられた気がする。
実在したヘンダーソン夫人も、演じたジュディ・デンチも、やっぱり女性として生き抜いている。
ヴァンダム支配人演じるボブ・ホスキンスもとことんヘンダーソン夫人と喧嘩しながらも、自分の生き方を貫いて演出家として一歩も引き下がらない。
この二人の演技は、まさにコント仕様で大笑いせずには居られない。コメディなのに頑張る大人の姿はやはり感動的である。
(佐藤まゆみ)

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カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2006年12月19日 by p-movie.com