少年はドラゴンに翼をあたえ
ドラゴンは少年に勇気を与えた
猫も杓子も3Dという時代が訪れているが、実はこの『ヒックとドラゴン』、全米でのオープニング成績はあまり芳しいものではなかった。なるほど、3Dに“リアルなもの”を求める大人たちは、3等身のキャラクターが駆け回るこの3Dアニメの形態に時代の逆行感を抱いたのかもしれない。
が、結論から言うと、『ヒックとドラゴン』は素晴らしい作品だった。試写しながらずっと「そうそう!この感じ!」と心の中で叫び続けていた。『アバター』以来すっかり忘れかけていた3Dの陶酔感をようやく取り戻せたような気がしたのだった。もっと言うと、ドラゴンにまたがって空を駆け回るシークエンスで思わず感極まって泣きそうになった。また、急降下する風圧が3Dメガネ越しにビュンビュンと吹きつけてくるかのようで、バーチャルな息苦しさすら覚えた。
自分たちの生活を守るために日々ドラゴンと闘わざるを得ないバイキングたち。その最大の勇者とも言える父の背中を仰いで育ちながらも、その能力が発揮できない青年ヒック。村人からも「あいつはダメなやつだ」と笑われる。そんなある日、彼は、翼を痛めた「謎のドラゴン」に遭遇する。ヒックが変わり者であるように、そのドラゴンも他とはちょっと変わっているようだった。変わり者のふたりは次第に心を通い合わせる。そしていつしか、ふたりは大空を駆けまわる親友となっていた。。。
ドラゴンは一言も言葉を発しない。その表情や仕草で感情を伝える。その表現力の豊かさ。さすが『リロ&ステッチ』の監督が手掛けただけある。そして圧倒的にアクロバティックなクライマックスを経て、エンディングに流れるのは、あの聴きなれた歌声。これは・・・アイスランドのバンド“シガーロス”のボーカル、ヨンシーじゃないですか!
北欧つながりとはいえ、このドラゴンの疾走感と彼の歌声は神秘的なまでに相性が良く、またも心の中の陶酔が立体的にどんどん膨らんでいくのを感じた。必見。
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8月7日(土)新宿ピカデリー他全国超拡大ロードショー
ヒックとドラゴン
http://www.hick-dragon.jp/
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【映画ライター】牛津厚信