トランスフォーマー/リベンジ

新たなるトランスフォーム<変身>は”リベンジ”から始まる!

 製作総指揮スティーブン・スピルバーグ×監督マイケル・ベイの二大ヒットメーカーがタッグを組んだロボットアクションシリーズ第二弾。
全米では既に3億ドルを越える爆発的大ヒットを記録した話題作。

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 サム・ウィトウィッキー(シャイア・ラブーフ)が、正義のトランスフォーマー”オートボット”とともに、悪の”ディセプティコン”を倒してから二年。
恋人ミカエラ(ミーガン・フォックス)と離れて大学に進学した彼は、突然謎の幻覚に襲われる。
一方、宇宙からは新たな敵”ザ・フォールン”に率いられたディセプティコンが再び襲来。
海に眠る総帥メガトロンの復活を狙うディセプティコンとオプティマス・プライム率いるオートボット、そしてサムたちの新たな戦いが始まる。

 変形ロボットが活躍するこのシリーズを、「アルマゲドン」のマイケル・ベイが手掛けるのは妥当としても、奥行きのあるドラマを得意とするスピルバーグらしくないのでは…。
当初、そんな違和感を持っていた。
だが、考えてみるとこんなにスピルバーグらしさ満載の作品はない。

 まず、地球人である主人公サムと、宇宙から来た機械生命体”トランスフォーマー”の出会いは、「未知との遭遇」や「E.T.」など、スピルバーグの代表作にも通じる”異星人とのコンタクト”。
(”ロボット”と呼んでいるが、トランスフォーマーは生命体。)

悪のトランスフォーマー”ディセプティコン”の存在は、デビュー作「激突!」以来、「ジュラシック・パーク」、「マイノリティ・レポート」やプロデュース作品「イーグル・アイ」まで連綿と描かれてきた”暴走するテクノロジー”の物語に通じる。
さらに、オートボット対ディセプティコンの”戦争”という構図も「プライベート・ライアン」で戦争映画の歴史を塗り替え、「宇宙戦争」で異星人と人類の戦争を描いたスピルバーグらしい。
そう考えると、本シリーズは”スピルバーグ好みの素材を、マイケル・ベイが料理した作品”と言える。

 第二弾となる本作もその点を受け継いではいるものの、前作にあった”トランスフォーム(=変形)”に重ねたサムの成長物語などの人間ドラマは薄め。
その代わり、よりエンターテイメント性を追求し、登場するトランスフォーマーは前作の13体から40体以上へと大幅増。
物語の舞台も中東&米国内限定の前作から、世界中へと拡大した。

ドラマを重視するスピルバーグ色の強い前作と、派手さが売りのマイケル・ベイタッチの「リベンジ」と表現してもいいかもしれない。
エンターテイメントを優先したことで、物語が犠牲になった感はあるものの、前作を上回る迫力が見るものを圧倒。
それが功を奏してか、前作を凌ぐ勢いの大ヒットとなった。

少し気が早いが、このままいけば第三弾の可能性も十分。
その際にはぜひスピルバーグ自身の監督で、
より彼らしい作品を見てみたいと思うのは私だけではないだろう。

 

『トランスフォーマー/リベンジ』
6月20日(土)全国超拡大ロードショー
公式サイト:http://www.tf-revenge.jp/
Copyright © 2008 by Paramount Pictures. All rights reserved.

【映画ライター】イノウエケンイチ

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2009年7月22日 by p-movie.com

愛を読むひと

わずか1ページで 終わった恋が、 永遠の長編になる
まだ高校生の頃、大人の男性に恋をしたことがある。誰もが10代に一度は経験のある年上への憧れからかもしれない。
大ベストセラーになったドイツのベルンハルト・シュリンク作「朗読者」の始まりはまさに少年から青年へと変わる時期の大人の女性への恋を描いた作品である。
ただ、その時代背景、恋に落ちた相手との重大な秘密を守るべく生きた二人の静かな愛は運命としか思えないほど衝撃的なストーリーに仕上がっている。

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1958 年、まだ傷が深い大戦後のドイツ。戦争が終わっても人々の心が癒えるには早すぎる時、15歳のマイケルは年上の女性ハンナと出会い、激しい恋におちる。

 15歳という若さゆえの夢中になる恋をしているマイケルは常にハンナを想い続ける。
ただ部屋で会い身体を求め合うだけの恋愛と共にマイケルはハンナへ本の朗読をするようになる。
その声を静かにうっとりと聴いているハンナには心地よい時間が過ぎているかのよう。だがひと夏の恋は突如としてハンナが姿を消したことで終わりを告げてしまう。

そして8年後、法学生になったマイケルが傍聴した裁判で見たのは、戦時中の罪に問われる被告人としてのハンナだった。
いわゆる戦犯という重い罪を彼女は不当な証言を受け入れ、無期懲役として刑を受け入れるのだ。
8年前に愛したハンナの忌まわしい過去を知ると同時に、自分だけが知る彼女の”秘密”に何も手出しは出来ないマイケルの苦しみは続く。

 ハンナが誰にも知られたくなかった秘密をマイケルは20年間、口を閉ざしながらも消えない愛を想い続けている。
その想いを大人になったマイケル(レイフ・ファインズ)が新たなる行動を起こすことで二人の中で守られてきた愛が温かくも切ない。

 本作で36歳から30年間を一人で演じきったケイト・ウィンスレットのアカデミー賞最優秀主演女優賞受賞に誰もがうなずくだろう。
ケイト・ウィンスレットという女優は常に演じる役と本気で向き合い自分のモノにする気迫が観客をとりこにしてしまうから素晴らしいとしか言いようがないのだ。

女性の私が言うと真実味が増すだろうが、ホントの女性の30代、40代の心と身体はケイト・ウィンスレットの役作り以上にリアルさが感動を深くしているに違いない。

 

『愛を読むひと』
6月19日(金) TOHOシネマズ スカラ座ほかにて全国ロードショー
公式サイト:http://www.aiyomu.com/
(C)2008 TWCGF Film Services II, LLC. All rights reserved.

 

【映画ライター】佐藤まゆみ

 

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2009年7月9日 by p-movie.com

ターミネーター4

無敵の殺人マシーン、ターミネーターの活躍が人気のSFアクションシリーズ第4弾。
現代の物語だった前3作から一転。ターミネーターが誕生した未来を舞台に、
これまで明かされることのなかった人類とターミネーターの戦いが描かれる。

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2009年6月12日 by p-movie.com

天使と悪魔

キリストの聖杯伝説にまつわる謎を描き、
世界中で大ヒットした「ダ・ヴィンチ・コード」から3年。
トム・ハンクス演じるラングドン教授が、
再びキリスト教の総本山ヴァチカンを揺るがす危機に挑むサスペンスミステリー。

090518_angel-demons_main.jpgキリストの秘密を解き明かしたロバート・ラングドン教授(トム・ハンクス)のもとに、
ヴァチカンから使者が訪れる。
キリスト教と対立してきた太古の秘密結社”イルミナティ”から、
復讐を予告するメッセージが送られてきたという。
ちょうどこの日、ヴァチカンでは教皇選出の選挙”コンクラーベ”が開催されていた。
全世界が注目する中、イルミナティは教皇候補者4名を誘拐、1時間毎の殺害を予告。
さらに、核兵器以上の威力を持つ”反物質”をヴァチカンのどこかに隠し、
深夜12時に爆発させるという。
ラングドンは、反物質を開発した女性科学者ヴィットリア(アイェレット・ゾラー)、
司祭カメルレンゴ(ユアン・マクレガー)の協力のもと、
4人を救い出し、爆発を阻止できるのか…!?

090518_angel-demons_sub01.jpg小説を映画化するとき、どこを残してどこを省略するかということが大きな問題になる。
本作の原作も、手に汗握るサスペンスでありながら、
宗教と科学の対立という奥深いテーマを内包した見事な作品である。
一歩間違えるとその持ち味を失い、遠くかけ離れたものが出来上がってしまう。
そこで本作は、原作にあるいくつもの見どころの中から、
教皇候補者誘拐の謎解きを中心に映画化。
映画オリジナルの人物も登場し、スリリングなノンストップサスペンスに仕上がった。
その効果が如実に現れているのが序盤。
原作ではラングドンは反物質を開発したセルン(欧州原子核研究機構)を経由して
ヴァチカンへ赴く展開になっているが、このくだりが結構な分量。
映画ではこのエピソードを省略。
早々にヴァチカンに移動することで、展開をスピーディーにし、
見るものを一気に引き込んでしまう。

090518_angel-demons_sub02.jpgまた、描かれる物語はほんの数時間の出来事だが、小説の進み方は読む人まかせ。
それに対して、時間経過がリアルタイムに近く、
よりスリリングな感覚が味わえるのも映画ならでは。

主人公のラングドン教授も、原作からややアレンジ。
小説では007顔負けの激しいアクションを見せるが、ちょっとやりすぎの印象。
映画ではこれを整理。アクションは他の人物に譲り、知的な面を強調することで、
より学者らしくなっている。

前作「ダ・ヴィンチ・コード」はかなり原作に忠実な映画でありながら、
詰め込みすぎの感があった。
本作はその反省を踏まえ、映画用に思い切った再構成を行うことで、
よりエンターテイメントとしての面白さに磨きをかけた作品といえる。

そして最後に一つ。
製作上の都合と思われるが、原作で描かれている犯人に関する重要な秘密が、
映画では省略されている。
その内容を知りたい方は、ぜひ小説を読むことをオススメしたい。
より深くこの作品を楽しめるはずだ。

090518_angel-demons_sub03.jpg映画「天使と悪魔」
オフィシャルサイト:http://angel-demon.jp/
ガリレオの暗号が、ヴァチカンを追いつめる
2009年5月15日(金)全世界同時公開
配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント


【映画ライター】イノウエケンイチ

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2009年5月18日 by p-movie.com

島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん

シリーズ累計670万部の大ヒットを記録、
TVドラマ、映画、舞台にもなった島田洋七の小説を、
原作者自らメガホンを取り再映画化。
爽やかな涙と笑いが溢れる人情ドラマに仕上がった。
佐賀の田舎に預けられた少年と型破りなおばあちゃんの、
貧しくも明るく楽しい日常を描く。

090430_gabai-ba-chan_main.jpg昭和33年。広島に住む昭広少年(小学1年時:森田温斗、
小学3年時:瀬上祐輝)は、母親の仕事の都合で、
佐賀のおばあちゃん(香山美子)の家へ預けられることに。
ところが、このおばあちゃんは超がつくほどの貧乏。
しかし、持ち前の知恵と工夫で明るく楽しく生きるおばあちゃんに影響され、
昭広は逞しく成長していく。

原作がベストセラーになった時、
話題になったのはおばあちゃんの逞しい人柄だった。
鉄くずを集める磁石を腰からぶら下げて町を歩いたり、
川から流れてくる野菜を集めたり。
前回の映画もその型破りな行動を重視した作りだったが、
ややオーバーな印象があった。
今回はそういう部分は控え目に、
おばあちゃんと孫の愛情あふれる生活を丁寧に描き、
ホロリとさせる作品に仕上がっている。

原作者自ら監督する場合、思い入れが強くなりすぎ、
観客が置いてきぼりにされてしまうことがしばしば。
だが、お笑いで鍛えた長年の経験からか、
初監督にもかかわらず島田洋七はそのあたりをよく心得ているようだ。
原作者らしいこだわりが随所に感じられる一方で、
観客を無視した思い込みの強さもなく、見る側にとっても心地よい。

吉行和子や泉ピン子が主演したこれまでの映画やTVドラマとは異なり、
おばあちゃん役には一見、タイプではない香山美子を起用。
だがそれが逆に役者の印象を消して”本当におばあちゃんがいる”
という雰囲気を醸し出している。

おばあちゃんの家も、セットではなく年季の入った本物の民家を借りて撮影。
その古さは”スタッフが入ったら床が抜けた”というから相当なもの。
だが、その甲斐あってCGを使った映画では得られない
“昭和の家”のリアルな空気が画面全体に漂っている。

中学で野球部に入った昭広が活躍する試合シーンも本格的。
走者が一塁から二塁へ走る場面。
普通なら細かくカットを割るところだが、本作ではワンショット。
本当に野球を見ているような感覚だ。
野球経験者を集めたからこそ可能なことで、
こんなところにも監督のこだわりが見て取れる。

物語の大筋は以前と変わらないのに涙腺を刺激されるのは、
こういった細かいこだわりから来る”本物感”の効果だろう。
母親役が高島礼子というのは願望が出すぎだが、そこはご愛嬌。
前回の映画で泣いた人も泣けなかった人も、
ぜひ映画館に足を運んで、その目で確かめてほしい。
きっと自分のおばあちゃんに会いたくなるはずだ。

090430_gabai-ba-chan_sub.jpg映画「島田洋七の佐賀のがばいばあちゃん」
オフィシャルサイト:http://gabai-ba-chan.oklife.okwave.jp/
苦労はしあわせになる為の準備運動たい!!
2009年4月25日(土)より東京:銀座シネパトス先行、5月全国ロードショー
(C) 島田洋七の「佐賀のがばいばあちゃん」製作委員会・2009


【映画ライター】イノウエケンイチ

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2009年4月30日 by p-movie.com