ベイマックス



(C)2014 Disney. All Rights Reserved.



物語の舞台は、サンフランシスコの地形をもとに、東京を融合させたかのような架空都市、サンフランソウキョウ。随所に日本の影響がみられるこの都市は、東西の文化が見事に融合し、最新技術分野の頭脳とも言える人材が集まっている。幼いころに両親を亡くした14歳の天才少年ヒロは、唯一の理解者である優しい兄のタダシと共に、母親代わりの叔母、キャスの家で暮らしていた。しかし、兄のタダシは謎の大爆発事故によって帰らぬ人となり、ひとりぼっちになった彼は深く心を閉ざしてしまう…。そんなある日、傷心のヒロの前に現れたのは、白くて丸くて大きな、フワプニョボディの“ベイマックス”。それは、亡き兄タダシが人々の心と体の健康を守るために開発したケア・ロボットだった。

「どのくらい痛いですか?」
「泣きたい時は泣いていいのですよ」

ベイマックスはヒロの声なきSOSをキャッチする。こうして、大きな悲しみを抱えたヒロと、彼を一途にケアするベイマックスとのおかしな関係が始まった…。

だが、あることがきっかけとなり、タダシの死に不審を抱いたヒロは真相を究明しようとその謎を追っていく。彼が世界を揺るがす巨悪の脅威にさらされた時、隣にいるのは戦闘意欲ゼロの、癒し系ベイマックスとヒロの仲間たち。果たして優しさで世界を救えるのか??
だが、ヒロはまだ知らなかった。兄タダシがベイマックスに託した本当の“使命”を!

監督は『くまのプーさん』のドン・ホールと『ボルト』のクリス・ウィリアムズ。ドン・ホールは「いい加減な“日本”テイストをサンフランソウキョウへ持ち込みたく無い」と決め、ディズニー・アニメーション・スタジオで長年働く日本人トップクリエイターのマット鈴木を始めとする30人以上のチームが<日本の要素を真剣に注ぎ込んだ住みたい街>“サンフランソウキョウ”を創りあげたという。日本語の看板や電柱、自動販売機などのディテール。家並みが創り出す東京のどこかありそうな街角。ネオン輝く夜景などデジャヴをかもし出しながら独創的な世界を創り上げている。

マット鈴木は「このスタジオ(ディズニー)には日本のアニメーションやカルチャーに影響を受けているクリエイターがとても多い。もしかしたら僕より詳しいかも(苦笑)」と語るように、ディズニーのクリエイターたちは、日本のアニメや造形美、東京の風景に日頃より影響を受けているという。

また、「僕らは若い頃に日本文化の影響を受けた最初の世代だ」と語るクリス・ウィリアムズは、「優しく心に響くストーリーという意味で『となりのトトロ』参考にしている」と語る。彼らは映画の舞台設定から、ベイマックスのキャラクター・デザインに至るまで、様々に日本文化の精神を取り入れた本作を、「日本文化への恩返し」とも表現する。でも考えてみれば、トトロはプーさんの影響を受けたと思う。
ディズニーアニメへのオマージュ→日本文化への恩返し→そして共に更なる高みへ!何か日本人として嬉しくなるのは私だけではあるまい。

ところで、本作はマーベルコミックスのヒット作「BIG HERO 6」(ベイマックスは邦題、原題はBIG HERO 6)をもとに製作されたディズニーのアドベンチャー作品でもある。原題からもわかるが、『X-メン』、ディズニーなら『Mr.インクレディブル』、元をたどれば日本の戦隊物『ゴレンジャー』みたいなヒーローチームの話でもあるのだ。事実、物語の後半はまさにアクションヒーロー映画である。(仲間たちも合わせて6人(6キャラクター)で戦うのだ。)

『Mr.インクレディブル』はアクションヒーロー映画であったが、国内的には家族の絆、愛情路線で宣伝されていたし、前作『アナと雪の女王』の原題は『FROZEN』。これは邦題を決めた方の“言葉の妙”に脱帽。内容そのままに『アナと氷の女王』などとしなかったことにより、耳触りがよく、おとぎ話的、略しても親しみやすい、最高の邦題だったと思う。そもそも邦題しかり、宣伝方法しかり、国内向けにどのような方向性で宣伝すれば良いのかは配給会社にとって難問である。

今回、ベイマックスは、AIの曲をバックに泣ける感動作品として宣伝されているが、感動路線の宣伝を見て「ベイマックスは泣く映画」と思う方が多いだろう。しかし後半のアクション路線で「アレッ?」と感じる方がこれまた多いと思う。実は本作はマーベルファンが見ても大丈夫な由緒正しきマーベルヒーロー映画としても仕上がっているのだ。でもさすがディズニー。前半で描かれたヒロとベイマックスの面白おかしな関係が、後半に来てジャブのように効いてきて、ラストでやはり泣かせてくれる。ということは感動路線で間違いはないのかも?

『白雪姫』から『アナと雪の女王』へ続く、時代を超えて愛される続けるディズニーの名作の歴史に、『ベイマックス』が、今、新たな1ページを飾る。

<CREDIT>

■声の出演
ヒロ: ライアン・ポッター
ベイマックス: スコット・アツィット
フレッド: T・J・ミラー
ゴー・ゴー: ジェイミー・チャン
ワサビ: デイモン・ウェイアンズ・Jr
ハニー・レモン: ジェネシス・ロドリゲス
タダシ: ダニエル・ヘニー
キャスおばさん: マーヤ・ルドルフ
アリステア・クレイ: アラン・テュディック
キャラハン教授: ジェームズ・クロムウェル
■製作総指揮:ジョン・ラセター
■監督:ドン・ホール/クリス・ウィリアムズ
■配給:ウォルト・ディズニー・スタジオ・ジャパン
■2014年/アメリカ/108分
■原題:『BIG HERO 6』

2014年12月20日(金)全国ロードショー
公式ホームページ http://www.disney.co.jp/movie/baymax.html

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【ライター】戸岐和宏


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2014年12月15日 by p-movie.com