ぼくは生きている。話せず、身体は動かせないが、
確実に生きている。
(あらすじ)
42歳という働き盛りに突然の病に倒れ、身体の自由を奪われてしまったELLEの元編集長ジャン=ドミニク・ボビーが、全身の中で唯一動く左目の瞬きだけで綴った奇跡の自伝ベストセラーを映画化した感動ドラマ。
監督は「夜になるまえに」のジュリアン・シュナーベル。主演は「キングス&クイーン」「ミュンヘン」のマチュー・アマルリック。
雑誌ELLEの名編集長として人生を謳歌していたジャン=ドミニク・ボビーは、42歳の時、突然脳梗塞で倒れてしまう。
その後、病室で目覚めた彼は、身体全体の自由を奪われた“ロックト・イン・シンドローム(閉じ込め症候群)”となっていた。それはまるで重い潜水服を着せられたような状態だった。
意識は鮮明なのにそのことを伝える術がなかった。
絶望にうちひしがれるジャン=ドミニクだったが、やがて言語療法士アンリエットらの協力で左目の瞬きでコミュニケーションをとる方法を獲得する。
そしてある日、彼は自伝を書こうと決意するのだった。
身体は動かなくても、息をすることと同じように想像力と記憶は失っていない。
そんな主人公の記憶の記録を描く映画。空想の中で、コミュニケーションを手伝ってくれる女性とデートをする。
そして、蝶になり自由に羽ばたく。ちょっと皮肉屋で少年みたいで、すこぶる繊細な彼の心の中、気持ちを感じ取れる点が、この作品を魅力的に見せている。
身体が動かなくなって、はじめて親子の繋がりの深さを感じる。今までは冷たくしていた家族に支えられ、父親とも気持ちを通じ合わせる。
女性心理としては、見舞いには来ない彼女が電話をくれ、元妻が、その会話を聞くシーンが切なかった。
「毎日君を思っている」という主人公。事実だとしても妻にとってはやるせない気持ちなんだろうなぁ。ちょっと・・そこは考えて欲しい(笑)
死にたいと最初は感じていた主人公だが、本を書き、今までのことを思いだし、次はこんな本を作ろうと元気を取り戻し、生きる希望を見いだすラストがとても良かった。
「誰もが認められたいと願っている」そういう彼の一言が、人間心理を表している気がして、深く胸に響いた。
【映画ライター】野川雅子
http://www.chou-no-yume.com/ (2月9日 シネマライズほか全国ロードショー)
カテゴリー: 映画レビュー
2008年2月13日 by p-movie.com