日本の人気コミック「軍鶏(原作:橋本以蔵)」を映画化。
監督はバイオレンスと人間の真髄まで描ききった「ドッグ・バイト・ドッグ」のソイ・チェン監督。
普通の家庭で育った名門私立高校へ通う16歳の少年が両親をナイフで惨殺する事件が起きる。
少年は成嶋亮(ショーン・ユー)。そのまま高等少年院へ送られる。
本来、気弱で貧弱な彼を待っていたのは、少年院の世界でのイジメ。
“親殺し”というかつて例を見ないほどの事件の犯人とされた彼への風当たりは少年院の院長からも蔑まれていた。
そんな時、空手の授業で指導を勤める黒川(フランシス・ン)と出会い、本気で空手を学ぶのである。
誰にも踏付けにされたくないという一心だけで…。
日本のコミックが香港と日本の実力派俳優らと創り上げた世界はまさにバイオレンスとアクション中心。
だが、それ以上に主人公演じるショーン・ユーの心理を理解されたくはない拒絶感に圧倒される。
舞台はコミックを忠実に描いたらしく、日本であるのに、16歳の少年の行き先が高等少年院という設定以上のモノは何一つ描かれない。
もちろん両親を殺害した少年の本当の心の中は、わざとえぐらない展開にしている。
本当の目的は、少年が両親を殺害したという事実より、その少年の出所後の生き方を空手という世界で<生き抜く術を
学ぶストーリーに仕上がっている。ただ、常に相手に牙を剥き、全力で相手を殺しかねないほどまでの闘いは彼にとって
本当の痛みを受けると同時に自虐とも感じてしまう。
自分を変える力は痛みと平行して強さも備わって来るハズだと信じるラストに彼の生き様に
明るい未来を感じぜずにはいられない。
http://www.shamo-movie.jp/
5月3日より新宿トーア、シアター・イメージフォーラム他全国ロードショー
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【映画ライター】佐藤まゆみ