英雄の証明


(C)Coriolanus Films Limited 2010

シェークスピア最後の悲劇「コリオレーナス」の映画化。ローマの猛将コリオレーナスは、政治家たちの策略でローマを追放。宿敵だった敵国のリーダー、オーフィディアスと共に、ローマ侵攻を開始する、と言うのがストーリー。
現代に翻案というよりは、戦車や銃も登場する現代の意匠でシェークスピア劇を映画化したという印象を受けた。これは、好悪が分かれるところだと思うが、政治劇としては紛れもない力作である。

直情径行で、あまりにも頑なだったために悲劇の道を辿るコリオレーナスを、本作で監督デビューを果たしたレイフ・ファインズが力演。
政治家たちの駆け引きや民衆のエゴ、それに翻弄される軍人の悲劇というテーマは、名作「アラビアのロレンス」とも一脈通じるものがあるが、こちらはシェークスピア劇だけあって、強烈なキャラクターを実力派の俳優たちが陰影豊かに演じているのが魅力だ。

中でも、コリオレーナスの母ヴォルムニア役のヴァネッサ・レッドグレーヴが抜群の好演。卑怯な政治家どもを叱責するシーンの迫力やローマに侵攻する息子を思いとどまらせようとするシーンでの端正な演技からすべての感情が適確に伝わる神的名演にはため息が出るほどだ。オーフィディアスを演じるのは、ジェラルド・バトラー。
役柄的には脇役だが、作品の要ともなる複雑なキャラクターを懸命に演じている。

戦場や群集のデモ・シーンのリアルな迫力やシェークスピアお得意の二転三転する”政治”的力学の面白さが、しっかりと踏襲されているのも魅力だ。

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キャスト: レイフ・ファインズ、ジェラルド・バトラー、バネッサ・レッドグレーブ、ブライアン・コックス、ジェシカ・チャステイン、ジョン・カニ、ポール・ジェッソン、ジェームズ・ネスビット、ルブナ・アザバル、アシュラフ・バルフム
監督: レイフ・ファインズ
上映時間:123分
配給:プレシディオ

2012年2月25日公開
公式ホームページ http://gacchi.jp/movies/eiyu-shoumei/

【ライター】渡辺稔之


カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2012年2月29日 by p-movie.com