ストレイト・ストーリー

ストレイトじいちゃんの実話ロードムービー ★★★★☆
[99/米] 1h51 丸の内ピカデリー2ほか全国松竹洋画系にて公開中

監督:デイヴィッド・リンチ
出演:リチャード・ファーンズワース シシー・スペイセク
配給・宣伝:コムストック

「ワイルド・アット・ハート」「ツイン・ピークス」のデイヴィッド・リンチが、今までの作品とうって変わって非常にスウィートで感動的な作品を撮りあげた(リンチの作品としては初めて「一般向け」としての評価を受けた)。73歳の老人が76歳の兄を見舞いに行くために時速8Kmのトラクターで6週間かけて旅をした実話を、50歳迄スタントマンをしていた79歳のリチャード・ファーンズワース(アカデミー賞主演男優賞ノミネート)が演じている。撮影をしているのは「エレファントマン」「デューン/砂の惑星」でもリンチと組んでいる80歳のフレディ・フランス。

アイオワ州ローレンスに住む73歳のアルヴィン・ストーリー(ファーンズワース)は娘のローズ(スペイセク)と二人暮らし。ある日、10年来仲違いしていた76歳のライルが心臓発作で倒れたという電話を受け、彼は見舞いに行くことにする。しかし、免許を持っていないにもかかわらずどうしても自力で行かなければ気が済まないアルヴィンは、560㎞離れたウィスコンシン州ヘ、車で行けば1日のところを、時速8Kmのトラクターで6週間かけて会いに行くのだった。

旅の途中で会った人達にアルヴィンが、自分の体験話をしたシーンで若干リンチっぽさが出ていたが、それ以外を見ると本当にリンチが撮ったのかと驚いてしまうほどシンプルで心温まる作品。この作品での演技を見ると、アカデミー賞主演男優賞はケビン・スペイシーなんかでなくリチャード・ファーンズワースにあげたかった、とも思う。
本人も記者会見で「もう先がないから欲しかった」と話していただけに残念である。
(気まぐれ飛行船)

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カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2000年4月24日 by p-movie.com

アイアンジャイアント

癒やし系アニメ映画

オススメ度:★★★★☆
2000年/アメリカ/カラー/86分

<INTRODUCTION&STORY>

アニメーション界のアカデミー賞と言われるアニー賞において史上初9 部門独占受賞を成し遂げた感動作が遂に日本で公開される。1968年に発表されたテッド・ヒューズの原作を「シンプソンズ」シリーズのブラット・バードが監督して、アイアン・ジャイアントのデザインは「ミクロキッズ」「ロケッティア」「ジュマンジ」「遠い空の向こうに」の監督で「ジェラシック・パーク3」に抜擢されたジョー・ジョンストン。尚、この作品は第1回ワーナー・マイカル・シネマズ特選作品としてワーナー・マイカル系のシネコンでのみ上映される。

1957 年の秋にソ連が世界初の人工衛星スプートニク号を打ち上げた直後のメイン州ロックウェルという小さな町では、金属で覆われた大男が空から降ってきて海に落ちるのを見たという漁師の話で持ちきりだった。宇宙人の存在を信じる9歳の少年ホーガースは夜中に家を抜け出して大男を探しに行く。そしてホーガースが森で見つけたのは金属を食べ、子供のように何でも知りたがる鋼鉄の巨人(アイアン・ジャイアント)だった。しかし、巨人は手当たり次第に車や線路を食べてしまうために、政府のエージェントが調査しに町へやって来て調べ始める。ホーガースはよその町からやって来た少し変わった屑鉄屋で芸術家のディーンに頼み、巨人を守ろうとする。しかし巨人の正体がバレてしまうのは時間の問題だった。しかも巨人はただの優しいロボットではなく、恐るべき破壊力を秘めていた。そうとは知らずに政府は巨人を攻撃し始めてしまい、誤って核兵器ミサイルのボタンを押してしまった。

<REVIEW>

「ターザン」「プリンス・オブ・エジプト」「バグズライフ」などの並みいる有力ノミネート作品を押しのけて前代未聞の9部門を受賞した「アイアン・ジャイアント」はアメリカで封切られると、ロボットなのにそこはかとないユーモアと悲哀を漂わせて、人間よりも人間らしいジャイアントのキャラクターにファン独自のサイトが出来たり、と大いに盛り上がっている。新しい友達と一緒に踏み出すワクワクするような冒険や、初めて感じた誰かを守ってやりたいと思う気持ちなど、誰もが子供時代に一度は経験するときめきと切なさを思い起こさせてくれる、大人でも楽しめる感動大作に仕上がっている。

<TRAILER>

YOUTUBE

<CREDIT>

■原案・監督:ブラッド・バード
■声の出演:ジェニファー・アニストン、ハリー・コニック・Jr、イーライ・マリエンタール、ヴィン・ディーゼル
■配給:ワーナー・ブラザース
■宣伝:ドラゴンキッカー

■公式ホームページ: -

[99/米] 2000年4月15日より全国ワーナー・マイカル・シネマズにて独占ロードショー
(C)1999 Warner Bros. All Rights Reserved

【ライター】気まぐれ飛行船

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2000年4月17日 by p-movie.com

玻璃の城

わたしはあなたを忘れたことはなかった。★★★★☆
[98/米] 1h40 4月1日より 岩波ホールにて

[監督] メイベル・チャン
[脚本・製作] アレックス・ロー
[撮影] ジングル・マ、アーサー・ウォン
[出演] レオン・ライ、スー・チー、ニコラ・チェン、ダニエル・ウー
[配給] アミューズ

 「宋家の三姉妹」の監督が、また風合いの異なる映画を作った。端的にいえば”不倫”の恋を描いたストーリー。だが、簡単に不倫だと一蹴するわけにはいかない不思議な恋があるものだ。

 学生時代に出会い、愛しあった一組の男女。しかし、その恋もいつしか時代に押し潰されて自然に消えてしまう。そんな過去を胸の奥に封印し、それぞれ別の家庭を築いて20年が過ぎた時、二人は偶然再会する。抑えてきた想い。そして二人は今までの人生で得られなかった愛を求めあう。だが彼らの不倫が”本物の恋”になるか”許されぬ恋”になるかは、彼ら自身にもその鍵は託されていない。

 学生紛争に荒れる香港と、返還に揺れる香港。時代と共に移り変わる街の中に描かれるのは、あくまでも微妙な心の動きである。”あの頃にはニ度と戻れない”と改めて見せつけるかのように、止まることなく輝きながら変化し続ける香港の街。その風景の中に漂う二人の恋は、一体どんな終着駅にたどりつくのか。

 もうひとつの見どころは、二人のそれぞれの子供たちである。彼らが、恋に落ちた二人に対してどう思い、何を感じるのか。また、二人の恋を引き継ぐかのようにふれあい、歩み始める彼らの姿には非常に好感が持て、希望を感じられる。私たちも微笑みを感じることができるだろう。

 主人公の二人を演じるのはレオン・ライとスー・チー。共に学生時代と現在とを通して演じきっている。普通ハリウッド映画などは40代~の女性を描く時、多少なりとも化粧で老け顔を作るのだが、スー・チーは20代~40代を素のまま演じている。彼女は演技だけで40代を表現できる不思議な女優なのだということに驚かされる。

 情緒的な恋を演出するにはあまりにも出来過ぎな風景というものがあるが、本作ではそれを非常にうまく取り入れ、リアリティを排した映像で過去の恋をロマンチックに描いている。
(気まぐれ飛行船)

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2000年4月10日 by p-movie.com

ヒマラヤ杉に降る雪

工藤夕貴ハリウッド映画進出 ★★★☆☆
[99/米] 2h08m 4月1日よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にて公開

監督・脚色:スコット=ヒックス
出演:イーサン=ホーク 工藤夕貴 鈴木 杏 リック・ユーン サム・シェパード
配給・宣伝:UIP 

数々の賞に輝き、世界的ベストセラーになったデビッド・グターソンの原作を、「シャイン」のスコット・ヒックスが映画化。工藤夕貴が本格的にハリウッド映画に進出した。本人も意欲的に取り組んだ、と製作前より話題に上った詩情あふれる作品。第2次世界大戦後のワシントン州北西部の小さな湾に浮かぶ移民の島を舞台に、幼なじみ同様に過ごしたアメリカ人青年と日系人女性の愛の軌跡を、「ある殺人事件」をめぐって回想的に、プロセスを巧みに構成させながら綴っている。

1954年の冬、ワシントン州北西部のピュージェット湾に浮かぶ小さな島で漁師が溺死する。死体の頭部に何かで強く打った傷跡があったために、同じ場所で漁をしていた日系二世のカズオ・ミヤモト(リック)が殺人容疑をかけられ、逮捕されてしまう。ヒマラヤ杉に雪が降り始める頃、裁判が始まった。不利な状況が続く中、なす術もなく傍聴席から夫の背中を見つめるハツエ(工藤)。そんなハツエの近くに、もう一人この裁判を見守る人物がいた。それは新聞記者のイシュマエル(イーサン)。彼は、ハツエとは幼なじみで互いに心を許しあった仲だった。しかし、真珠湾攻撃を境に離れ離れになっていたのである。イシュマエルは自分の愛を裏切ったハツエに対する愛と憎しみで、彼女の夫を自分が救うべきかどうか、心が揺らぐのだった。

それぞれの出会いと真相、偶然が引き起こす哀しさが痛いほどに伝わってくる。台詞が少ない分、しんしんと雪の降り積もるヒマラヤ杉の森やひっそりとした漁村など、あたかも自分がそこにいるかのように感じる映像美、そして日本的な曲調も取り入れた音楽もドラマ性を高めている。工藤夕貴の独特な雰囲気にも感心したが、特筆すべきは鈴木杏のみずみずしさだろう。まったく驚かされる。
しっとりとした映像の中に美しく、静かに織り成される物語。もし自分だったら....自身に問いながら観るのもいいかもしれない。

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2000年4月3日 by p-movie.com

ファンタジア2000

クラッシックとアニメの21世紀的融合 ★★★★☆
['99/米] 1h15 2000年1月1日~5月7日迄東京アイマックスシアターで公開中

[監督] ヘンデル・ブトイ、E・ゴールドバーグ
[製作] ロイ・E・ディズニー
[出演] ミッキーマウス、ドナルド・ダッグ、スティーブ・マーチン、ベッド・ミドラー
[声優] スティーブ・マーティン、B・ミドラー
[配給] ブエナビスタ インターナショナル
[宣伝] マンハッタン ピープル

1940 年に公開された「ファンタジア」が60年振りに最新のデジタル技術と巨大なアイマックスシアターのスクリーンで帰ってきた。「大テノール競演」の指揮者として知られるジェイムズ・レバインが指揮してシカゴ交響楽団が奏でたクラッシックの名曲に合わせ美しいアニメーションの祭典で楽しませてくれる。

今回の作品は7編のアニメーションと前作の名場面「魔法使いの弟子」(ミッキー出演)の復元版、そしてその間に入る各界著名人によるイントロダクション(実写)から構成されている。それぞれが個性とテーマを持ち、素晴らしい出来に仕上がっている。アニメーションにはセリフがないので子供でも充分に鑑賞できる。2番目の交響詩「ローマの松」は飛翔をテーマにクジラの群れが空高く舞い上がる。雲と一緒に空に浮かぶクジラの美しい映像に度肝を抜かれた。極めて独創的でファンタジックな物語である。4番目の「ピアノ協奏曲第2番」は、アンデルセン童話「スズメの兵隊」片足しかないスズメの兵隊が、陰険なビックリ箱人形から美しいバレリーナを救い出す物語。ビックリ箱人形のモデルはジャック・ニコルソンである。7番目は「威風堂々」。主人公はドナルド・ダックで、役柄はノアのアシスタント。ノアの箱船に動物のカップルを誘導するのが彼の仕事なのだが、洪水で愛妻のデイジー・ダッグとはぐれてしまう。最後の「火の鳥」は死と再生をテーマに森の王者であるオオジカに呼び出された水の雫の妖精が、活火山に住む火の鳥に破壊された森を再生しようとする物語で、荒々しい破壊的エネルギーと詩情豊かな森の再生をダイナミックな映像(「もののけ姫」を思わせる)で見せ、壮大なエンディングで締めくくっている。

コンピュータ・テクノロジーという強力なツールの出現で、今回の続編が実現したそうで、3作目は10年もかけずに制作されるそうである。

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2000年3月27日 by p-movie.com