さよなら
昨日までの自分
(あらすじ)
平安寿子の同名短編を韓国で映画化したドラマ。
ひょんなことから見知らぬ危篤男性の娘役となり、その臨終に立ち会うハメになったヒロインの奇妙な一晩の出来事をリアルなタッチで綴る。
主演はTV「春のワルツ」のハン・ヒョジュ。
監督は「チャーミング・ガール」のイ・ユンギ。
ソウルの街で、ひとりの若い女が突然2人の青年から声を掛けられる。
2人は女を10年前に行方不明になったミョンウンと勘違いしたらしい。女が人違いだと説明すると、今度はミョンウンの身代わりになってほしいと頼んできた。
どうやら、ミョンウンという女性の父親が危篤で、2人は彼女に家出した娘のフリをしてその父親の臨終に立ち会ってほしいというのだ。女は断り切れずに、ミョンウンの父親が病床で待つ郊外の町へと向かうのだったが…。
最初は気乗りしない主人公であったが、一夜を末期癌である男の親族や周りのちょっと変わった人達と過ごすことで、心の中が変化していく。
夜を過ごす中で、家出した娘を思い続け、服や下着を買い続けていた両親の娘への愛情、そして、昔の恋人であった青年の気持ちを知ることとなる。
青年は、過去の恋人への後ろめたさから目を背けていたが、事実を正面から見つめ、現実として受け入れる勇気を得る。
反対に、主人公は現実の生活を一瞬忘れ、マッサラな気持ちで人と向きあう素直さを取り戻せるかもしれない、そんな気持ちを手に入れる。その証拠に、青年に心を開き、自分のヒミツを、自然と打ち明けるのだ。
人違いからはじまった一夜は、二人にとってかけがえのない時となったに違いない。最初は優しさのない無表情だった主人公の顔が、ラストではやさしげな顔に変わってく姿が、印象的だった。本編中、静かに流れる時間が続くが、それがまた、彼女のゆっくりと変化する心の動きを表している気がした。
【映画ライター】野川雅子
(2008年2月9日よりアミューズCQNほか全国順次ロードショー)