サトラレ TRIBUTE to a SAD GENIUS

プライバシーゼロの悲しき天才 ★★★★★
[00/日] 2h10 3月17日よりニュー東宝シネマほか全国東宝洋画系ロードショー

監督:本広克行
脚本:戸田山雅司
原作:佐藤マコト
出演:安藤政信 鈴木京香 内山理名 小野武彦 寺尾聰 八千草薫
配給:東宝
宣伝:東宝

『踊る大捜査線 THE MOVIE』で一世を風靡した本広克行監督の最新作。今までの”笑える作品”ではなく、”泣きのエンターテインメント”を目指したという本作は、彼のねらい通り、ハンカチなくしては観ることのできない感動作に仕上がっている。といっても、「サトラレ」を取り巻く周囲のドタバタぶりは、それなりに面白いし、今までの”笑える”本広節もしっかり健在だ。

「サトラレ」とは考えている事や思っていることが周りの人々に筒抜けになってしまうという不思議な能力の持ち主のこと。どういうわけか、「サトラレ」は例外なくIQ180以上の天才ばかりで、彼らの知能は国家的な財産となっている。政府は彼らを保護するために法律や組織を整備し、「サトラレ」が「サトラレ」であることを知られないようにしている。里見健一(安藤政信)も「サトラレ」の1人で、”症例7号”と呼ばれる天才外科医。地方の病院で臨床外科医として働いている彼のもとに、特能保全委員会から、小松洋子(鈴木京香)が派遣されてきた。彼女の役目は新薬研究の国家プロジェクトのスタッフになるように彼を導くこと。

「サトラレ」を目の前にして、次々と起こる初めての経験にとまどう洋子だったが、健一の純粋さに触れることで、自分が本当にしなければならないことが何か気付きはじめる。思っていること全てが筒抜け状態ということは、ある意味楽なのかもしれない。自分がしたいこと、自分が喜んでいること、自分が腹を立てていること、自分が不安に思っていること…全てを相手にストレートに伝えることができたらどれだけ気持ちがスッキリするだろう。でも、「サトラレ」であるがために故意に失恋させられたり、勝手に人生のレールまで敷かれてしまうのは嫌だけれど…。もし、自分が「サトラレ」だったら…なんて考えるとやるせなくなってしまう。「知らぬが仏」とはこういったことなのかもしれない。で、彼の祖母に対する本当に純粋な愛情には、「参りました」としか言いようがない。というのも、彼の行動や表情だけでなく、「サトラレ」というキャラクターであるがために発せられる心の声が観ている人に直球で投げかけてくるからだ。クライマックスになるにつれ、ホロッと涙を流す人も多いはず。


カテゴリー: 日本 | 映画レビュー

2001年3月19日 by p-movie.com