血と骨

血は母より、骨は父より受け継ぐ ★★★★☆
[04/日]2h24 11月6日より丸の内プラゼールほか全国松竹・東急系にてロードショー

[原作]梁石日「血と骨」幻冬舎文庫刊
[監督]崔 洋一
[脚本]崔 洋一 鄭義信
[出演]ビートたけし 新井浩文 田畑智子 オダギリジョー 松重豊 中村優子 唯野未歩子 濱田マリ 柏原収史 塩見三省 北村一輝 國村隼 鈴木京香
[配給]松竹 ザナドゥー
[宣伝]P2

「家族シネマ」で、父親役を演じた梁石日原作の同名小説の映画化。「月はどっちに出ている」と同じく「刑務所の中で」「クイ-ル」の崔 洋一が監督。監督の指名で「御法度」のビートたけしが主演。梁氏の父親を演じる。梁役に「ラブドガン」の新井浩文、姉役に「隠し剣、鬼の爪」の田畑智子、母親役に「ゼブラ-マン」の鈴木京香、ほか「パッチギ」のオダギリジョー、「レディ・ジョーカー」の松重豊、「オーバー・ドライヴ」の柏原収史、「ゴジラ ファイナル ウォーズ」の北村一輝。

1923年。一旗揚げることを夢見て祖国を後にし、済州島から大阪に渡ってきた金俊平。しかしそこで彼を待ちうけていたのは、差別と劣悪な労働条件だった。腕のいい蒲鉾職人でもあった俊平は、やがて自分の蒲鉾工場を立ち上げて成功するが、金銭へのあくなき執着から高利貸しへと転じていく。何度も直面するままならない境遇を、そのつど強靭な肉体と持ち前のずる賢さでたくましく生き抜く俊平だったが、その並外れた凶暴さと強欲さが、周囲の人々を不幸に陥れる。生涯誰にも心を開かず、凄まじいまでに孤独に生きた男が本当に望んだものは、何よりも家族という名の“血の絆”だった。

在日一世として生きた父親と息子の視点から語りつつ、激動の時代を生きた朝鮮移民の家族の姿を壮絶に描き出した力作。特に、暴力で親子の絆を表現していくのは圧巻。戦中~戦後を生きた人々の生き様、人間の業、そして“血”の連鎖が、スクリーンから激流となって溢れ出すタイトル通りの骨太作品。来年の賞レースには、必ず引っ掛かって来るだろう。正雄は、この後にタクシー運転手になるのか。

オフィシャルサイト:http://www.chitohone.jp/

.

カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2004年11月8日 by p-movie.com

イズ・エー[is A.]

息子を裁くのは、父親の役目です ★★★★☆
[03/日]1h49 10月9日よりユーロスペースほか全国順次公開[PG-12]

[製作]北側雅司 及川次雄 林瑞峰
[監督]藤原健一
[脚本]藤原健一 江面貴亮
[出演]津田寛治 小栗旬 内藤剛志 戸田菜穂 水川あさみ 榊英雄 山田辰夫 斎藤歩 伊藤かずえ 菅田俊
[配給]GPミュージアムソフト
[宣伝]アジンコート

未成年者による犯罪で家族を亡くした被害者の刑事と、加害者となった家族の再生を願う父親、少年法により社会復帰した息子のその後を描いた衝撃作品。出演は「世界の中心で、愛をさけぶ」の津田寛治、「隣人13号」の小栗旬、「ランドリー」の内藤剛志、「死に花」の戸田菜穂、「渋谷怪談」の水川あさみ、「荒神」の榊英雄、「陰陽師2」の山田辰夫、「油断大敵」の斎藤歩、「ナースのお仕事ザ・ムービー」の伊藤かずえ、「ラストサムライ」の菅田俊。監督は、多々のVシネマを撮ってきて本作で劇場映画デビューの藤原健一。

渋谷で、大量の死者を出す爆破事件が発生。犯人は”ホーリー・ナイト”と名乗り、多くのメディアで取り上げられ、カリスマ的存在となる。ところが捕まったのは、なんと14歳の少年・勇也 (小栗旬)だった。少年法により、わずか4年で出所する”ホーリー・ナイト”。果たして勇也は本当に更生できたのだろうか?勇也の社会復帰を知り、ある確信を持って動き出す刑事(津田寛治)。彼は爆破事件で最愛の妻と息子を失っていた。一方、勇也の父親(内藤剛志)は離れ離れに生活する家族の再生を願って行動する。被害者と加害者、立場は違うが、同じ父親としてのプライドを背負って対峙する二人の男。だが、その二人をあざ笑うようにまたもや信じられない事件が起こる…。

少年犯罪を描いた作品には、「踊る大捜査線」の映画化1作目ほか多々あるが、この作品は少年法によりわずか4年で少年院を出所した少年のその後と、事件によりバラバラに生活している家族の再生を願う加害者の父、爆破事件により妻と子を亡くした刑事のその後を描いた作品。ここ何年かで日本でも未成年者による犯罪が増加しているが、本作はフィクションでありエンターテイメント性のあるドラマとして描かれている。特に、被害者の父と同じく子供を持つ父親と、12歳から高校生の方に見て欲しい作品。

オフィシャルサイト:http://www.is-a.jp/

.

カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2004年10月7日 by p-movie.com

釣りバカ日誌15 ハマちゃんに明日はない!?

“バカ”が輝く夏が来た! ★★★☆☆
[04/日]1h47 8月21日より丸の内ピカデリー2ほか全国松竹・東急系にてロードショー

[製作]瀬島光雄 深澤宏
[原作]やまさき十三(小学館「ビッグコミックオリジナル」)
[監督]朝原雄三
[脚本]山田洋次 朝原雄三
[出演]西田敏行 三國連太郎 谷啓 浅田美代子 江角マキコ 筧利夫
[配給]松竹株式会社
[宣伝]松竹(株)映画宣伝室

毎年恒例となっている釣りバカ・シリーズの第17弾(スペシャルと江戸編を含む)。今回のロケ地は秋田。ゲスト出演は「命」の江角マキコ&筧利夫。このシリーズは、何故か「踊る大捜査線」のメンバーを使いたがるようで、知らないうちに小野武彦が鈴木建設の役員に定着している。監督は前作からの登場となった「サラリーマン専科」シリーズの朝原雄三。

鈴木建設にも時代の波が押し寄せ、ついに人事制度改革に着手することに。社長の一之助は、早急な改革が安易なリストラに繋がらないかと不安を覚える。その頃、ハマちゃんは、新しく就任した課長をまんまと言いくるめ、リフレッシュ休暇を取り、秋田への釣り旅行に出かけていた。男鹿半島で真鯛釣りを楽しんでいた伝助は、水産試験場で働く福本哲夫と知り合う。お魚を愛する二人はすぐに意気投合、哲夫の実家に招待されることに。途中、思いがけず出会ったのは、秋田に向かう新幹線の中で隣の座席に乗り合わせた美しい女性・薫。薫は哲夫の同級生で、しかも哲夫にとっては初恋の人だった。哲夫の家で楽しい宴会を繰り広げているうちに、伝助は薫が鈴木建設の人事制度改革を担当するコンサルタント会社に勤めている事を知るのであった。

鈴木建設にリストラの危機もお構いなしのマイペースなハマちゃん。今回は、ゲスト出演の縁結びという寅さんシリーズでもお馴染みのパターンに初の仲人役というオマケ付き。毎日の生活に元気をくれる心のビタミン剤を堪能あれ。今回も恒例となった壱千円興行です。

オフィシャルサイト:http://www.tsuribaka-movie.jp/

.

カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2004年8月23日 by p-movie.com

誰も知らない Nobody Knows

生きているのは、おとなだけですか ★★★☆☆
[04/米]2h21 8月7日よりシネカノン有楽町ほかにて全国一斉公開
[製作]是枝裕和
[監督]是枝裕和
[脚本]是枝裕和
[出演]柳楽優弥 北浦愛 木村飛影 清水萌々子 韓英恵 YOU
[配給]シネカノン
[宣伝]シネカノン

「ワンダフルライフ」「ディスタンス」の是枝裕和監督が、88年に実際に起こった事件をモチーフに着想から15年の歳月を経て遂に完成させた作品。キャストは4人のフレッシュな子役と「ビストル・オペラ」の韓英恵。ご存知、柳楽優弥がカンヌ国際映画祭で最優秀男優賞を受賞している。

トラックからアパートに荷物が運び込まれてゆく。引っ越してきたのは母と4人の子どもたち、明、京子、茂、ゆきだ。大家には母と長男だけのふたり暮らしと嘘をついた。子どもたちは学校に通ったことがなく、父親もみな別々だ。 それでも母がデパートで働き、12歳の明が母親代わりをすることで、家族は彼らなりに幸せな毎日をすごしていくのだった。 そんな日常に変化が訪れる。母が新しく男をつくって家出をしてしまったのだ。明の手元に残されたのは20万円の現金と「よろしくネ」と記されたメモ。 この日から、誰にも知られることのない4人の子どもたちだけの”漂流生活”が始まることになる。

演技経験のない子供たちとコミュニケーションを重ねながら、独自の演出によって彼らの姿をフィルムに焼き付けるという演技を超越したリアルな成長が刻まれた作品。母を思う無垢な心、外の世界に対する憧れと葛藤、次第に苦しくなっていく生活。知恵と勇気を絞って助け合いながら生きる姿は、深い感動を呼び起こした。でも、ちょっと長いかな。

オフィシャルサイト:http://www.daremoshiranai.com/

.

カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2004年8月16日 by p-movie.com

スチームボーイ

勇気と希望の空想冒険活劇 ★★★★☆
[04/日]2h06 7月17日より日比谷映画劇場ほかにて全国公開

[製作]サンライズ
[原案]大友克洋
[監督]大友克洋
[脚本]大友克洋 村井さだゆき
[声出演]鈴木杏 小西真奈美 中村嘉葎雄 津嘉山正種 児玉 清 沢村一樹 斉藤 暁 寺島 進
[配給]東宝株式会社
[宣伝]メイジャー

1995年のオムニバス作「MEMORIES」の1本を手掛けた以来、長編は「AKIRA」から16年ぶりの大友克洋監督最新作。声の出演は「花とアリス」の鈴木杏、「阿弥陀堂だより」の小西真奈美、「ホワイトアウト」の中村嘉葎雄、「どら平太」の津嘉山正種、「戦場に流れる歌」の児玉 清、TVドラマ「浅見光彦シリーズ」の沢村一樹、「踊る大捜査線」の斉藤 暁、「幸福の鐘」の寺島 進。

舞台は19世紀イギリス。蒸気機関が産業を支配し始めていた時代。そこに科学の進歩と人類の欲望を具現した“驚異の発明”が生み出されようとしていた。発明一家のスチム家に生まれた少年レイは、ある日、祖父ロイドから謎の金属ボールを託される。その瞬間から、レイは恐るべき陰謀と冒険に巻き込まれていくのだった。この金属の球体こそ、空前絶後のエネルギーを持つ驚異の発明=スチームボールであった。この大発明は「幸せをもたらす奇跡」なのか、それとも「悪魔の発明」なのか…。

今までの大友作品とは打って変わり過激さはなく、子供でも楽しめる血沸き肉踊る冒険活劇。監督は鉄腕アトム(ASTRO BOY)のような手塚ワールドを目指したようだが、ヒーローとヒロインが空を飛んだり、城が動いて飛んだりと宮崎アニメに近い。ちょっと残念なのは個性的すぎるボイスキャストを選びすぎて、声を聞いただけで誰だか分かってしまう。拘りすぎたのが、ウラとでたかも。

オフィシャルサイト:http://www.steamboy.net/

.

カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2004年7月17日 by p-movie.com