ヒマラヤ杉に降る雪

工藤夕貴ハリウッド映画進出 ★★★☆☆
[99/米] 2h08m 4月1日よりみゆき座ほか全国東宝洋画系にて公開

監督・脚色:スコット=ヒックス
出演:イーサン=ホーク 工藤夕貴 鈴木 杏 リック・ユーン サム・シェパード
配給・宣伝:UIP 

数々の賞に輝き、世界的ベストセラーになったデビッド・グターソンの原作を、「シャイン」のスコット・ヒックスが映画化。工藤夕貴が本格的にハリウッド映画に進出した。本人も意欲的に取り組んだ、と製作前より話題に上った詩情あふれる作品。第2次世界大戦後のワシントン州北西部の小さな湾に浮かぶ移民の島を舞台に、幼なじみ同様に過ごしたアメリカ人青年と日系人女性の愛の軌跡を、「ある殺人事件」をめぐって回想的に、プロセスを巧みに構成させながら綴っている。

1954年の冬、ワシントン州北西部のピュージェット湾に浮かぶ小さな島で漁師が溺死する。死体の頭部に何かで強く打った傷跡があったために、同じ場所で漁をしていた日系二世のカズオ・ミヤモト(リック)が殺人容疑をかけられ、逮捕されてしまう。ヒマラヤ杉に雪が降り始める頃、裁判が始まった。不利な状況が続く中、なす術もなく傍聴席から夫の背中を見つめるハツエ(工藤)。そんなハツエの近くに、もう一人この裁判を見守る人物がいた。それは新聞記者のイシュマエル(イーサン)。彼は、ハツエとは幼なじみで互いに心を許しあった仲だった。しかし、真珠湾攻撃を境に離れ離れになっていたのである。イシュマエルは自分の愛を裏切ったハツエに対する愛と憎しみで、彼女の夫を自分が救うべきかどうか、心が揺らぐのだった。

それぞれの出会いと真相、偶然が引き起こす哀しさが痛いほどに伝わってくる。台詞が少ない分、しんしんと雪の降り積もるヒマラヤ杉の森やひっそりとした漁村など、あたかも自分がそこにいるかのように感じる映像美、そして日本的な曲調も取り入れた音楽もドラマ性を高めている。工藤夕貴の独特な雰囲気にも感心したが、特筆すべきは鈴木杏のみずみずしさだろう。まったく驚かされる。
しっとりとした映像の中に美しく、静かに織り成される物語。もし自分だったら....自身に問いながら観るのもいいかもしれない。


カテゴリー: アメリカ | 映画レビュー

2000年4月3日 by p-movie.com