女性監督による競作短編集『桃まつり presents うそ』。その第3プログラム「参のうそ」(3月22~26日上映)より全4本をご紹介。
玉城陽子監督の『1-2-3-4』では、ブルースのカウントを取るかのようなタイトルと共に、4人の男女の10年史が語られる。それぞれがアートを志し同じ屋根の下で生活を共にしていたあの頃。そして思い描いていた絵とはかなり違うものになった今現在。短編のキャパシティを越え、どんどんバックグラウンドが広がり、たった25分のうちに映画のタイムマシン機能が10年間の移ろいをしっかりと根付かせる。過去と現在との邂逅に、さりげなく弾き語りが持ち込まれるのも絶妙だ。その瞬間、役者の表情を克明にとらえるカメラワークにも注目。『桃まつり』全編を通してこの作品にいちばん心を動かされた。
『代理人会議』は石毛麻梨子&大木萠による共同監督作。彼女らは映画学校の卒業生と、ジャーナリスト学校の卒業生。なるほど、ふたつの才能が合わさるとこんな映画が出来上がるのか。とある事件のマスコミ対応をめぐる会議を舞台に会話劇が続く。参加者がみんな代理人ばかりという日本人にありがちな「主体性のなさ」も鋭い。ほぼワン・シチュエーションにとどまるので、議題となる事件の経過などを具体化するのは多少の困難が伴うが、そのハードルも含めて三谷幸喜の「12人の優しい日本人」にオマージュを捧げているかのよう。でも最後は、やっぱり事件は現場ではなく、会議室で起こるのだった。
安川有果監督の『カノジョは大丈夫』は、着地点を定まらぬ取りとめのないストーリーが濁った水のように流れていく奇妙な作品。前野朋哉演じる主人公のついついイジメたくなってしまう佇まいには負のオーラがメラメラと見てとれ、彼の生活にいつの間にか入り込み飄々と抜け出していくヒロイン前野鏡子の宇宙人的なキャラクターにも並々ならぬ生命力を感じる。そうそうこんな映画、最近皆観たばかりだったのだ。『(500)日のサマー』。出演者の見てくれは全く違うが、主観を剥ぎ取りさえすれば『サマー』も実際はこんな泥臭くリアルな話だったかもしれない。ひとつの可能性として。
福井早野香監督の『離さないで』は、女性作家のもとへ届いた匿名の手紙が学生時代の「真相」を告げるミステリー。主人公はそれを基に一編の小説を書きはじめるが、筆を進めるごとに恋人の態度が豹変していくのを感じる。小手先の演出に頼らず、的確なカットとカットの繋ぎ、重厚な演出の流れが緊張感を持続させていく。作家はとくに何も手を汚すことなく、ただ文章をしたためるのみで、恋人を追い詰めていく。「あなたこれからどうするの?」という問いに対して彼女が返す言葉、「書くしかないわ」。これがそのまま「撮るしかないわ」という女性監督の決意表明のようにも響く。
桃まつり 参のうそ
めくるめく11の”うそ”がはじまるー!!
公式サイトアドレス
http://www.momomatsuri.com/
3月13日(土)~26日(金)渋谷ユーロスペースにて、レイトロードショー
【映画ライター】牛津厚信
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