アントマン


©Marvel 2015

仕事も家庭も失い、別れた妻と暮らす幼い娘の養育費も払えない、絶体絶命の男、スコット(ポール・ラッド)。このままでは娘に会えない!追い詰められた彼は、気のいい仲間ルイス(マイケル・ペーニャ)の情報をたよりに豪邸に忍び込む。だが目指した金庫の中には、現金も宝石もなく、あったのは古びたバイク用らしきスーツとヘルメットだけ。見込み違いに落胆しながらも、仕方なくスーツだけを持ち帰る。だが、部屋に戻って興味半分にそのスーツを着てみると…。なんとスコットは1.5cmの小さな体に縮んでしまったのだ!やっとのことで元の大きさに戻った彼は、そのスーツを早く返そうと、再び豪邸に侵入したところで警官に捕まり、留置場に…。

その夜、考え込む彼の元に、アリたちが小さな何かを運んで来た。発光とともに出現したのは、あのスーツとヘルメット。彼は、慌ててスーツを着込むと、小さく変身した。ヘルメットから聞こえてくるのは、謎の男の声。その指示に従って、留置場を脱出した小さなスコットの前に、背中に鞍をつけた羽アリが着陸した。躊躇しつつも、それにまたがり飛び立った彼は、空へと上昇し…。激しい動きに身が持たず、気絶した彼が目覚めたところは、謎の男の家。それは彼が忍び込んだあの豪邸だった。

あり得ない状況に次々と巻き込まれ、呆然とするスコットの前に謎の男ハンク・ピム(マイケル・ダグラス)が現れ、“ある仕事”をオファーする。その“仕事”とは、なんとスーツを着て特殊な能力を持つ“アントマン”になること。実はずっとスコットを監視していたピムは、その素質をテストするために、わざとスーツを彼に盗ませるよう仕向けたのだった。ピムは言う。「これは人生をやり直すチャンスだ。君をヒーローだと思っている娘の期待に応えろ」。

スコットの思いはただひとつ、娘のために人生をやり直すこと。だがヒーローへの道は長く険しい道。果たしてスコットは、ヒーローとなり、人生のセカンド・チャンスをつかめるのか? そして、ピムが託そうとしている、世界を揺るがす驚きのミッションとは?


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映画史上、“最小”にして“最大”のアクション・エンターテイメントが日本上陸!スパイダーマン、アイアンマンなど、数々の魅力あふれるキャラクターを生み出してきたマーベル・スタジオから誕生した、かつてないユニークなヒーロー、それが、スーツによって身長わずか1.5cmに変身する“最小”ヒーロー、アントマンだ! しかし…“仕事もクビになり、養育費が払えないため最愛の娘にも会えない”主人公の スコット・ラング。思わず、同じマーベルコミックのスーツ・ヒーロー『アイアンマン』のトニー・スタークと比べてしまった。

スーツの特性:最新テクノロジーで常に変化→70年代に開発。1着のみ
戦いの舞台:宇宙・全世界→生活圏内
戦う目的:世界平和のため→娘の養育費を払うため
戦いのパートナー:アベンジャーズ→アリ
職業:大富豪→無職
家族:独身貴族→バツイチ・子持ち

もちろん矢印右側、太字が『アントマン』スコット・ラング。実に庶民的、現実的である。何か前にも似たヒーローがいた…。そう、『スパイダーマン』ピーター・パーカーだ。彼も不幸な身の上の苦学生だった。こんなに日々の生活に困窮するヒーロー他にいないと思っていたら、スコットはそれ以上であった。元泥棒だし…。そもそも、アントマンほどユニークで愛すべきヒーローはいない。「ドア下の隙間から脱出可能」「羽アリに乗って空中移動」…(よく考えたら少々せこい!)。身長1.5cmだからこそのメリットは、笑えるシーンとスリルをもたらす。彼はその境遇ゆえ、今一番感情移入できるヒーローかもしれない。

だがそれだけでなく、身体を縮小させることで超人的なパワーを発揮できるのが、アントマンの真骨頂。見えない弾丸のようなスピード感あふれるアクションは、観る者の意表を突き、かつ度胆を抜く。さらには、ドラマチックな視点の変化も映画の大きな魅力だ。主人公の身体が縮めば、観る者もアントマンの目線の世界に入り込む。上空から舞い降りる羽アリは、あたかも軍用ヘリ(ブラックホーク)のよう。世界を脅かす小さな敵=イエロージャケットとの壮絶なバトルは、その世界を揺るがすほどの大迫力で、その臨場感に誰もが圧倒される。その激しい死闘も、ひとたび娘の目線に変わると、おもちゃの機関車トーマスが倒れ、小型花火のような小さな爆発が起こるミニチュアの世界に変貌。その対比は、他に類を見ない面白さだ。スケール感あふれるアクションを描出する変化に富んだ驚異の映像。強いコメディ要素。登場人物たちが織り上げるユーモアと深い人間ドラマ。これらが融合した素晴らしいエンターテイメントが誕生した。早くもアントマンは、『キャプテン・アメリカ/ シビル・ウォー』にも出演が決定しており、今後アベンジャーズシリーズに絡むキャラクターでもあるので、今後が非常に楽しみだ。

『アイアンマン』から始まるマーベル・シネマティック・ユニバースの作品群『アベンジャーズ』『キャプテン・アメリカ』などは、確かに作品自体の世界観がどんどん大きくなり、映画自体も本当にお金かかっているなとわかる。最新の『アベンジャーズ/エイジ・オブ・ウルトロン』は製作費が2.8億ドルとのこと。なるほどその通りのスケール感とダイナミック感を感じさせる、ヒットすることが約束された大迫力の映画であった。だがこれらのアクション映画もいささか食傷気味となってきた。今回の『アントマン』は製作費が1.3億ドル。『アイアンマン』や『インクレディブル・ハルク』あたりとほぼ同じ額だとのこと。何か原点に戻った感じの、ここで一息、コーヒーブレークのような作品であり、今までのマーベル作品を観ていなくともとても楽しめる映画である。


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<CREDIT>

■出演:ポール・ラッド、エヴァンジェリン・リリー、コリー・ストール、ボビー・カナヴェイル、マイケル・ペーニャ、マイケル・ダグラス
■監督:ペイトン・リード
■配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
■2015年/アメリカ/117分
■原題:『ANT-MAN』

9月19日(土)2D/3Dロードショー
公式ホームページ http://marvel.disney.co.jp/movie/antman.html

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【ライター】戸岐和宏


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2015年9月3日 by p-movie.com