ヘンダーソン夫人の贈り物

これがオンナの生き方 ★★★★
[原題] Mrs Henderson Presents
[05/英] 1h43 12月23日 Bunkamura ル・シネマ ほかにて全国順次ロードショー

[監督] スティーヴン・フリアーズ
[製作] ノーマ・ヘイマン
[脚本] マーティン・シャーマン
[撮影] アンドリュー・ダン
[音楽] ジョージ・フェントン
[美術] ヒューゴ・ルジック・ウィオウスキ
[衣装] サンディ・パウエル
[出演] ジュディ・デンチ、ボブ・ホスキンス、ウィル・ヤング、クリストファー・ゲスト、ケリー・ライリー、セルマ・バーロウ
[配給] ディーエイチシー
[宣伝] 樂社

オフィシャルサイト:http://mrshenderson.jp/

 時には英国女王陛下までも演じるジュディ・デンチ。彼女が70歳超えて、面白おかしくコメディとして成立させてしまったのは、実在した女性ローラ・ヘンダーソンの晩年を描いた人間ドラマである。

 1937年、ローラ・ヘンダーソン(ジュディ・デンチ)は夫を亡くし、残ったのは莫大な遺産だけ。
未亡人として今後の生き方を悩み、嘆き悲しむ。そんなある日、閉鎖されて古びたウィンドミル(風車)劇場が売りに出されているのを見て、思い切って買ってしまう。内装を施し、後は支配人を決めるだけ。そこで紹介されたのがショービジネスのプロ、ユダヤ人のヴィヴィアン・ヴァンダム(ボブ・ホスキンス)だった。当時のイギリスでは劇場経営者が上流階級の人間が決して多くない時代にヘンダーソン夫人は自らショービジネスの世界へ飛び込む。彼女は斬新かつ画期的なアイディアの持ち主でもあった。
経営不振になった時にでさえ、突如美女の裸体を演目の中に取り入れるという想像もつかないミュージカルまで上演したのである。
戦中となった時でさえも若い兵士たちがこぞって美しい女性たちを観に行くという盛況ぶり。
それは決して卑猥なモノではなく、華が咲いているように女性の姿が描かれる。
この世にこんなに美しいモノが他にあるのだろうか?と思える演出のやり方にも感激する。
 ドイツ軍に空爆に遭っていてもヘンダーソン夫人は劇場で上演を辞めない。その理由は劇中で描かれるのでネタバレはしたくないので伏せて置くが、そんな戦中に関わらず劇場での上演を無理にでも続けようとする姿勢こそが彼女の過去との人生を切り離せないモノだったのだ。そのバイタリティ溢れるヘンダーソン夫人の老後を観ているとこんな生き方があったんだ!と驚く女性が多いに違いない。女性が、最後まで女性であり女性を貫く生き方を見せ付けられた気がする。
実在したヘンダーソン夫人も、演じたジュディ・デンチも、やっぱり女性として生き抜いている。
ヴァンダム支配人演じるボブ・ホスキンスもとことんヘンダーソン夫人と喧嘩しながらも、自分の生き方を貫いて演出家として一歩も引き下がらない。
この二人の演技は、まさにコント仕様で大笑いせずには居られない。コメディなのに頑張る大人の姿はやはり感動的である。
(佐藤まゆみ)


カテゴリー: ヨーロッパ | 映画レビュー

2006年12月19日 by p-movie.com